「コンペティション」真面目にやってるんだけど笑ってしまう風刺の効いた映画でした。面白いです。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

 

「コンペティション」

 

を観てきました。Fan's Voice独占最速試写会に参加させていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

大富豪の起業家は自身のイメージアップを図るため、一流の映画監督と俳優を起用した傑作映画を制作しようと思いつく。そこで天才監督ローラと世界的スターのフェリックス、老練な舞台俳優イバンという3人が集められ、ベストセラー小説の映画化に挑むことに。しかし監督と俳優たちは激しくぶつかり合い、リハーサルは思わぬ方向へ展開していく。

というお話です。

 

 

80歳の誕生日を迎えた大富豪であるウンベルト・スアレスは、周りからの自分の見た目が気になり始め、自分の名が良い人物として後世に残るようにすることを考える。1つ目は街に橋を作って寄付し、自分の名前を付ける事。2つ目は、素晴らしい映画を作り、映画界に名を残すこと。

大金を使い、ノーベル賞を受賞した小説「ライバル」の映画権を獲得し、変わり者の天才監督ローラと、世界的スターのフェリックス、老練な舞台俳優イバンという3人を集め、映画化を依頼する。

「ライバル」という小説は、飲酒運転事故を起こし、両親を殺した兄を許すことが出来ない弟を描いたものです。イバンは本を読込み、色々と準備をしてきますが、フェリックスはセリフを言うだけのハリウッド俳優です。こんな全く違う俳優2人と変わり者の監督は、リハーサルに入ります。



 

読み合わせから入りますが、ローラは何度も同じ単語を繰り返すように強要したり、緊迫感を出す為にと巨大岩をクレーンで持ち上げ、その下でセリフを言い合うとか、とんでもないリハーサルを続けます。
 

ローラは2人の俳優に、今まで賞レースで貰った記念品をいくつか持ってくるようにと言い、彼らが意気揚々と持ってきたトロフィーなどを、いきなり粉砕機に投げ込みます。2人の俳優は、ラップを巻かれて身動きが出来ないようにされ、ローラを止めることが出来ません。今までの経歴を忘れ、心から演技をして欲しいというローラの意志表示ですが、あまりの酷い仕打ちに2人はあっけに取られてしまいます。そして…。

後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画は、映画好きにはたまらないんじゃないかな。映画のリアルな裏側を描いていまして、大笑いしながらも、ちょっとゾッとするという、何とも素敵な映画でした。映画を作っていく過程を描いているんだけど、日本のように、予算が無いので、読み合わせをしたくらいでほとんどリハーサルをせずに、クランクインしてから考えるというのとは違い、長い期間リハーサルをして、監督と出演者がコミュニケーションを取って、理解をした上でクランクインするというスケジュールなんです。

 

この映画では、クランクインする前の、リハーサル部分を描いていて、最初の読み合わせから、段々と、人物に近づけていくという部分を、監督が指導をしながらやっていくのですが、これが、結構、喧々諤々という感じで、戦うんです。それぞれの思いがあり、解釈も違ったりするので、それをすり合わせて、監督の理想に近い形を作りあげていくんです。

 

 

この劇中劇の脚本は、ノーベル賞を貰った小説を映画化するという設定で、兄弟の葛藤を描いています。フェリックスとイバンは、兄弟の役を演じるのですが、この二人、演技のタイプも性格も、全く違います。なので、監督のローラはとても苦労するのかと思ったら、このローラが、一番曲者で、二人の上を行く変人なので、何を言っても、自分の思い通りに変えさせようとするんです。どう見てもパワハラなんだけど、彼女が作るものは素晴らしい作品で評価されるから、役者は文句を言うんだけど、空回りしてる感じなんです。

 

映画の中でも、フェリックスがローラのやった酷い事を許さず、訴えるという事があって、弁護士からの書状も届いているのに、ローラが笑いながら破り捨てるという場面があったけど、まぁ、このローラのキャラクターは、凄い曲者でした。でも、このローラ、曲者というだけではなく、素晴らしく頭のキレる人らしく、最後の方で、真実を彼女だけ気が付いているようでした。目が素晴らしかったです。

 

 

それにしても、よく笑ったなぁ。笑わせてくれる映画でした。映画は、もちろん、真面目に映画制作を進めていくのですが、どこか、少しづつ違っているんだよなぁ。ズレているのよ。だから、真面目に観ているんだけど、つい、ブフッ!って吹いちゃうんです。だって、本人の真実の姿を映しているから、そういうのって、滑稽でしょ。笑ってしまうんです。

 

そんなおかしな3人を、沢山のスタッフが支えているのですが、このスタッフたち、一切表情を見せず、何が起こっても、淡々と受け答えをして、そこも笑えたかしら。普通なら、感情が噴き出しそうな部分でも、一切、表情に表さないんえす。アンドロイドかって思うくらい、感情が無くて、そちらも笑えました。

 

 

映画のリハーサルは続き、色々な事が起こり、最後にドーンという大きな出来事が起きますが、この劇中劇の「ライバル」という本に、現実がリンクしていきます。段々と、フェリックスとイバンの二人が、この兄弟にリンクしていくんです。喧嘩をしながらも近くにいて、この兄弟のように、憎しみ合っているという、いやーな雰囲気なんです。まぁ、笑えるんですけどね。

 

映画の後のトークショーで、深田晃司監督がいらしてくれて、映画ライターの立田さんとお話をしてくださったのですが、日本では、こんなに長いリハーサルを出来る事が、まず無いそうで、予算が多ければ出来るかもしれないけど難しいそうです。この映画で描かれている、監督からのパワハラとかって、結構、実際にあるそうです。深田監督は、そういうタイプじゃないけど、立田さんがおっしゃるには、その昔、黒澤監督には、伝説のようにパワハラ事件が残っているらしく、笑ってしまいました。

 

 

最初に出てくる大富豪がイメージを上げる為に映画製作にポンッとお金を出すとかという話も、実際に映画祭などにいくとあるそうです。一時、中国のお金持ちがお金を使う所が無くて、そんな話もあったそうですよ。

 

深田監督が仰るには、ハリウッドなどでは、俳優さんたちが一定の学校で勉強してきているので、演技のメソッドのようなものにそれ程違いが無いので、キャスティングして集めてみても、そんなにチグハグにならないそうなのですが、日本だと、そういう演技のベースが無いので、集めてみたら、全く合わない俳優さんというのもあり、もし、そうなった場合は、セリフを話してもらうだけで、演技は二の次になってしまうそうです。そういう映画は、まとまりが無く、面白く出来ないそうです。

 

 

なんか、凄く解るなぁと思いました。やっぱり監督たちも、そういう事を解かっているんですね。最近、演劇から出てきている俳優さんが増えてきていますが、演劇から来ると、演出家から厳しくチェックをされて、毎日が闘いになるので、演技が出来てくるのですが、映像のみの方たちは、難しいですよね。基礎が出来ていないから、周りの方たちに合わせていくというのが、大変だと思います。少しでも劇団などで勉強をするとか、下積みで小さいドラマや映画に沢山出て合わせることを勉強するとか、何かしてこないと、使う方も大変ですよね。

 

ペネロペさんとバンデラスさんとマルティネスさんの3人が、上手い!このコメディセンスは最高でした。さすがというほか言いようが無いほど、楽しめて大笑いさせていただきました。最後に、ペネロペさんのアップで、「映画は終わらない」というセリフに、ゾクッとしました。うーん、面白かった。

 

 

私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。こんなに楽しくて、笑えるとは思っていませんでした。もっと真面目な映画かと思ってました。とても風刺の効いている、映像もおしゃれな作品です。きっと、誰が観ても、笑える作品なんじゃないかな。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「コンペティション」