イタリア映画祭「奇妙なこと」ルイージ・ピランデッロが”あの作品”を書くきっかけになったお話です。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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イタリア映画祭にて、

 

「奇妙なこと」

 

を観ました

 

ストーリーは、

 

1920年、ピランデッロは、作家仲間ヴェルガの誕生日を祝うためにシチリア島に帰郷する。思いがけず、乳母の死を知った彼は、葬儀に立ち会う為故郷の町に滞在することにする。

 

葬儀屋のオノフリオとセバスティアーノが乳母の遺体を引き取りに来るが、埋葬場所の手配が出来ずにピランデッロは足止めをくらう。葬儀屋の2人はアマチュア劇団を主催しており、著名な作家と知らぬままピランデットを初日公演に招待する。

 

 

公演当日、こっそり劇場に現れ、舞台を見守るピランデッロの前で、アマチュア劇団の公演は観客を巻き込んで大騒ぎとなり、主催者の2人も舞台上で喧嘩をして決別してしまう。

 

公演から6ヶ月後、オノフリオとセバスティアーノはローマに向かう列車で再会する。ピランデッロが新作の公演に2人を招待したのだ。「作者を探す6人の登場人物」の初日は、賛否両論を巻き起こし、作者はあ劇場を去る。閉館後、客席にはシチリアから来た2人の姿があった。

 

というお話です。

 

 

ノーベル文学賞作家のルイージ・ピランデッロが、ノーベル賞を貰うきっかけとなった「作者を探す六人の登場人物」を書く前に経験した、不思議な体験を描いています。もちろんフィクションですが、上手く出来ていて、喜劇といいながら、ちょっと怖くて、観ていると、何が現実で、何が空想なのか、誰が話の登場人物で、誰が想像だけの人物なのか、交錯してしまって、解らなくなっていくんです。でも、最後の最後で、あ、こういう事だったのねと納得させてくれるというお話でした。

 

ルイージは、妻の病気や忙しさから、戯曲が書けなくなっていて、不思議な人物たちが登場してくる夢に悩まされています。電車の中でも、夜寝ていても、その奇妙な夢を見るんです。自分でも、それが何を表しているのか分からず、ただ、自分の不安が具象化しただけと、気にしないようにと思いますが、それでも拭えないんです。

 

 

そんな時に、乳母の葬儀を執り行う2人と出逢います。葬儀屋をやりながら、アマチュアの劇団をやっていて、町のみんなと舞台をやる予定なのですが、全然、上手くいきません。で、ピランデッロが、あの有名な作家だと知り、舞台を観に来て欲しいとチラシを渡します。

 

 ルイージは、その舞台をこっそりと観に行くと、脚本通りに進まず、それぞれの私生活が混ざってしまい、大喧嘩になって幕引きとなってしまいます。そんな舞台を観て、登場人物にも意思があることに気づいたのだと思います。

 

 

そして、有名な"作者を探す六人の登場人物"という戯曲を思いついたんじゃないかな。不思議な巡り合わせで、故郷で体験した出来事でしたが、果たしてその事が、実際に起きた事なのか、それとも、ルイージの頭の中で起きたのか、よく分からないんです。

 

 その"作者を〜"は、初演時、難しくて、賛否が分かれて大騒ぎになったようでした。確かに、不条理劇だし、結末が無いので、初めて観た人は戸惑っただろうなと思います。でも理解が出来ると、よく舞台劇でこれをやったなと思うような内容で感動します。この舞台、最初に観て、理解出来た人、凄いなと思いました。

 

私は、この「奇妙なこと」さえ、映画祭で2回観て、やっと納得出来て、感動したんですもん。わざわざ、コメディにしてくれているのに、それでも理解するのに苦労をしてしまった私でした。(笑)

 

 

このルイージ役をトニ・セルヴィッロさんが演じてくださったので、深みが出たと思います。映画を観ていると、彼だけ、違う次元を彷徨っているような、そんな雰囲気があるんです。同じ世界のハズだったのに、何故か、彼の周りだけ違う空気なんです。

 

それを、ずーっと最後まで引きずって、あれ?と思ったら、劇場受付の男性が、ルイージが”頼んだでしょ”という招待客のリストを、”頼まれていません”と言うんです。リストもありません。まるで、違う世界から戻ってきたような、驚いた顔をするルイージですが、ハッと気が付いたような顔で、”いいんだ。”と言って去るんです。これを、どう取るのかは、観た人によって違ってくると思いますが、私は、彼がどこか違う世界に入っていたことに、気が付いたのではないかと思うんです。彼しか解らない、何かを見つけたんじゃないかな。

 

 

ノーベル文学賞を貰うような、そんな発想をする小説家ですから、きっと、彼の中に宇宙を持っていたのだと思います。そんなことを感じる映画でした。もちろん、この映画はフィクションなので、本当のルイージ・ピランデッロさんが、そんな方だったかは、解りませんけどね。

 

面白い映画でした。私は、2度観て、自分の解釈を見つけました。面白かったです。そして、トニさん、やっぱり素晴らしい俳優さんです。舞台が中心の俳優さんですが、映画でも、その実力を存分に発揮してくださっていて、素敵でした。

 

 

イタリアでは、演劇や映画、TVドラマなどの境界線があまり無く、演劇の人が映画に出たり、TVに出たりと、色々あるようですね。日本も、やっと最近、その垣根が無くなって、舞台俳優さんが映画やTVにも出てくれるようになってくれました。反対に、TVや映画の俳優さんが、舞台で実力を付けてくるということも多くなってきました。

 

垣根が無くなると、エンタメ界が一つになり、本当に実力の世界になってくるので、アイドルだけで何も勉強をしなかった人は、飽きられて、観て貰えなくなると思います。そうすると、どんどんレベルが上がっていくので、ハリウッドやヨーロッパのエンタメ界とも、交流が出来てくるんじゃないかな。最近は、日本の俳優や監督の海外進出も増えてきているので、期待をしています。少し話が反れましたが、戻しましょう。

 

 

この映画、私は、超!超!お薦めしたいと思います。この大人版、不思議の国のアリス的なお話は、笑えて、歴史的な出来事を描いています。賛否があるかと思いますが、理解出来た時、パッと明かりが点いたように、楽しくなります。私、2回目で、目の前のモヤがサッと晴れた様になりました。凄く気持ち良くて、楽しくなりました。日本公開は、まだ決まっていないようですが、出来たら、「遺灰は語る」と連ねて上映して欲しいですね。同じ、ルイージ・ピランデッロさんのお話なんですから。ま、一方は、遺灰になっちゃってますけどね。観る機会があったら、ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「イタリア映画祭 2023」