「怪物」
を観てきました。Fan's Voice独占試写会に参加させていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。そんなある日、学校でケンカが起きる。それはよくある子ども同士のケンカのように見えたが、当人たちの主張は食い違い、それが次第に社会やメディアをも巻き込んだ大事へと発展していく。そしてある嵐の朝、子どもたちがこつ然と姿を消してしまう。
というお話です。
大きな湖のある郊外の町。
息子を愛するシングルマザーの早織は、息子の湊と2人で暮らしていた。夫は亡くなっており、父親の誕生日にはバースデーケーキのロウソクを吹き消して祝うような、仲の良い親子だった。
ある朝、息子が学校に行くのを嫌がっているように見えるが、そのまま学校に行かせる。その日から、運動靴が片方しか無かったり、水筒を開けると泥が入っていたりする。何かあるのではないかと、早織は心配になり、問い詰めると、保利先生に暴力を振るわれたという。
驚いた早織は、学校へ行き、校長に話をするが、校長は聞いているのか聞いていないのか、心ここにあらずで、教頭や学年主任が出てきて、再度話を聞く始末。学校側は、穏便に済ませようと、謝るだけで何の対処もしようとしない。それが早織の怒りに火をつける。
保利先生は、暴れるのを押さえた時に手が当たってしまっただけだと言い、暴力は振るっていないという。一体、誰の話が真実なのか、全く解らない。段々と話しは大きくなり、教育委員会やマスコミまでもが取り上げるようになり、保利先生を追い詰めていく。
一方、早織は、湊の友達である依里の家を訪ね、話しを聞こうとすると、依里の両親は不在。依里が家にあげてくれると、湊の靴の片方があることに気が付く。そして湊への見舞の手紙を書く依里の文字が逆転している事に気が付くのだが…。後は、映画を観てくださいね。
この映画、凄い映画でした。最初観始めると、謎ばかりで、出てくるキャラクターたちも、おかしな人ばかり。何なんだろうと思っていると、息子までおかしくなってくる。おいおい、これは、何か凄いことが起こっているんじゃないだろうかと予感させるんです。最初の方は、早織の視点で描かれているので、息子を心配する母親の目線で、心配で心配で仕方ない気持ちが伝わってくるんです。
そして、段々と、色々なことが描かれていくのですが、ホント、人の考えることって、何処までも自分勝手で、自分の知識がある部分でしか想像が出来ないから、全体的になにが起きているのか、理解が出来ないんですよ。これ、よく解るのですが、例えば、私は建築屋なので、床壁柱があって家は建ってますと説明しますよね。でも、その部分が、どうやって緊結しているのか、何で繋がっているのかを説明しても、知識が無い人には解らないと思うんです。建物は想像出来ても、どう出来ているのかは解らない。それと一緒で、子供たちがいて、先生がいて、何かがあったことは解るけど、その詳細は、例え説明されても、きっと理解出来ないんです。
なので、子供たちは親に詳細を説明しないし、先生も詳細に説明しない。学校は、問題にしたくないから知りたくない。そんな状況なんです。早織は、息子と仲が良いし、理解出来ていると思っているけど、でも、息子にしてみれば、母親に話せない事もあるし、相談出来ない事もある。自分の身体は成長していくし、お父さんはいない。どうしたら良いのか、解らなくなって行っちゃうんです。
学校での虐めも出てくるのですが、すごくリアルでした。子供たちって、大人が観ていない所でやっているんですよね。そして、子供同士でも、庇い合うんです。次に自分が虐められると嫌だし、子供ながらに、見て見ない振りをするのが一番だと、大人を見て、学習しているんです。だから、虐めがエスカレートする前に止めるって、本当に大変だと思いました。やっぱり、教室にこっそりと監視カメラを設置するのがいいんじゃないかなぁ。教室って、誰の目にも触れない密室ですからね。子供のやりたい放題です。大人って、そういう事、解っているのかしら。
そして、学校の対応ですが、こちらも凄いリアルでした。虐めを教育委員会に届け出なかったとか、よくあるじゃないですか。きっと、この映画みたいなんだろうなと想像しました。校長が、正しいか正しくないかなんてどうでもいいんです、謝って、問題にしないことが学校を守るためですって言うんですけど、校長なら、そういう考えなんだろうなと思いました。だって、長年勤めてきて、やっと校長になったんでしょ。これで年金もたんまり貰えるし、穏便に定年したいと思っているんでしょう。問題を起こしたくないんです。
親の立場にしてみれば、たまったもんじゃないですよ。息子に暴力を振るわれて、学校に行きたくないと言っているんです。小学校ですよ。これから勉強して、成長していくって言うのに、小学校でそんな事があってつまづいたら、これからどうしたら良いのかしらと心配でしょ。学校なんて必要無いという人もいるようですが、知識は必要です。一人だけで得られる知識と、集団生活で得られる知識もあるんです。親としては、バランスの良い人間として成長して欲しいので、学校に行って欲しいと思いますよ。それが普通だと思うけど。
もちろん、先生の立場も解ります。問題のある子も多いし、全員を平等に見ようとは思うけど、そう簡単にはいかないのも解ります。私も教員免許を持っているので思いますが、必死で子供を止めようとすれば、手も当たる事がありますよ。それを暴力と言われてしまったら、どうしようもないですよね。だから、教室に監視カメラを付けた方が、生徒も守るけど、先生も守ることになるんです。
人間って、大人でも子供でも、自分に都合の良いように解釈するし、頭の中で変換して、自分を守るような話にしてしまうんです。だから、食い違って、大事になってしまうんです。でもね、興奮している時は、周りが見えなくなっちゃうけど、冷静に考えれば、きっと、お互いに理解し合えるし、なーんだっていう事に落ち着くと思うんですよ。でも、それが出来ない。もう、目の前の事で一杯になっちゃっているから、どうしようもなく、突き進んでしまうんです。
本当は、この映画、もっと話したい部分があるんだけど、ネタバレになるから書けないんです。そちらの方は、公開されてから考えたいかな。まず、今の時点では、主人公の早織が陥る恐怖ですよね。何が真実なのか解らなくて、どうやって子供を守ったら良いのか解らなくなってしまうというところかな。親としては、本当に心配でたまらないと思いました。
ああー、もっと書きたいけどこれ以上は書けない!うーん、子供たち、可愛かった。こんな子供たちを悩ませるなんて、社会が悪いわよね。子供には、何でも話せる存在が必要だよなぁ。でも、自分も子供のころ、大人には話せない事が一杯あったから、いつの時代も、話せないのかもしれませんね。話せない悩みを、成長して自分で解決してこそ、知識のある大人になれるのかもしれません。子供のころから、何でも大人が解決してくれちゃってたら、人の気持ちなんて理解出来ない人間になってしまうかもしれませんから、悩むことは必要なことなのかもしれません。
最後に、坂本さんの音楽、ピッタリでした。さすがに素晴らしいです。音楽でも、登場人物たちの感情が描かれていて、不安、葛藤、そして愛も、音楽の中に込められていました。音楽を聞くだけでも、情景が浮かんできます。良かったです。
私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。これは、カンヌ国際映画祭に呼ばれますよ。賞はどうなるか解りませんが、やはり呼ばれると言う事は、素晴らしい作品なのだと納得のいく作品でした。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「怪物」