「逃げきれた夢」家族とも生徒とも真剣に向き合わず、逃げちゃってた事に気が付いた彼は…。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「逃げきれた夢」

 

を観てきました。

 

ストーリーは、

北九州の定時制高校で教頭を務める末永周平は元教え子の平賀南が働く定食屋を訪れるが、記憶が薄れていく症状に見舞われ、支払いをせずに立ち去ってしまう。妻・彰子との仲は冷え切り、娘・由真は父親よりもスマホ相手の方が楽しそう、さらに旧友・石田との時間も大切にしていなかったことに気づく。これまで適当にしていた人間関係を見つめ直そうとする周平だったが。

というお話です。

 

 

北九州で定時制高校の教頭を務める末永周平。ある日、元教え子の平賀南が働く定食屋で、周平はお会計を「忘れて」しまう。記憶が薄れていく症状に見舞われ、これまでのように生きられなくなってしまったようだ。

病院へ行き、症状の説明を受けるが、なってしまったものは仕方がない。周平は受け入れるしかないと思いながら、先生と会話をしている。しかし会話をしていても、何も頭に入ってこない。



 

待てよ、「これまで」って、そんなに素晴らしい日々だったか? 妻の彰子との仲は冷え切り、一人娘の由真は父親よりスマホの方が楽しそうだ。今まで、家族と全く向き合ってこなかったし、こんなもんかと考え、これから自分をやり直してみようかと考え始める。

旧友の石田啓司との時間も、今まではちっとも大切にしていなかった。新たな「これから」に踏み出すため、「これまで」の人間関係を見つめ直そうとする周平だが、無理に行動してみても、自分を変えることが出来ない。石田に悩みを打ち明けることも出来ないし、相手が話している事も、半分聞き流してしまっている。



 

このまま記憶が無くなり、自分はどうなっていくのか。誰にも話せず、誰の相談も受け入れられず、このままで良いのかと考えた時、元教え子からの言葉が心に突き刺さる。後は、映画を観てくださいね。

 

光石さんを主演で映画を作ったと聞き、中年の悲哀を描く、深い映画なのかなと期待して観に行きました。光石さんは、最近、あの「波紋」で、突然失踪した夫役を演じていたので、そのイメージが頭にあったのですが、今回は、失踪するような男ではなく、本当によくそこら辺にいそうなおっさんでした。周りにも同じような人、いるよなぁと思いました。

 

 

光石さん演じる周平は、定時制高校の教頭をしています。学校を周って生徒に話しかけて、いつも「何かあったら言いなさい。」と、生徒の悩みを聞いて歩くような先生に見えました。でもね、私が思うに、こういう先生って、全く生徒の話を聞いていないし、生徒の言う事を理解していない人です。それは、生徒の方が良く解っていて、こいつは口だけだなと見透かして、何も相談はしません。

 

きっと、ずーっとこういう感じで、この年齢まで仕事をしてきたのでしょうね。何となく事なかれ主義で、生徒の話も聞かず、家族の話も聞かず、でも聞く振りをして、自分だけの世界に生きていたのだと思います。だから、人の話も聞かないけど、自分の相談も誰にもしていないんでしょうね。だって、友達の石田と会って、飲んでいても、結局、何かあったら相談しろよと言いながら、相手の話はほとんど聞いておらず、自分の話も一切せず、何のために逢ってんのかなという風に見えました。

 

 

私が思うに、この年代の方って、こんな人、多いんじゃないかな。それこそ、”教頭”という役職のイメージなんだけど、八方美人で、誰にでも良い顔をしているけど、彼自身は誰も信用していなくて、何の事件も起こさない事が良い事だと思っているんです。でも、この映画のように、突然に自分に何か起こってしまうと、誰にも相談が出来ないし、これから先、どうして良いのか解らない。そりゃ、そうですよ。誰も信用していないのに、誰かに頼らなきゃいけなくなる訳だから、不安ですよね。でも、今まで、自分が誰の相談も聞いてこなかったから、相談出来ないんですよね。

 

いやぁ、凄く解るんです。こういう人、本当に周りにいますもん。凄く良い人そうな顔をして、優しい言葉をかけてくれるけど、いざ、話しをしてみると、一応、話しは聞いているんだろうけど、全く考えていなくて、頑張りなよとか、応援してるとか、そんな答えしか返ってこないのよね。話を真剣に聞いていないのよ。だから、周りの人間も段々と離れていくんです。

 

 

そんなよくいる”おじさん”の姿が描かれていました。私もおばさんなんだけど、この周平の妻の態度、凄く理解が出来ました。今まで、家族の事を顧みず、何の話も聞かず、好き勝手にやっていたくせに、今更、何言ってんだよって思いますよ。自分が弱った時だけ、すり寄ってこないでよって事なんです。きっと、妻にも、娘にも、それぞれに決断しなければいけない時が何度もあって、その度に、周平に話していたと思うんです。でも、全く親身になってくれなかったから、こういう風になったんでしょ。

 

主人公に対して、とっても冷たい言い方で、酷い感想かもしれないけど、きっと、監督は、そういう生き方をしてきた方々に、末路はこうなりますよって事を言ってくれていたんじゃないんのかな?人に向き合ってこなかったツケが、ここで来ているんですよって事ですよ。もし、昔から人と向き合っていたら、喧嘩もしただろうし、とことん嫌われる事もあっただろうと思うけど、その反面、信頼してくれる人も増えて、何かあった時は力になってくれる友達がいたと思うんです。

 

 

何事も無いことがしあわせだと思って、何も見てこなかった人間と、何にでもぶつかって、その度、傷だらけになったとしても、沢山のモノを観てきた人間とは違うんだよ、って教えてくれたような気がします。私は傷だらけの方がイイなぁ。結局、全てから逃げて、逃げ切ってしまい、何も残ってないなぁと感じたんじゃないかな。元教え子の南と話しをして、それに気が付いたのだと思いました。

 

周平は、それに気が付いて、これからどう生きていくのか。家族と向き合うのか、それとも一人で生きていくのか。それは、観た人が考えてくださいって事なのかなと思います。私は、きっと、家族と向き合うんじゃないかなと期待します。自分が、逃げていた事に気が付いたんだから、最後には向き合わなきゃね。

 

 

私は、この映画、お薦めしたいと思います。この映画、しっかりとした説明的な部分が無いので、とても解りにくい作品だと思います。でも、雰囲気はとても良いですし、光石さんだからこその映画だと思いました。光石さんだからこそ、きっと、という期待で終われる映画なのだと思います。私は、最後に光石さんが、やっと素直に心に思った事をぶつけたところが好きでした。それで救われた、いや、これからきっと、良い方向に行くと期待出来ました。良かったです。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「逃げきれた夢」