イタリア映画祭「蟻の王」同性愛が病気とされた時代、芸術家と青年の愛は裁判で潰されました。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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イタリア映画祭にて、

 

「蟻の王」

 

を観ました

 

ストーリーは、

 

1960年代、アルド・ブライバンティは、蟻の生態研究者であり、詩人・劇作家としてピアチェンツァ郊外の町で芸術活動を行っている。彼が主催するサークルには、多くの若者が集まるが、この時代、同性愛者のアルドに対し町の目は厳しかった。

 

 

サークルに通う若者の一人リッカルドの弟エットレは、アルドに出会い、保守的な家族からは得られぬ安らぎを得るようになる。二人は惹かれ合い、エットレは家族の反対を押し切ってアルドとローマに移り住む。そんな息子を取り戻すため、エットレの母と兄は金を使って、二人の住んでいる場所を突き止め、大家に鍵を開けさせ、無理矢理、エットレを連れ去ってしまう。そして、同性愛を正すための治療と称して、精神病棟にて脳への電気ショックなどを与え、ロボトミー手術さながらの治療を行っていく。

 

1965年エットレの母と兄がアルドを訴え、彼は逮捕されることとなる。ファシスト政権下で成立した教唆罪を問う初めての裁判となった。アルドがエットレを洗脳し、同性愛を強要したというのだ。エットレは事実無根だと言っているのだが、裁判は進んでしまう。この時代、同性愛は風机上許されない事であり、不公平な裁判が行われたのだった。

 

 

新聞記者のエンニオはアルドの裁判の取材を重ねていた。世間の反応は冷ややかだったが、法を曲げて同性愛者を糾弾する裁判が進む中、アルドを指示する人々も増えていく。エットレは電気ショック療法の後遺症が癒えぬまま、彼のため法廷で証言するが、アルドに禁固9年の有罪判決が下ってしまう。そして。

 

というお話です。

 

 

この映画の時代1960年代、今から60年程前には、こんなに酷い同性愛やLGBTQの方への差別や偏見があったという事が描かれていました。だって、愛し合う二人を認めずに、洗脳したとか、同性愛は病気だからと言われて、犯罪にしてしまうなんて、酷いと思いませんか?だって、何も悪い事はしていないんですよ。でも、これが現実なんです。この映画は、実話を元に作られており、「ブレイバンティ事件」と言われる事件の内容だそうです。

 

アルドは、蟻の研究者としても有名ですが、元々、反ファシストのパルチザンとして活躍していたそうです。戦後に、その芸術的才能を発揮し、詩人で劇作家としても活躍していたそうです。そんな彼が、芸術的活動を支援するワークショップを立ち上げ、そこに若者が集って来ており、その中に、リッカルドとエットレも参加していました。

 

 

エットレは聡明で美しく、アルドも、そんな彼を気に入りました。そして、恋仲になったのだと思います。そんな二人にリッカルドは嫉妬したのだと思いますが、母親と一緒に、ローマに移動した二人を見つけて、エットレを連れて行ってしまい、そしてアルドを訴えることにします。

 

この裁判、本当に酷いんです。基本として、男が男を好きになるハズはないというモノがあり、好きになったのは洗脳されたからだという理屈なんです。だから、教唆罪なんですね。映画では、描かれていませんが、その判決文は酷いそうです。主演のルイージ・ロ・カーショさんがお話してくださいましたが、とんでもない判決文だそうです。

 

現代は、LGBTQに対しては寛容になり、日本では、本当に普通になってきたような雰囲気がありますが、やはり、ちょっと昔には、それだけで罪にされてしまったりがあったんですね。

 

 

アルドという人物は、頭の良い方だったので、あまりにも知的レベルの低い裁判が行われたため、全く反論する気持ちも無くなり、黙秘をしていたようでした。そりゃそうですよね。人間の趣向の自由が奪われているんですから。それも低俗な言い回しで、侮辱するような言葉を投げかけて、今なら人権侵害で訴えられますよ。

 

可哀想だったのは、恋人だったエットレで、凄く美しい青年だったのに、精神病院に入れられ、電気ショック療法とやらをさせられて、脳の機能が低下してしまったと思います。それこそ、ロボトミーというやり方です。そんな事をしても、何の役にも立たないのに、バカな時代でした。あんなに強い電気ショックを脳に直接与えられたのでは、脳のシナプスも壊れ、伝達機能も随分と失われたんじゃないかな。だから、半分俳人のようになってしまって、その姿で裁判の証人として出てきました。

 

 

彼を連れ戻した家族は、彼を見捨てて、彼は施設で暮らして死んでいったようです。酷いですよね。どうせ捨てるなら、脳の治療も、裁判もしなければ良いのに、息子をどうしたかったのかしら。周りの体裁だけを考え、息子自身を愛していなかったのかもしれません。それをエットレ自身が感じていて、だから、自分を愛してくれたアルドに付いて行ったのだと思いました。

 

二人でいる場面は、とても美しかったですよ。そんな美しい二人が、どうして引き離されなければならなかったのか、本当にムカつきました。あんなに幸せそうだったのに。と言っても、二人が過ごしている時間を描いている場面は少ないので、もっとあっても良かったんじゃないかなと思いました。

 

 

この映画、日本公開が決まっていまして、今年の秋には公開すると思います。私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。美しい映画でした。こんなに愛し合っている二人を、世間の目が引き離すという、そんな酷い時代もあったのだと知ってください。ボーイズラブが大流行りの現在、本当に趣向の自由が確立され、全ての人々に権利があるようになり、差別や偏見をする人間の方が、糾弾される時代になりました。本当に嬉しい事です。でも、そうでなかった時代もあったことを、忘れてはいけないという映画です。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「イタリア映画祭 2023」