「ジョン王」
イングランド王ジョンの下へ、先王リチャード1世の私生児だと名乗る口の達者な男が現れる。ジョンの母エリナー皇太后はその私生児“フィリップ・ザ・バスタード”がリチャード1世に似ていたことから、親族と認め従えることを決める。
そこへフランス王フィリップ2世からの使者がやってくる。ジョンは、正当な王位継承者である幼きアーサーに代わってイングランド王となっていたが、王位をアーサーに譲り、領地を引き渡すように要求しにきたのだ。それを拒んだジョン王は、私生児フィリップを従えてフランスと戦うために挙兵する。
まんまと王族の仲間入りをしたフィリップは、権力者たちの愚かなふるまいを鼻で笑いながらも、戦争へと巻き込まれていく。
アーサーの存在が疎ましいジョン王は、腹心の臣下であるヒューバートに、恐ろしく非情な命を下す。この決断が、ジョン王とフィリップの運命を大きく狂わせるのだった。権力者の思惑に振り回され、世界は混迷を極めていく。というお話です。
この舞台は、シェークスピアシリーズの最後になるのかな。蜷川さんのシェークスピアシリーズ、何作かは観れたので、良かったです。これで最後になるのは寂しいけど、吉田さんが引き継がれて、最後まで出来て良かったです。
この「ジョン王」は、最初、現代の青年が、突然に過去に遡って、シェイクスピアの時代に迷い込み、フィリップ・ザ・バスタードという私生児となって、ジョン王の腹心として入り込むという話でした。シャツにジーンズという服で現れ、その上に甲冑を纏って、フランス兵と戦うという、面白い演出でした。
今の時代、突然に戦争が起きるかもしれず、例えば旅行に行っていた先で巻き込まれたり、まさかと思うけど、日本にどこかの国が攻めてくるかもしれない。そんな時は、シャツとジーンズで戦うしかないんですよね。そんな事を思わせてくれる演出でした。だって、ウクライナでは、ある日突然に、ロシアが攻めてきたんでしょ。いやぁ、ホント、恐ろしいです。
話の内容から考えると、ジョン王は、王としての才能は、あまり無かったように思います。フィリップ2世の方が、口が上手くて、頭が良いように見えました。だから、アーサーを立ててイギリスをも手に入れようと考えたのだと思います。そして、現に、ジョンが居なくなった後、自分が王になる訳ではないけど、摂政として入り込み、フランスだけではなくイギリスも思うように動かしていたんですよ。
やはり、才能のある人は、自分は裏に控えていて、全てを操るんですよね。頭が悪いと、自分が前に出て、自分は王様だ!社長だ!と騒ぐというのが定番です。良くいますよね。こういうオッサン。頭悪い事を晒しているようなもんだから、止めた方が良いですよ。俺が俺がっていう人間は、昔から頭が悪いと決まってたんですね。シェイクスピアも知っていたんだなぁ。(笑)
そんなやり取りを冷ややかに見つめる、私生児フィリップ。私利私欲だけの為に、沢山の国民を危険に晒し、王様だと騒ぐトップを呆れて見ていたのだと思います。そんな人間の為に、何故、戦わなければいけないのかという事を訴えていたように思えました。良い舞台でした。
私は、お薦めしたい舞台です。これから、配信やDVDなどで観れるかと思いますので、その時は、ぜひ、ご覧ください。
「笑の大学」
時は戦時色濃厚な昭和15年。登場人物は、警視庁検閲係・向坂睦男と劇団「笑の大学」座付作家・椿一。
非常時に喜劇など断じて許さないとする向坂は、上演中止に追い込もうと執拗なまでの注文を繰り返す。しかしなんとか上演許可をもらいたい椿は、向坂が要求する無理難題を逆手に取りながら、あくまで真正面からの書き直しに挑戦する。
警視庁の取調室を舞台に、相対する男二人のドラマが始まる。
というお話です。
この作品は面白いですよね。私、以前に一度、舞台でも観たし、映画でも観たので、今回、再演と聞き、ぜひ観に行こうと思っていました。今回は、内野さんと瀬戸さん。良いコンビでした。
やはり、脚本が面白いので、惹き付けられますよね。もうすぐ戦争という時に、舞台の脚本を検閲って、大体、そんな時に、喜劇を舞台でやりたいだなんて、誰も言わないと思うけど、この「笑の大学」という劇団はやりたいと言うんです。暗くなっている世の中を、少しでも明るく出来たらと思ったのかもしれません。
もちろん、警察は、そんなの認めたくないんだろうけど、最初から受け付けないと言ってしまったのでは、国民の反発を買うので、受け付けて、検閲でダメとするつもりだったんです。でも、この椿という脚本家は、どんな難題を押し付けても、改良して持ってくる。向坂が、どんなに無理難題を言っても、こうしたらどうでしょうとか、ああしたらどうでしょうとか、直してきて、どんどん面白い脚本になっていくんです。
これは、三谷さんだから書けた作品なんだろうな。うーん、本当に素敵な作品でした。お笑いだけじゃなくて、戦争がもたらす人々への不幸や、悲しみも描いていて、最後は感動して泣ける作品なんです。良かったなぁ。これ、映画では、役所さんと稲垣さんが演じていて、あのお二人も良かったので、今度は、稲垣さんが検閲官で、誰か若手に脚本家をやって貰うとか、出来ないのかしら。これは、これからも再演して行って欲しいです。
私は、この作品、超!お薦めです。これ、まだ地方で上演中ですので、もし、機会があったら、観て欲しいです。配信とか、TV放送とかは、ちょっと判らないけど、何かで観れたら楽しいですよ。ぜひぜひ。
ふぅ、後は、「ケンジトシ」、「アンナ・カレーニナ」、「蜘蛛巣城」かな。
これも、早めに記事を書きますね。でないと、どんどん溜まってしまうんです。(笑)
また、他の演劇も書いて行きます。お楽しみに。