「苦い涙」
を観ました。Fan’s Voiceさんの、独占最速オンライン試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
恋人と別れたばかりで落ち込んでいた映画監督ピーター・フォン・カントのアパートに、親友である女優シドニーがアミールという青年を連れて訪ねてくる。艶やかな美しさのアミールにすっかり心を奪われたピーターは、彼を自分のアパルトマンに住まわせ、映画界で活躍できるよう手助けするが。
というお話です。
1972年、著名な映画監督ピーター・フォン・カントは、恋人と別れて落ち込んでいた。助手であるカールと暮らしている彼は、カールを召使いのように使っていたが、カールはそれでも文句ひとつ言わず、ピーターに尽くしていた。
そこへ、3年ぶりに大女優で親友のシドニーが訪ねてくる。シドニーは、その昔、ピーターが発掘した女優だが、有名になるとピーターと分かれハリウッドへ進出。しかし、あまり成功はしなかったらしい。そんな彼女が、美しい青年アミールを連れてやってくる。北アフリカ系の俳優アミールに、ピーターは恋をしてしまう。
アミールの宣伝用フィルム撮影をしながら、どんどん彼に惹かれ、ホテルに滞在しているというアミールを、金の無駄だから、こちらに越して来ればよいと言い、彼を呼び寄せ、一緒に暮らし始める。そして6ヶ月後、アミールは裕福な生活に慣れ、横柄になり、浮気までするようになる。怒るピーターだが、アミールへの思いを断ち切れない。
そんな時、アミールの妻からの電話がかかってくる。離婚すると言っていたじゃないかというピーターに、離婚するかもと言っただけと言い、ピーターからお金を貰って妻に逢いに行ってしまう。残されたピーターは…。後は、映画を観てくださいね。
有名な映画監督ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの作品「ピーター・フォン・カントの苦い涙」を、フランソワ・オゾン監督がリメイクした映画です。この元の映画を、私は観ていませんが、あらすじを読むと、内容はほとんど同じなようです。でも、ファスビンダー作品は、全員、女性だったようですが、このオゾン版では、絡んでいくのは男性で、友人や他は、女性として描かれていました。
前の作品を観ていないので、比較は出来ませんが、この映画の感想を書いて行きます。オゾン監督は、主役の映画監督を、ファスビンダーのイメージで描いているように見えるらしいです。
ピーターは、とっても傲慢で、いつも自分は王様と思っているようなタイプです。なので、助手のカールが、こまネズミのように動き回ってフォローしているのに、何もありがたいと思っていません。ま、でも、こういう人、いるよねぇ。私も、こういう人、見たことありますが、人間としてどうなんだろうと思います。やっぱり、相手も人なんですから、敬意をもって、頼む時はお願いしますと言うべきでしょ。
カールは助手だから、仕事をしている時は、キツイ言葉になってしまっても仕方が無いと思うけど、でも、今どき、パワハラはダメですよ。カールは、もう、長くピーターを補助しているので、何もかもが完璧なんです。こんなカールなら、私も一人欲しいくらいです。でも、私なら、こんなキツイ言い方しないですよ。もちろん、パワハラはダメ。ちゃんとお願いします。
そんなピーターとカールの生活の中に、アミールが入ってきます。魅力的な美青年なんだけど、あっという間に贅沢に慣れるのよね。人間って怖いわ。どんなに態度が悪くても、ピーターはアミールにゾッコンなので、仕方ありません。振り回されているのはカールだけみたいに見えたけど、一応、ピーターも振り回されているのかな。
やりたい放題のピーターとアミールですが、半年後、アミールに妻から電話がかかってきます。これ、凄い展開だと思いました。え?アミールって、結婚しているのに、ピーターの所で暮らしていたの?ってなりますよね。よく聞いてみると、ずっと妻とは連絡を取っていたらしいんです。奥さんには何て言っていたんだろう。親切な監督が、家に合宿のように住まわせてくれて、お金もくれていたんだよって言っていたのかな。どう考えても、身体の関係があることは解りますよね。
バイセクシャルなのは良いけど、自分の夫が、自分以外の男と寝ているのって、私は許せないけどな。相手が女なら、相手と喧嘩して終われそうだけど、相手が男だと、どうやって喧嘩したら良いのか解らないですもん。恋愛って、難しいですよね。好きになるのは自由だけど、相手がいることだし、お互いの考え方がピッタリと合えば良いけど、そう簡単にはいきませんよね。
ピーターは、アミールとどうしたかったのかしらと考えると、ただ、自分のそばに置きたかっただけだと思うんですよね。いきなり、自分の家に連れてきて、一緒に住んで、妻と別れるつもりという言葉を信じて、なにもしなかったんでしょ。本当に好きで、恋人になりたいなら、ちゃんと告白して、結婚しませんかって話すべきでしょ。もし、話していたら、アミールは、自分は妻と別れるつもりはないとか、伝えたと思うんですよね。
どう見ても、ピーターは、自分は有名監督なんだから誰も拒むことはしないし、喜んで自分のモノになってくれるだろうと思っていたんじゃないかな。ところがぎっちょん(by.ルリ子)、誰もそんな事は思わず、誰もが、自分の好きなように生きて、好きな人と過ごしたいと思っている。有名監督だろうが、なんだろうが、本気で好きになって尽くさなければ、誰も振り向いてくれないんだよっ!ということです。
この”ところがぎっちょん”って、シン・仮面ライダーでルリ子が言ってたけど、元ネタってなんなの?嫌にかわいくて、楽しかったので使ってみたんだけど、”ところが”っていう意味で良いんですよね。書いてから、ちょっと心配になって、ここに書いてみました。(笑)「ちょっきんちょっきんちょっきんなー」みたいで、とってもテンポが良くて、好きになったんです。ちなみに、ちょっきん~は、子供の頃に、カニさんのアニメでやってた唄だと思います。
話を戻して、ピーターは、何が大切な事なのか気がつかず、自分勝手に大騒ぎをして、結局、全てを失くしてしまうという、自業自得よっていわれるような人で、ちょっと、イイ気味だなって思っちゃいました。きっと、本当は、素晴らしい映画監督なのだろうと思うけど、本人の性格がこれでは、誰も一緒に暮らしてくれようとしないですよね。
そんな一流映画監督の成功と挫折が描かれていました。私は、どんなに素晴らしい映画監督でも、性格が最悪なら嫌いだけどなぁ。ほらほら、面白い映画を作る監督でも、セクハラやパワハラしてる人、いたでしょ。全てに完璧なひとが映画監督をやるべきとは言わないけど、でも、人が嫌がることをするのは間違っているよね。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。現代にこれを観ると、うーん、こんな有名人、いるよなぁって思い当たって、ちょっと笑ってしまいました。面白いコメディでした。私は好きです。フランソワ・オゾン監督作品としては、シンプルなんじゃないかなと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「苦い涙」