「アステロイド・シティ」
を観てきました。『アステロイド・シティ』日本最速試写会にFan's Voice枠( @fansvoicejp )で参加させていただきました。
ストーリーは、
1955年、アメリカ南西部の砂漠の街アステロイド・シティ。隕石が落下して出来た巨大なクレーターが観光名所となっているこの街に、科学賞を受賞した5人の少年少女とその家族が招待される。子どもたちに母親が亡くなったことを言い出せない父親、映画スターのシングルマザーなど、参加者たちがそれぞれの思いを抱える中で授賞式が始まるが、突如として宇宙人が現れ人々は大混乱。街は封鎖され、軍が宇宙人到来の事実を隠蔽する中、子どもたちは外部へ情報を伝えようとする。
というお話です。
1950年代、TVが生放送だった時代のドラマ。司会者が、有名な劇作家コンラッドアープの戯曲「アステロイド・シティ」の制作スタジオを紹介します。架空の砂漠の町アステロイドシティ。映像は白黒のアカデミーサイズですが、不思議と途中からワイドスクリーンと様式化されたカラーで描かれます。
そして劇中劇。時は1955年、アメリカ南西部に位置する砂漠の街、アステロイド・シティ。隕石が落下してできた巨大なクレーターが最大の観光名所であるこの街に、科学賞の栄誉に輝いた5人の天才的な子供たちとその家族が招待される。
子供たちに母親が亡くなったことを伝えられない父親、マリリン・モンローを彷彿とさせるグラマラスな映画スターのシングルマザーのミッジ、それぞれが複雑な想いを抱えつつ授賞式は幕を開けるが、祭典の真最中にまさかの宇宙人到来!?
この予想もしなかった大事件により人々は大混乱!街は封鎖され、軍は宇宙人出現の事実を隠蔽しようとし、子供たちは外部へ情報を伝えようと企てる。果たしてアステロイド・シティと、閉じ込められた人々の運命の行方は!? 後は、映画を観てくださいね。
ウェス・アンダーソン監督の最新作は、そのまんま、ウェス・アンダーソン節で突き進む話でした。強引だけど、グイグイと進み、観る人間を振り回して終わっていくという、何とも面白い、楽しい作品でした。でも、実は、細部に渡って引用があり、今回の出演者は、皆、1950年代に活躍していた人々をモデルにしているそうです。
時代は、冷戦時代で宇宙開発が盛んだったころだそうです。そんな時代のドラマを、彼らは制作していて、その時代、録画技術が発達していなかったので、生放送でドラマを視聴者に送っていたようです。日本でも、黒柳徹子さんが、生でドラマをやっていたと、以前お話されていましたが、その時代ですね。
生で撮影所のスタジオでドラマを撮影しているのですが、何故か、自然の中で、まるで現実のように話が進みだします。スタジオでの撮影時はモノクロで正方形っぽいのですが、ふと気が付くと、カラーでワイドスクリーンになっているんです。そんな不思議な感じですが、時々、主人公が現実に戻って、スタジオの裏の演出家と話しをしたりして、この入り混じった感じが、ウェス・アンダーソン風味ですね。
そうそう、砂漠の中で、いつも”ロードランナー”がうろうろしているのですが、あれは何だったんだろう。ワーナー映画に出てくる、ミンミンって言って、凄い速さで走る鳥で、ワイリー・コヨーテと追いかけっこをしている鳥です。凄く気になったんだけど、これワーナーじゃないでしょ。まぁ、オオミチバシリ(ロードランナーの和名)は本当にいる鳥だから、砂漠で走っているよって事なのかな。
そんな映画の中で、アステロイド・シティでのドタバタが始まります。オーギーは子供4人を連れて、この街に着きます。息子ウッドが科学賞を取り、招待されたんです。この街は、隕石が落ちて大きなクレーターがある場所のようです。そんな場所に、科学賞を貰った子供たち5人とその家族を集めて、授賞式を行うようでした。
集まった家族を前に、大会の責任者であるギブソン将軍が歓迎をすると、何故かUFOが現れ、宇宙人が降りてきて、隕石を盗んでいくんです。え?どういうこと?と唖然とする中で、オーギーが手にしていたカメラで写真を撮ります。この宇宙人が、どーも「マーズ・アタック」の宇宙人に目や動きが似ていて、笑ってしまいした。
もちろん、1950年代なので、宇宙人は政府のナイショ事となり、隠そうと、科学賞の人達全員を隔離するんだけど、何とかして、外に伝えようと、みんな動き出すんです。だから、エリア55の宇宙人の写真みたいに、外に出ちゃうんだよーって事なんだけど、色々な事を隠そうとする政府と、何とかして外に出そうとする民間人と、その攻防は、今と同じですね。まるでコントなんです。そんな風刺を描きつつ、その中で、オーギーとミッジの恋愛かもしれない気持ちがあったり、子供たちがマジな天才だったり、裏の演出家の夫婦事情があったり、色々とあります。
「眠らなくては起きる事が出来ない」というセリフがあるのですが、このセリフが、劇中劇という2重3重の構造でありながら、演じているのが1人の人間ということが効いてくるんです。オージーは、劇中でミッジのセリフ練習に付き合っていて、「妻を失った嘆きを演技に利用しろ。」というセリフに衝撃を受けます。
実は、オージーを演じているホールという役者は、劇作家コンラッド・アープの恋人であり(キスシーンがあります。)、アープは上演時点で事故で亡くなった後と考えれば、今、ホールは恋人を失った人そのものなんです。衝撃を受けたホールは耐えられなくなり、壁を開けて演出家に慰めて貰いに行くと、そこで、オージーの妻役の女優に会うんです。妻役が出てくる場面はカットされましたが、そこで彼女が言うはずだったセリフが、アープの気持ち何ではないかと思われ、オージーは落ち着いて、また、劇中に戻っていくんです。
そして、遺灰を埋め、アステロイド・シティから去っていく。オージーだけど、まるでホープ本人のように。ここで、劇中だから偽物だとは限らない。偽物を通して、現実を受け入れられる、目を覚ます人だっているはずだということなんです。凄く説明が回りくどくて申し訳ないけど、きっと、監督はそんな思いを込めて、このセリフを書いたんじゃないかなと思いました。
このアステロイド・シティの最速試写会に行きまして、上映後に、町山さんという映画評論家の方が解説をして下さったのですが、全く解説になっていなくて、理解が出来ませんでした。というか、混乱してしまいました。よく会社とかで、お客様に解りやすく、資料の要件をまとめてというでしょ。そういう時に、全部コピペして貼り付けたような資料を出された感じっていうのかしら。
確かに、この役はエリア・カザンをモデルとか、ミッジはマリリン・モンローがモデルとか、そういう豆知識は良いんだけど、それを羅列されても、映画の意図は一切解りませんよね。前日に、中井さんと矢田部さんの解説が的を得ていて解りやすかったので、あまりの違いに驚きました。こんなに解説者で違うんですね。なので、今回は私の感覚だけで書きました。ネタバレがあって申し訳ありません。解説しないと、きっと、解らないと思うんです。あまりにも、細かいネタが多いので、一人で観きれないでしょ。やっぱり、こういう難解な映画は、ちょっと解説してくださる人が欲しいですよね。
ひとつ、書いておかなくちゃ。TVの司会者をブライアン・クランストンが演じていて、映画の途中で、何故か、突然に出て来て、「お呼びでない?お呼びでない?失礼しました。」と言って去っていく場面があり、植木等だぁ~と笑ってしまいました。字幕がそうなっていて、そう思っただけかもしれないけど、監督、植木等の映画を観たんじゃないかなぁ。憶測ですけどね。(笑)
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。アンダーソン監督作品は、元々好きなのですが、この、夢を観ることで、現実が救われる事って本当にあるんですよね。私は映画を観ることで、救われることが沢山あります。偽物と思わず、素直に受け入れることも大切なんじゃないかな。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
P.S:
テネシー・ウィリアムズ=コンラッド・アープ=エドワード・ノートン
エリア・カザン=シューベルト・グリーン=エイドリアン・ブロディ
マリリン・モンロー=ミッジ=スカーレット・ヨハンソン
ユージン・スミス=オーギー=ジェイソン・シュワルツマン
「アステロイド・シティ」
ジョニー演じるユージン・スミスが、オージーのモデルです。