「ヴィレッジ」
を観てきました。Fan's Voice独占試写会に参加させていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
美しい集落・霞門村(かもんむら)に暮らす片山優は、母親が抱えた借金の返済のため処理施設で働くことになった。優は、仲間内からいじめの標的となり、孤独に耐えながら希望のない毎日を送る。そんな片山の日常が、幼なじみの美咲が東京から戻ったことをきっかけに大きく動き出す。
というお話です。
夜霧が幻想的な、とある日本の集落・霞門村。神秘的な「薪能」の儀式が行われている近くの山には、巨大なゴミの最終処分場がそびえ立っていた。
幼い頃より霞門村に住む片山優。子供の頃に、父親の起こした事件の汚名を背負い、その罪を肩代わりするようにして生きてきた。村では迷惑がられる存在となっている。しかし、ギャンブル依存の母親の借金返済のために、この村から出て行くことも出来ず、異才を放つ巨大最終処分場で朝から晩まで働き、希望の無い日々を送っていた。
そんなある日、幼馴染の美咲が東京から戻ってくる。東京で働いていたが、周りのスピードに付いて行けず、悩んで、この村に戻って来たのだった。美咲と優は、子供の頃から一緒に”能”を習い、仲が良かった。美咲が処分場に就職し、広報としてこの村と処分場を世間にアピールすることになり、見栄えの良い優を宣伝に起用することにし、優は処分場の分別係から広報に移る事となる。
周りの目は冷たく、いつまでも父親の事で文句を言う人間がいたが、美咲の親と子供は関係無いという言葉で、虐めも無くなる。霞門村の宣伝は驚くほど上手く行き、TVにまで取り上げられ、優は一躍有名になるのだが…。後は、映画を観てくださいね。
いやぁ、これは辛い映画でしたぁ~。内容をほとんど知らなかったので、こんなにも深くて暗い映画とは、ビックリでした。でも、とても考えさせられました。小さな村での出来事なんだけど、今の日本を、いや、今の世界を、この小さな村に集約したような、そんな内容だったんです。
この小さな村に、最終処分場を作るという事で、その昔、随分と争いがあったようで、それに巻き込まれて、優の父親がある事件を起こしてしまったんです。反対意見があったにも関わらず、結局、最終処分場は出来上がってしまいました。それにより、補助金などで村は潤いましたが、まだまだ過疎化は止まりません。そこで、観光地としてPRをし、処分場が良い施設であるというアピールをするんです。
優を起用したのは、差別の無い誰もが幸せに暮らせる村としてアピールするため。なんか、凄いですよね。でも、そこまでしないと、こんな小さな村だから、国は目を向けてくれないし、人口が減れば、他の村と統合されてしまいます。村長は、村を存続させるため、どんな手を使ってでもと思っているんです。
他の地域の汚いモノも受け入れて、廃棄物で汚染は無いと言い切っていますが、そんな事は解りません。その上、深夜にバイオハザードマークの入った感染性廃棄物まで受け入れていて、その処理を、優たちにやらせていたんです。優は、母親の借金を返す為に、深夜に呼び出されて、仕方なく処理場に埋める手伝いをしており、その事も、後々、問題になってきます。
この「臭い物に蓋をする」という考え方で、過疎地に原発や処理場などを押し付けるというのは、どうなんでしょう。その土地の人が承諾したからだとは思いますが、それでいいのかなと考えてしまいます。どこかに作らなきゃいけないのは当たり前なんだけど、自分の近くは嫌だと言うのはどうなんだろう。ゴミは、自分の地域で処分すると決めるべきなんじゃないかと思います。
汚いモノはお金を払って他の地域でというなら、その分を住民税に上乗せするべきじゃないですか?生半可な金額じゃなくて、ドッサリ上乗せすべきなんです。じゃないと、不公平ですよ。
でも、そうなると、処理場を外国人が経営するようになり(今も外国人の経営者が多いですよね。)、日本は、もっと格差が付くことになるから、処理場だけは、行政の管轄でしかやってはいけないと決めないと。不法投棄が増えているのはそういう事でしょ。この映画の中の処分場は、村が関わっている経営になっているけど、それでも、酷い職場で、パワハラは日常的に行われて、労働時間もめちゃくちゃでした。
そんな生活で苦しんでいた優は、美咲のおかげで、キツい労働環境から抜け出して、その上、誰からも尊敬されるような仕事に就けて、とても幸せな時間を手に入れます。美咲との恋愛も成就して、順風満帆な未来を夢見ているのですが、それがどうなるのかは、映画を観てください。
能の演目とストーリーがリンクしていて、美咲が説明をしてくれますが、その話の時は、ストーリーとリンクしているとは気がつきません。というか、解かっていても、こうくるか!って思うような展開になっていくので、ぎゃぁ~!ってなりました。うーん、辛い展開でした。人間の事を考えると、まぁ、そうなるのかなとは思いますが、うーん、人間の弱さが良く描かれていて、凄いと思いました。人間って、ヒーローになりたいっていう願望はあっても、最後までヒーローでいられるかというと、そうじゃない事の方が多いんですよね。まず、ヒーローではいられないんです。悲しいことですが、それが現実なんです。
横浜さん、凄かった。あの”流浪の月”の時も、素晴らしかったけど、今回は、それにも増して、険しい道のりを歩いているという感じで、よくやってくれました。若手で、こういう役が出来る方は、あまりいないですよ。綺麗な役はいくらでも出来るんだけど、こういう泥臭い役を出来るっていうのは、本当に努力をされているのだと思います。尊敬します。村長役の古田さんが、またイイ味出してましたねぇ。もー、大好き古田さん。(笑)悪い役を飄々と出来るから、笑っちゃいますよね。ホント好き。
藤井監督、凄い作品を作ってくれました。観ていけばいくほど、頭の中で、ヒリヒリとした痛みが湧いてくるような作品で、どこまで行ったら、人間は幸せになれるのだろうという事を、どこまでも追いながら、追いつけないという、何とも言えない映画でした。
そこに、日本伝統の能を絡めてきて、あの面を村人が被って歩いている場面は、今の日本そのままを象徴しているようで、恐いと思いました。誰もが感情を表に出さず、人の事も助けず、ただ他人の弱みだけを探して下げずんで見ているような表情、そんな風に見えました。日本は、いつからこんな冷酷な国になったんでしょうね。
平気で人の悪口を晒してお金を儲けるような、そんな社会、おかしいでしょ。悪い事をしていたらその場で言うべきだし、ノリでしてしまったなら、後からこういう事は辞めようとこっそり諭すべきでしょ。それでも辞めないなら罪として訴えるべきでしょ。人間は、間違いを犯すモノだし、一度の間違いで一生巻き返せないなら、その時に死ぬしかないでしょ。国全体に、優しさと”遊び”が足りないような気がします。遊びは緩みの方です。
そんな事を考えさせてくれる映画でした。心に刺さりました。私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。凄い映画でした。これは、観て頂くのが一番です。あーだこーだ言っても、伝えきれません。あの川村プロデューサーの最後の作品です。こういうパワーのある作品をプロデュース出来る方が、これからも出てくれる事を願っています。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「ヴィレッジ」