「零落」漫画家という職業だけでなくクリエイターと呼ばれる人は、こんな思いを何度も抱くのだろう。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

 

「零落」

 

を観てきました。

 

ストーリーは、

8年間連載してきた漫画が完結し“元”売れっ子漫画家となった深澤は、次回作のアイデアが浮かばず敗北感を募らせていた。そんなある日、風俗店で猫のような眼をしたミステリアスな女性ちふゆに出会う。ちふゆにひかれた深澤は、ちふゆとともに彼女の故郷へ行くことになるが。
というお話です。

 

 

8年間の連載が終了した漫画家・深澤薫は、次回作のアイデアも浮かばず、かと言ってしばらく休むという選択も出来ず、焦りも相まって、自堕落で鬱屈した空虚な毎日を過ごしていた。

SNSには読者からの辛辣な酷評が書かれ、売れ線狙いの担当編集者とも考え方が食い違ってしまう。おまけにアシスタントを一時解雇したいと言うと、悪態をつかれ、身に覚えのないパワハラを指摘される。



 

全てのギアが噛み合わなくなったように、何も上手く行かず、多忙な漫画編集者の妻ともすれ違い、話も出来ない。大学の友人に逢うと子供の話が出るのだが、夫婦で子供について話した覚えが無く、夫婦として終わっている事に気が付く。

世知辛い世間の煩わしさから逃げるように漂流する深澤は、ある日、デリヘルを頼み、“猫のような目をした”風俗嬢・ちふゆと出会う。彼女にのめり込み、何度も彼女を指名した深澤は、ちふゆが実家に帰るというのをきっかけに、彼女と一緒に実家の田舎町に同行する。自然と触れ合った深澤は、何となくちふゆと別れ、東京へと帰る。

人生の岐路に立った深澤は、これからどうしていくのか。彼が選択した未来は、彼の希望道理だったのだろうか、それとも。後は、映画を観てくださいね。



 

原作を読んでいないので、映画だけの感想ですが、うーん、考えさせられました。漫画や小説、映画、TVドラマなどなど、人に観て貰ってこその仕事だと、どうしても視聴者や読者に媚びる方がウケがよい事になってしまう風潮がありますよね。でも、パッと受けるだけなら簡単だけど、その後、それを続けて観てくれる、読んでくれるのかと言ったら、何とも言えません。流行りは変わるし、浅い内容では飽きてしまいます。

 

かと言って、作者が好きなモノだけを作っていても、誰も振り向いてはくれないかもしれない。ホント、クリエイターにとって、その辺りの問題はずっと付いて周るし、生みの苦しみって言うけど、苦しいと思います。だから、ちょっと壊れてしまう人もいますよね。

 

 

この深澤も、人気漫画の連載が最終回を迎え、喪失感と、次の作品の思案で、ボロボロになっています。漫画家さんも、こういう時って、お休みした方が良いと思うんです。続けて連載しなくてもいいじゃないですか。1年位、休んで脳を休ませた方が良いと思うんです。アシスタントさんは、社員として雇うんじゃなくて、連載ごとに契約をすればいいんじゃないかな。

 

映画の中に、アシスタントが出てきて、解雇されたら困るとかって言ってたけど、酷い人を雇ったなと思いました。普通の会社じゃなくて、個人事務所でしょ。仕事が無ければ、解雇もあり得るって理解出来るよね。その上、パワハラだとか騒いで、事務所でタバコを吸うのは、雇用される前から解っていた事でしょ。それ、パワハラにならないです。解って雇用されたんだから。


 

このアシスタントとのやり取りで、漫画家って、こういうモノなのかなと思ったんだけど、自分は、色々な編集者の人に声をかけて貰っているような事を言っているのに、いざ解雇となると文句を言うんです。自分の漫画が認められているなら、それで仕事をして行けばいいじゃないですか。自分を雇用してくれている先生に対しても見栄を張るというか、自分の漫画は凄いんだと牽制するような態度って、自意識過剰でしょ。これを聞いていて、漫画家はいつも自分が一番と思っちゃうのかなと思いました。まぁ、そう思わなきゃ、やっていけないのかもしれないけど、それを人にぶつけちゃダメよね。

 

こんなアシスタントの姿を見て、深澤は自分が仕事の内容にこだわっているのが、ちょっとバカらしくなったのかもしれません。自分も、こんな奴らと同じ漫画家なのかと思っちゃったのかも。だから、漫画家である自分を高く思っていたんだけど、売れれば良いという考えだけなら、頭も使わず簡単に、売れる作品を描いてやればいいのかもしれないと、ふと思ったんじゃないかな。

 

 

そこから、深澤は吹っ切れてしまって、読者をバカにし始めたんじゃないかしら。低能な読者にも解るように、ウケる内容を描いてやるという態度に出てしまうんです。これは、自分を壊すことになりますよね。だって、漫画が好きで漫画家になったんでしょ。読者をバカにするという事は、漫画をもバカにしている事になっちゃうから、自分を汚すことになってしまいます。それはダメだよ。

 

どんな時も、自分は大切にするべきだし、自分の好きなものは汚しちゃいけません。大切にしていかないと。それが、仕事であれ、趣味であれ、好きなモノは自分なんですから。深澤は、きっと、それに気が付いたんじゃないかな。なんで自分は自分を汚すような事をしてしまったんだろうと、後悔したと思います。

 

 

ちふゆとの出会いで、意識が若い頃に戻り、もしかしたら最初に戻れるかもしれない可能性があったんだけど、漫画家という事を知られてしまい、意識が離れて行ってしまったために、その可能性も無くなってしまったのかな。ちふゆは唯一、彼を引き戻せる人だったのではないかと思うんです。高校の頃に付き合っていた彼女との傷が、ここで癒えたかもしれないのに、ダメそうでしたねぇ。

 

私、趣里さんのファンなんですけど、この映画のちふゆは、本当に美しくて素敵でした。こういう役、合いますねぇ。風と共に現れて、ふわっと去って行ったような、そんな風に見えました。

 

 

私は、この映画、お薦めしたいと思います。ちょっと内容が解り難いけど、雰囲気は伝わると思います。自信を持つことは大切だけど、高飛車になって、人を見下すような人間にはなりたくないなと思う映画でした。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「零落」