「aftersun アフターサン」
を観ました。Fan’s Voiceさんの、独占最速オンライン試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。
というお話です。
この映画、ネタバレとかそういうモノが無いような内容なので、とりあえず私が観たままのあらすじを書きますね。
11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、二人の記録を残して行く。リゾート地で、バカンスを楽しむ恋人たちや、ゆっくりと休む英国から来た年配の方々ななど、何人もの人と出会い、交流をする。
ソフィは、同年代の男子と出会い、ゲームを楽しみ、ちょっとした恋心も芽生え始める。その一方、カラムは精神的に不安定なようで、それをソフィから隠すようにしている。太極拳をしたり、自己啓発本を読んでいる姿も見られた。幼いソフィには理解が出来ないだろうが、カラムは随分と苦しんでいるように見受けられる。
二人はカラオケに行くが、ソフィと歌う事をカラムが嫌がり、二人は喧嘩状態に。ソフィは自分で部屋に帰るといってカラムとは別々になる。ソフィは、ゲームをした男子に出会い、静かなプールでキスを経験する。
一方、カラムは一人、夜の海へ向かい、海の中へ。ソフィが部屋に帰るとカラムが裸で寝ており、目を覚まさない。仕方なくホテルのフロントに頼んで、鍵を借りて部屋に帰る。次の朝、二人な仲直りをし、ツアーに参加して泥風呂に入る。
そして別れの時が。ソフィは母親の家へ。カラムはソフィに手を振り、ドアの向こうのストロボの世界に消えていきます。
20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。今、彼女は、同性の妻と子供との生活をしているようだ。ビデオを観ながら、カラムの苦しみを知り、今の自分の生き方を考えているのかもしれない。彼女の家には、父がトルコで購入した敷物が置かれていた。 後は、映画を観てくださいね。
この映画、どういう映画だと言って伝えたら良いんだろう。自分が大好きだった父親の映像を、その時の父親と同じ年齢になった娘が観て、あの時に解らなかった父親の苦悩とか悲しみが、今、同じ年齢になったからこそ、理解が出来て、感じるモノが出てくるという、何とも言えない映画なんです。
まず、観ていると、大好きな父親と再会して、本当に楽しい時間を過ごしているソフィが映っているんです。ずっと逢いたかったパパですから、ピッタリくっ付いて、バスでも寛いでいるんです。でも、窓の外を見るカラムの顔は、何か苦しみと不安が入り混じったような、そんな表情をしているんです。映像には映っていても、ソフィには見えていないんですね。
トルコのリゾートでも、楽しそうに過ごす二人ですが、カラムはやっぱり問題を抱えていそうでした。きっと、子供のソフィ目線だと、あまり解らないだろうけど、映像を見ると、よく解るんです。仕事にも問題があるようで、友達と新しい事を始めようと思っていると言っていたけど、それも上手く行っていなかったんじゃないかな。それに、精神的な問題もありそうでした。ソフィの前で抑えてはいるけど、気分の浮き沈みが激しいように見えました。
この映画を観ると、自分が子供の頃って、親が何を考えているのかなんて解らずに自分の要求ばかりを言っていたなという事を思い出しました。きっと、親にだって都合があっただろうに、そんな事はつゆ知らず、あれが欲しい、これがやりたいと、要求ばかり。若かっただろうから、お金だって大変だっただろうに、子供は無邪気というより残酷ですよね。
ソフィは、きっと、このビデオをずっと観ていなかったんだと思うんです。トルコの後、父親がどうなったかは、全く映画では語られていませんが、私の想像を書かせていただくと、ソフィの部屋に、トルコで買った敷物があったので、それを形見に貰って来たんじゃないかな。だから、私は既にカラムは亡くなっているんじゃないかなと思いました。
但し、いつ、亡くなったかは解りません。トルコで逢った直ぐ後なのか、最近なのか、それは解りません。ただ、ソフィとは、トルコの後、全く逢えなくなり、ソフィは怒って、ビデオを封印していたのだと思うんです。そして、カラムと同じ年齢になった今、観てみようと出してみたんじゃないかな。
そして、観ていたら、子供の頃は気が付かなかった事が沢山あって、自分が今抱いている苦しみや不安と、同じことを苦しんでいたのではないかと理解し、きっと、懐かしく、悲しくなったんじゃないかな。私も観ていて悲しくなりましたもん。
親の立場からすると、子供には抱えている問題を感づかせたくないと思います。何処までも誤魔化して、子供には負担をかけないようにしたいですもん。子供には、いつでも笑っていて欲しいし、自分を好きでいて貰いたいんです。そんな父親の姿が、映画の中にも描かれていました。
31歳の父親で、11歳の娘ですよね。20歳の時の子供でしょ。それから10年、20代の生き方って、色々な事がありますよね。仕事を始めて、上手く行ったり行かなかったり、悩んで仕事を変える人もいるでしょう。未来の自分を考えながら、どうしたら良いのか、一番悩む時期だと思うんです。その10年を終えた31歳。本人にしてみれば、もう後が無いと思って、追い詰められているんじゃないかな。人生は長く、まだまだチャンスはいくらでもあるんだけど、この年齢だと、先が見えずに焦ってしまうのだと思います。
同じように、31歳になったソフィは、妻も子供もいて、不安が一杯なんじゃないかな。そして、同じ年齢の父親を改めて観て、同じように悩んでいたんだという事を知り、父親を理解して、自分がこれからどうしようと思ったのかは、観る人の考え方だと思います。みんな、同じように悩むんだと解って、安心するのか、又は、もっと不安になるのか。でも、私は、きっと、父親も同じように悩んでいたんだと知って、父親を懐かしみながら、前を向いて行こうと思ってくれたと思います。あの明るいソフィですから。
そんな事を感じさせる映画でした。私、観た後にジーンとしてしまって、アフタートークを聞きながらも、まだ余韻に浸って、気持ち良い感じが続いていました。父親の情報をあえて減らして、ソフィの目の前に父親が現れて消えるという、だた、それだけの映画なんだけど、深くて、哀しくて、でも優しい映画でした。
私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。アカデミー賞にもノミネートされていますが、英国アカデミー賞やカンヌ国際映画祭などなど、色々な所で高い評価を受けている作品です。私は、何度でも観たくなる映画だなと思いました。その度に、違う感情が湧いてくるような、そんな気がします。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「aftersun アフターサン」