「はざまに生きる、春」
を観てきました。
ストーリーは、
出版社に務める雑誌編集者・小向春は取材のため、「青い絵しか描かない」ことで有名な画家・屋内透と出会う。発達障がいを持つ屋内は自分の思ったことをストレートに口にし、感情を隠さず嘘もつけない。人の顔色ばかり見て生きてきた春にとって、そんな彼の姿は新鮮で魅力的に見えた。恋人に怪しまれながらも屋内にひかれていく春だったが、相手の気持ちを汲み取ることが苦手な彼に振り回され、思い悩む。
というお話です。
出版社で雑誌編集者として働く小向春は、仕事も恋もうまくいかない日々を送っていた。ある日、春は取材で、「青い絵しか描かない」ことで有名な画家・屋内透と出会う。
思ったことをストレートに口にし、感情を隠すことなく嘘がつけない屋内に、戸惑いながらも惹かれていく春。屋内が持つその純粋さは「発達障害」の特性でもあった。一見、普通に見えるので、グレーゾーンなのかという話をしていたのだが、屋内は障がい者認定されており、障がい者手帳も携帯していた。
そんな屋内の事を知っても、ただ、人の顔色をみて、ずっと空気ばかり読んできた春にとって、彼の姿がとても新鮮で魅力的に映るのであった。周囲の発達障害を知る人は、春が惹かれていく姿を見て心配しはじめる。彼は人の気持ちが読めないのだ。それでも春は、恋人に怪しまれながらも、屋内にどんどん気持ちが傾いていく。
「誰かの気持ちを汲み取る」ということができない屋内にふりまわされ、思い悩む春。屋内には当たり前の事なのだが、一般的な考えしか持たない春には理解が出来ない。さまざまな “はざま”で揺れる春は、初めて自分の心に正直に決断する。後は、映画を観てくださいね。
良い映画でしたし、宮沢さんは、グレーゾーン的な発達障害の人物を、よく演じてくださっていたと思います。本当の事を言うと、もっとこだわりが強くて、他人に警戒心が強い方が多いのですが、その辺りは、映画化にあたり、随分と緩和されていたようですね。でも、もちろん、医学的な監修を受けていただろうと思うので、まぁ、こんなもんにしたんだろうと受け取っておきます。
以前に書いたと思うのですが、私はグレーゾーンかどうかの判定などは行っていませんが(私の時代にアスペルガーなんて言葉も無かったですから。)、アスペルガーの性質が残っています。なので、映画を観るのを辞められないし、このブログも、決めてしまったので止めることが出来ないし、本を子供の頃から集めるのを辞められないし、ぬいぐるみも可愛いと思えば集めずにいられない。気になったら、止められないんです。やり始めたら、辞めることが簡単には出来ません。
そして自分が興味を持たなければ、全く勉強もしないし、人を見ることもしない。そこに誰かいたとしても、脳に入ってこないという感じなんです。やることが全て極端になってしまう。それを、小さな頃から、祖父母や両親に随分と矯正されて、なんとかこの年齢までやってきている次第です。
なので、この主人公の屋内の気持ちがよく解りました。この小向花という女性、とても怖いと思いました。屋内の家に泊まって迫ったり、告白して泣いたり、はっきり言って考えられませんでした。これ、屋内からしたら、恐怖でしかありません。映画では、受け入れているように描いてあったけど、実際はこうなりません。
一緒の部屋に寝てしまった場合は、女として見ていないのでそのまま寝てしまうと思いますが、迫ってきたら、恐怖を感じたと思いますよ。それが何か理解出来ないんですから。通常、くっつかれるのは嫌がります。ある程度は我慢しますが、信頼している人でないと難しいです。
そして、告白されて泣かれたら、相手の気持ちは解らないけど、目の前で泣いていて凄い目で睨みつけているので、恐怖でしかないです。自分が悪いことをして怒られていると感じてしまうので、二度と会いたくないと思うし、介助の人がいる場合、その人の後ろに隠れるようになります。
障害を持った人間をよく描いてくださったと感謝しながらも、現実と違う部分が少し気になりました。もし、実際にこんな事があった場合、女性は、このような事はしないで欲しいです。すごく本人が傷つきますから。今も、福祉施設を設計しているので、発達障害の方とはとても仲良くさせて頂いています。よくご一緒しますが、少しの事でも傷つきますので、これだけはダメという事があり、ここで描かれたこともその一つです。
映画の話に戻って、この春という女性ですが、私から見ると、嫌な女性でした。男性に依存するタイプで、自分は何かして貰うのが当たり前と思っているんです。だから、屋内にも迫って、相手から何かして貰おうとする。気持ちが解って貰えないと、泣いたりする。おいおい、絶対にこだわっちゃうアスペルガー気質の人間には近づいて欲しくないタイプだよって思いました。
こういう障害を抱えている人間には、何をしても、”仕方ないなぁ。”と言ってくれる人でないと無理なんです。もちろん、これはダメとか、こうした方が良いとか、色々とアドバイスはして欲しいけど、押し付けられると受け入れられないので、この方が楽しいよとか、危ないからこうしようとか、他の事に目を向けさせるとか、そういう事が出来る方でないと付き合ってはいけません。
もちろん、私も同じなので、私の夫は、いつも”仕方ないなぁ。”と言いながら、直してくれたりしています。それくらい、大らかな人でないと、無理なんですよ。障害と認定されなくてもそうですから、屋内のように障がい者であれば、目の前で泣いたり、気持ちが解らないからと言って責めたりしたら、その場で、介護者を呼ぶか、恐がって走り回っていると思います。屋内さん、落ち着いていたなぁ。まぁ、映画ですからね。でも、本当にやってはいけないことをしていました。
映画では、色々な事もうまくいって、最後はまとまって良かったと思いました。色々と書きましたが、こうやって、映画にしてくださることは、とても嬉しいです。
障がい者施設を作ろうとしたり、どこかに借りようとすると、周りの方々から、反対の声が上がったり、心配する声があがり、簡単に作れない事が多いんです。映画で描かれているように、普段は何も変わらないんですよ。ちょっとこだわりがあったり、何かをするのに助けて貰ったりが必要なだけ。但し、責められたり、睨まれたりすると、恐くなって自分を守ろうとしてしまいます。こういう映画で、正しい事を伝えてくださると、本当に助けにもなります。
障害を持つ人間には、今も厳しい現実が沢山ありますが、ちょっとしたやさしさがあれば、何てことは無いんです。誰も困ることなんて無いんです。それを解かって欲しいし、こういう映画で、身近にも沢山暮らしている事を理解して欲しいです。理解しなければ、何も始まりませんからね。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。色々と書いてしまいましたが、こうやって描いてくださることが、理解に繋がっていくと思います。とても嬉しいです。そして、沢山の方に観て頂いて、みんな、一緒なんだよって解って欲しいです。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「はざまに生きる、春」