「インスペクション ここで生きる」ゲイで母親に疎まれていた男性が海兵隊に生きる場所を見つけます。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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「インスペクション ここで生きる」

 

を観てきました。Fan’s Voiceさんの、独占最速試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

イラク戦争が長期化していた2005年のアメリカ。ゲイの青年エリス・フレンチは母に見捨てられ、16歳から10年間にわたってホームレスとして生きてきた。自身の存在意義を求めて海兵隊に志願入隊。教官から強烈なしごきを受け、さらにゲイであることが周囲に知れ渡り、何度も心が折れそうになりながらも、暴力と憎悪に毅然と立ち向かう。孤立を恐れず、同時に決して他者を見限らない彼の姿勢は、周囲の人々の意識を徐々に変化させていく。

というお話です。

 

 

ゲイであることで母に捨てられ、16歳から10年間ホームレス生活を送っていた青年・フレンチ。どこにも居場所を許されず、自らの存在意義を追い求める彼は、生きるためのたったひとつの選択肢と信じて海兵隊への入隊を志願する。志願のために、出生証明書を貰いに母親の家を訪ねると、ゲイであることは今も許しておらず、私は息子を失くしたと言い張るばかり。それでもフレンチは母親を大切に思っていた。

 

海兵隊へと入隊し、訓練初日から教官の過酷なしごきに遭う。気持ちだけは人一倍強く持ち、訓練に耐えていたフレンチだが、ある時にゲイであることが周囲に知れ渡ってしまう。その日から、激しい差別にさらされ孤立してしまう。理不尽な日々に幾度も心が折れそうになりながらもその都度自らを奮い立たせ、毅然と暴力と憎悪に立ち向かうフレンチ。

 

 

何処にも自分の居場所が無かったフレンチにとって、どんなに辛くても、海兵隊が自分の居る場所だと思いたい。僕が僕のままで在るために、自分の意志でここに居る。強い意志を曲げず、孤立を恐れず、同時に決して他者を見限らない彼の信念は、徐々に周囲の意識を変えていく。後は、映画を観てくださいね。

 

この映画、良い映画でした。感動作です。ゲイの男性が、母親から疎まれ、ずっと一人で生きてきたのですが、自分の居場所を見つけようと思い、海兵隊に志願することにするんです。この映画を理解するには、母親が厳格なキリスト教信者であることや、この映画の舞台2005年の政治的情勢、そして、アメリカの軍隊の特性などを理解しないと、只、毒親から疎まれて海兵隊で頑張ったゲイですってだけの話になってしまいます。

 

 

Fan’sVoiceさんのオンライン試写が終わった後に、アフタートークがありまして、藤本先生(帝京大学文学部社会学科准教授)がこの時代の政治的背景や、厳格なキリスト教徒がどういう立場なのかと言う事を説明してくださり、とても良く理解が出来ました。私、今までに何度も書いてきましたが、洋画を正しく理解しようとするなら、キリスト教と聖書をある程度は理解していないと無理なんです。どうしても、そこに引っかかってくるので、聖書を知らないと、どうしようもないんですよね。

 

主人公のエリス・フレンチの母親は、厳格なキリスト教徒なんです。旧約聖書には、男女が結ばれるべきと命令しているし、新約聖書のコリント第一6章9~10節に、男色をする者は神の国を継げないと書いてあるので、ゲイは許されないんです。なので、母親は、愛する息子がゲイと知って、神への冒涜だと考え、縁を切って、16歳で家を追い出したようなんです。

 

 

信じちゃっている人からすれば、許されない事だけど、でも、自分の息子でしょ。神の国は継げない、子供は作れないと言う事だと思うけど、でも、神の国に住んではいけないとは書いてないんだから、神は許しますよね。全ての人間は神の子と言っておきながら、ホント、宗教って、おかしいんです。神の意志と違うことをする子は諫められるけど、でも神は許すとしなきゃおかしいでしょ。許すことが神の役目なんだから。隣に神がいたら、頭、引っ叩いてますよ。プンプン。

 

この時代、米軍には、ゲイは入れないという規定があったらしいのですが、クリントン政権かな?その時代に、個々のアイデンティティを尊重し、ゲイかどうかを聞いてはいけないということになり、ゲイでも黙って軍隊に入る事が出来るようになったようなんです。なので、映画の中でも、上官が、「ゲイかとは聞かない。」としっかり言うのですが、解ってしまうと、やっぱり虐められるんですよ。難しいですよね。まぁ、確かに、一緒の部屋で寝ているんですから、もし襲われたらどうしようとか、危険を感じるとは思いますよね。

 

 

そんなキリスト教の問題と、米軍の問題があるという前提で、フレンチは海兵隊に入り、訓練を受けることになります。必死で鍛えて、良い成績は取れるのですが、嫌がらせにあったりして苦労をします。でも、フレンチはへこたれず、自分以外にも、苦しむ兵士がいたら、寄り添って、助けるんです。

 

同じ部隊に、イスラム教徒がいて、彼も嫌がらせを受けているんです。まぁ、2005年ですから、9.11同時多発テロの後で湾岸戦争は終わっていたけど、まだアルカイダはあるし、ウサマ・ビン・ラディンは生きていたと思うので、イスラム教への風当たりは強かったんだと思います。軍では、チャプレン活動というのがあり、基地内に礼拝堂があり、そこで宗教活動をするのですが、この映画では、キリスト教しか活動が無くて、イスラム教でも、無理矢理キリスト教の活動に出されていて、苦しんでいたので、フレンチは、彼と一緒に上司に掛け合い、キリスト教ではないことを訴えたりしていました。

 

 

現代は、ほとんど、どの宗教でも、同じ施設内で活動が出来て、それぞれに礼拝が出来るようです。人種の違い、宗教の違いで差別は作らないという方針なのかな。キリスト教だって、カトリックとプロテスタントは全く違うし、仏教、イスラム教、儒教、ヒンドゥー教など、色々とありますもんね。

 

フレンチは、自分は孤立していたけど、誰かが困っていると、助けていたので、段々とフレンチと行動を共にする兵も出てくるんです。ゲイとかは関係無く、仲間として見てくれる仲間が増えていくんです。やっと、フレンチにも、居場所と思える場所が出来ていくんです。居場所が出来るにつれ、彼もたくましくなっていくように見えました。

 

 

やっと居場所は出来たけど、母親との確執は残ったままで、何とか、母親にも認めて欲しいと思っていたんだけど、難しそうなのかな。宗教の問題だからね。でも、フレンチは、ずっと母親を愛しているし、拒まれても、それは変わらないという様子でした。

 

このお話は、監督の自伝的お話なんだそうです。主演のジェレミー・ポープさん、凄い良かったです。気持ちが伝わってきましたもん。他の方々も良かったのですが、あまり有名な俳優さんは出演していなかったようです。でも、演技は素晴らしかったです。

 

 

私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。これは良かったです。出来れば、彼の置かれている状況(宗教や政治背景)を知ってから観た方が、とてもよく解ると思いました。彼の気持ちも、伝わってくると思います。ゴールデングローブ賞ノミネートやトロント国際映画祭などにも行っている作品なので、観る価値はあると思います。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「インスペクション ここで生きる」