イタリア映画祭にて、
「スイングライド」
を観ました
ストーリーは、
ベネデッタは15歳。両親と2人の妹と暮らしている。ダンサーの夢を諦めた母親にダイエットを強いられ、摂食障害気味だ。確かにベネデッタは周りから“太っちょ“とヤジを飛ばされるような体型をしている。母親からダイエット用の食事をさせられているが、隠れてお菓子を食べているので、全く痩せることが無い。
ある日、学校からの帰り道、車から放り出される青年と出会う。女性名アマンダと名乗るその青年は、移動式遊園地で働いており、定住地を持たずにトレーラーハウスで暮らしていた。
常識も他人の視線も意に介さず自由に振る舞う姿に惹かれ、ベネデッタはアマンダの「家」であるトレーラーハウスに通うようになる。彼女はアマンダに連れ出され、円形ブランコのスイングライドに乗ったり、クラブで踊ったりして道の世界に触れ、友人や母親を心配させるが、アマンダと過ごす時間に居場所を見出して行く。
やがて遊園地が次の街に移動することになり、ベネデッタは親に内緒でアマンダと一緒に旅立つ。移動先でも気になる相手がいれば家に引き込むアマンダと、家出したベネデッタは奇妙な共同生活を続けるが、バーで出会った男性マリオが二人の関係を変える。
というお話です。
15歳の少女の自立を描いている映画でした。母親が過干渉しているわけではないのですが、母親なりに、あまりにも太っている娘を心配して、ダイエットをさせようとしているんです。確かに、あれだけ太っていると健康問題もあるし、若いころって見栄えが大切じゃないですか。どうしても、見た目が良い子が得をするというのがあるでしょ。おしゃれにも気を使うようになるしね。だから、母親は娘が青春を謳歌出来るようにと考えたのだと思うんです。でも、ベネデッタは見栄えなど気にせず、常識も周りの視線も気にせずに、自由に生きたいと思っているんです。
気持ちは凄く解るんです。好きに生きていけたら、それに越したことはないと私も思います。でもね、社会って凄く冷たくて、ルッキズムは消えないんです。第一印象って大切でしょ。付き合っていけば、そりゃ、この人は外見はこうだけど、凄く素晴らしい人だとわかるけど、付き合ってみなければ解らない。いくら見栄えで判断してはいけないと言っても、誰もが最初は見た目なんです。
ベネデッタは、まだそういう社会の冷たさを知らず、好きに生きていければという考えなんです。でも、アマンダと出会って、彼が自由に生きていそうでいながら、それなりに社会に順応して、見た目も気にしていることに気がついていきます。そういうモノに囚われていることに気がつくんです。
見た目で判断するのは良く無いことだし、それを変えていけたらどんなに良いかと思います。でも、やっぱりどうしても、自分の好みの人に良くしてしまうし、それは自分の趣向だからどうしようもないんです。私は、不潔な人は苦手だし、あまりにも太っている人は怖いと思ってしまいます。どうしてと言われても、子供の頃からの経験上、嫌な思いをしたからだと思うんです。
私が建築の仕事を始めた頃、上司が私に、綺麗な人は性格が良いが、見た目が悪い人は性格が悪いから気をつけるようにと言いました。え?と思いましたが、理由を聞くと、子供の頃から容姿が良くて良い思いをしていると、人を疑わなくなり優しくなるけど、そうでないと、いつも損をすることばかりで、あさましくなる傾向があるからだと言ったんです。なんか、凄い話だと思いませんか?ちょっと驚きました。そんな時代だったんだろうなと思います。
そんな事もあるので、ベネデッタの母親が娘にダイエットを必死でさせている理由も理解できるんです。それだけ、娘を心配しての事だったと思います。でも、それが娘には伝わらないと言うのが、辛いなぁと思いました。母親は、ダンサーとして成功していたのに、子供が出来て、夢を諦めて、辞めるしかなかったんです。娘には、夢を精一杯追って欲しいと思ったんじゃないかな。その為には、見た目も大切ですからね。
アマンダは、トランスジェンダーらしく、男性だけど、女性として生きています。ダンスで成功したくて、オーディションなどを受けて、頑張っているのですが、だらしないところもあって、その日暮らしと言う感じなんです。一応、サーカスの仕事をしっかりとはしているんですけどね。ベネデッタが、どうしてこのアマンダに惹かれたのか、イマイチ理解出来ませんでしたが、まぁ、自由そうだなと思ったのかな。私から見ると、好きなことが出来ず、もがいているようにしか見えませんでしたが。
15歳って、何が正しくて何が間違っているのか、よくわからない時期ですよね。だって、正しいことをしている大人が少ないんですもん。でも、正しいことが全て良い事では無いんですよね。そんな事が人生なんだと、まだまだ理解が出来ないのでしょう。可愛いけど、これから理解していかないとね。
そんなことを感じた映画でした。ベネデッタを演じていた女優さん、オーディションで選んだそうなのですが、実際に15歳だったそうです。目が印象的で、ふくよかだけどとても整った顔をしているんです。はっきり言って美人なんです。なので、映画では母親が心配しているけど、きっと、そのままで十分にモテるし、可愛がられているんだろうなと思いました。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。若いころに感じていた社会に対しての違和感や、大人への不信感などが、良く描かれていると思いました。日本公開は、まだ決まってないみたいですが、もし、観る機会があったら、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「イタリア映画祭 2023」