「イノセンツ」童夢から着想というより童夢実写版と言って良いほど、上手く作り変えてありました。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

 

「イノセンツ」

 

を観ました。Fan’s Voiceさんの、独占最速試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

ノルウェー郊外の住宅団地。夏休みに友人同士になった4人の子どもたちが、親たちの目の届かないところで隠れた力に目覚める。子どもたちは近所の庭や遊び場で新しい力を試すが、やがてその無邪気な遊びが影を落とし、奇妙なことが起こりはじめる。

というお話です。

 

 

緑豊かな郊外の団地に引っ越してきた9歳の少女イーダと自閉症で口のきけない姉のアナ。父親の仕事の関係で引っ越して来たのだ。今は夏休み。まだ学校は始まらず、近所を散策していると、同じ団地に暮らすベン、アイシャと親しくなる。

ベンは、”面白いもの見たい?”と聞き、イーダは見たいと答えると、手で触れることなく小さな物体を動かして見せてくれる。念動力の持ち主らしい。アイシャは互いに離れていてもアナと感情、思考を共有できる不思議な能力を持っていた。4人は、それぞれに家庭に問題を抱えながらも、昼は一緒に楽しく遊んでいた。

 

 

大人の目の届かないところで、ベンとアイシャ、そしてアナは、それぞれの力を遊びに使い、その力は段々と強くなっていく。遠くに離れていても、相手の思考が読めたりと、競って強くなっていった。

 

ある日、ベンの家で、いつものように、母親がベンに精神的虐待をしていた。それまでは耐えていたベンだったが、とうとう我慢出来なくなり、母親に対して力を使ってしまう。そこから、遊びに使うだけだった力を、自分の欲望に使うことに目覚めたベンは、次第にエスカレートし、取り返しのつかない狂気となっていく。後は、映画を観てくださいね。



 

この映画、「童夢」からインスピレーションというよりも、童夢の実写映画化と言って良いんじゃないかな。きっと、童夢を読んでいる方は気が付くと思うけど、映像の構図が、漫画の童夢の構図と一緒です。団地の上を飛行機が飛んでいく映像とか、団地の映像、あのブランコの映像など、本当にそのままでした。でも、良く出来ています。大友さんも、これなら文句を言わないんじゃないかな。大友さんが描いていた、あの子供だけの世界のルールと、素直で無垢だからこその悪意と、それに対しての制裁が、完璧にバランスが取れていました。

 

童夢では、老人がルールを乱すのですが、実写だと解り難いと思ったのか、少年になっていました。童夢では、老人が幼児退行して、力を持っているんですけど、やっぱり映像だと説明が難しいのかな。それに、あの”チキチキチキ”という場面は、ありませんでした。まぁ、残酷ですもんね。あの壁にバコッとめり込む場面もありません。ちょっと残念。

 

 

この映画なりの表現で、周りに普通に暮らしている人がいるのに、凄いサイキックバトルが繰り広げられているという姿は、よく描かれていたと思います。観ていて、うんうん、これこれ、これなのよと思っちゃいました。結構、細かく描かれていて、良かったですよ。

 

この映画、超能力映画と思われると、ちょっと嫌だなぁと思いました。大友さんの童夢は、サイキック漫画じゃないと思うんです。最後の方で理解出来ると思うけど、子供なら、誰でも力を持っているんです。大人になって、知識が付くと、色々な概念があり、理屈を考えてしまうので、力が無くなってしまうんです。なので、子供にとって、超能力は特別じゃないんです。大人だって、子供の頃は力を持っていたはずなんですけど、忘れちゃっているだけ。だけど、その力を特別に使うことを知ってしまうと、子供たちだけのルールがあって、許されないよって事なんです。

 

 

大人には大人のルール=法律があって運用しているでしょ。それと同じで、子供には子供のルールがあるんだけど、それは書面にするとかそういう事ではなく、超能力で繋がっているので、誰もが共有している事なんです。なので、ルールから外れれば、許されないんだよって言う事になるんです。

 

イーダには自閉症の姉・アナがいるのですが、アナは、ほとんど言葉が喋れません。実は、頭の中では言葉を理解しているのに、それが発せないというだけなんです。アイシャとの出会いで、その使い方を知ったアナは、少しづつ言葉を話せるようになります。それと、アナは力もどんどん強くなります。元々、自閉症などを持っている子供は、力が強いのかな。とても活躍をしていました。

 

 

子供が4人出てくるのですが、イーダとアナの姉妹は、両親共に優しくて良い家庭なのですが、ベンとアイシャの家庭には問題があります。移民家族のようで、母子家庭では無いのかもしれないけど、父親の姿はありませんでした。そして、母親が病んでるようでした。色々と苦労はあると思うけど、子供に当たってどうするの?子供は関係無いでしょ。キツい言葉ばかりでは、言葉の暴力なので、子供は苦しみます。子供なりに気を使って、頑張ってお母さんを助けようとしているのに、酷い言葉は辞めて欲しかった。凄く傷つくんです。

 

そんな母親の元で育つ、ベンとアイシャ。ベンの家は酷かったな。アイシャの母親は、とっても優しいんだけど、いつも悲しんでいて、アイシャは母親を助けたくても助けられないというジレンマがあったように思います。

 

 

映画が始まって直ぐに、子供の無垢さが描かれていました。小学生低学年くらいの子供は、まだ善悪も曖昧だし、知識がありません。生物を殺すことが、悪い事とは理解出来ていないんです。でも、身近で接している動物を殺すのは可哀想という気持ちは芽生えてきているようで、そこから、段々と、命を知って行くのかなと言う事が描かれていました。ミミズとか、平気で踏み潰すんですもん。でも、私だって、子供のころには、平気でセミを殺したりしていたので、同じですよね。今思うと、ゾッとしますが。

 

イーダは、4人の中で、ただ一人、力が使えません。でも、仲良くしています。そんなイーダは、自分の周りで置き始めた悪いことが、自分が原因なのかもしれないと思い始め、何とか止めようとします。力が使えないので、彼女なりに考えて、作戦を立てます。よく考えたなって思うような作戦でした。家族を助けようと思って、凄く考えたんでしょうね。賢い子です。でも、イーダにだって、力はあったのにね。気がつかないだけなんです。

 

 

感想が少しネタバレになってしまっているかもしれませんが、だって、童夢の実写化と言って良いような内容だったんですもん。もう、40年も前の作品で、学校で話題になって、それからずーっと読んでいるので、もう、全て脳に刻み込まれているんです。コマ割りから、見開きページまで、あの凄い絵は、忘れられません。あの絵が、実写で撮られているのですから、興奮するのは当たり前でしょ。本当に、大友ファンには観て欲しい。チキチキチキは無いし、ボコッとへこむ壁も無いけど、それでも、十分に、童夢が再現出来ています。これは、アカデミー賞を取るでしょ。それなら大友先生にもあげて欲しいよなぁ。

 

私、大友信者なので、この映画の感想だったら、ずーっと書いていられると思うんだけど、そういう訳にもいかないので、ここら辺で止めます。うーん、本当に楽しかった。観ながら、これよこれ!って叫んじゃったもん。同じ構図の映像が嬉しくて、楽しかったなぁ。

 

 

私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。特に、大友ファンの方々、これは必見です。観ていて、オオッと声が出ちゃうと思います。あの構図、覚えていますよね。あの白黒の画面が、カラーで動いているので、感動ですよ。童夢は実写化出来るよなぁと思っていたのですが、北欧で先に映像化されてしまうとは、驚きでした。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

P.S: 出来れば漫画「童夢」を読んでから行ってください。その方が感動が倍増です。只の超能力映画ではない事が、よく解ると思います。

 

 

「イノセンツ」