「ザ・ホエール」
を観てきました。Fan's Voice独占最速試写会に参加させていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
40代のチャーリーは恋人のアランを亡くして以来、過食と引きこもり生活を続けたせいで健康を損なってしまう。アランの妹で看護師のリズに助けてもらいながら、オンライン授業の講師として生計を立てている。心不全の症状が悪化しても病院へ行くことを拒否し、自身の死期が近いことを悟った彼は、8年前に家庭を捨ててから疎遠になっていた娘エリーとの関係を修復しようとするが…。
というお話です。
恋人アランを亡くしたショックから、現実逃避するように過食を繰り返してきたチャーリーは、大学のオンライン講座で生計を立てている40代の教師。
身体は太り過ぎ、大きくなり、歩行器なしでは移動もままならなくなったチャーリーは、頑なに病院へ行かず、入院を拒み、アランの妹で唯一の親友でもある看護師リズに頼っている。
ある日、ニューライフ教会の宣教師であるトーマスが訪ねてくる。ちょうど、うっ血性心不全でチャーリーが苦しんでおり、それを助けたことから、交流が生まれる。
病状の悪化で自らの余命が幾ばくもないことを悟ったチャーリーは、離婚して以来長らく音信不通だった17歳の娘エリーとの関係を修復しようと決意する。
ところが家にやってきたエリーは、学校生活と家庭で多くのトラブルを抱え、心が荒みきっていた。母親も心配しており、娘は邪悪だというほどだった。しかしチャーリーは、エリーの心の奥に眠る芸術性を理解し、あの子は大丈夫だと話します。そして…。後は、映画を観てくださいね。
アカデミー賞を前に、観せていただきました。この映画、凄かったです。ブレンダン・フレイザーさんが、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされているのが理解出来ました。これは、賞を取るんじゃないかしら。こんなに凄い演技を見せられたら、そりゃ、賞をあげたくなるでしょ。
この作品、原作は戯曲で、舞台化されていたサミュエル・D・ハンターの作品を映画化したそうです。舞台でも観てみたい作品です。ほとんどが密室劇なので(チャーリーは身体が大きくて、外に出られません。)、舞台はやりやすいんじゃないかな。
まず、見た目が凄いんです。チャーリーは、200kg超えの体重を持つ男性という設定なので、あのブレンダンが、まるで風船を着ているようでした。肉布団って言った方が良いのかな。日本のお相撲さんは、スポーツマンだから、太っていても締まった身体をしているでしょ。でも、ただ、食べ過ぎの肥満だから、酷いのよ。よくここまで創り上げたっていうくらい、凄い肥満の身体です。こうなる前に病院へ行かなくちゃいけないんだけど、チャーリーは拒否しているので、太ってしまいました。
太ったのには理由があって、恋人のアランが自殺をし、そのショックから過食症になってしまったんです。海外では、肥満の人への差別だという声も出ているようですが、これはそうじゃないよね。何でも差別って言う人がいるけど、全く差別ではありません。肥満も酷くなると、これ位酷くなってしまい、それは病気なんだから、ちゃんと病院に行かないと、命に関わるという事を伝えてくれているんです。バカにしている訳ではありません。そこら辺の内容をしっかり観て欲しいと思いました。
悲しみなどで精神のバランスを崩してしまうと、過食症などに陥ってしまう方もいるでしょう。それを放置すると、こんなにブクブクの身体になってしまい、人間の身体機能が持たなくなってしまいます。特に、心臓などは、基本的な身体を動かすようにしか出来ていないので、何倍もある身体を動かしたら、破裂してしまいます。そうなる前に、病院で対処をして貰わないと、このチャーリーのように、明日はどうなるのか解らないという事になってしまいます。
そんな身体で命の危険が迫って、それまで蔑ろにしていた娘に連絡を取ります。本当は、もっと娘に逢いたかったんだけど、離婚時の取り決めもあり、今まで出来なかったんです。でも、先の事を考えて、会う事にしたんです。家に来た娘・エリーは、既に17歳ほどになっており、随分とひねくれていて、チャーリーが男性の恋人の為に、自分たちを捨てたという事に、今もとても怒っていました。チャーリーは、エリーと仲直りしたいと思っていて、話をすると、エッセイの手伝いをして欲しいと言い、書き直しを手伝う事にします。
切れていた絆が、少し戻ったかに見えますが、エリーの怒りは収まらず、何処までもチャーリーを追い詰めます。その上、家に来ていたトーマスという宣教師がアランの聖書を読んで、チャーリーが聞きたくなかっただろう言葉を言います。この宣教師、最低だなと思ったけど、聖職者って、少なからず、人の気持ちを理解しないで、神に祈れば治ると簡単に言うのよね。神に頼る事ばかりで、脳を使わない聖職者が多いんだと思います。
可哀想なチャーリーですが、私は、きっと、チャーリーは、アランの後を追いたかったから、過食症でこんな身体になっても、病院に行くのを拒んだんじゃないかなと思いました。もちろん、エリーにお金を残したいと言うのもあっただろうけど、それだけじゃなかったと思うんです。アランはキリスト教(ニューライフ)の教えを信じていて、自分が同性を愛したことで神に背いたと思って、自殺をしたんだと思います。チャーリーは、それを知っていて、自分を罰していたんじゃないかな。そして、最後になって、せめて娘にだけは、許しを貰いたいと思ったんじゃないかと思いました。
人を愛したことが罪になるなんて、神は言っている事がおかしいよね。同性だって、そこに愛があれば一緒でしょ。神は、絶対に人を愛することを罰するなんて事は無いと思うけどね。聖書の解釈が違うだけだと思うよ。変な宗教も多いから、そろそろ、ちゃんと間違っていると言ってあげないとね。
メルヴィルの「白鯨」の話が出てくるんだけど、その白鯨の大きい身体を、チャーリーとかけているんだと思います。「白鯨」という小説は、長ったらしくて、ダラダラとした説明もあり、大体みんな、途中で嫌になる作品です。無駄な人生も、この小説と同じなのかもしれません。でも、本当の内容だけを追っていたら、何の抑揚も無く、有名にならなかったでしょう。無駄だと思う人生でも、きっと、何かその人にとって、大切で有用な人生だったんだと思います。チャーリーは肥満体形で全然動けなかったけど、もしかしたら、それも運命で、狭い世界から、大きな世界を知る為の軌跡だったのかもしれません。
1本の映画で、沢山のことが考えられる素晴らしい映画でした。深い映画です。表だけ観ていると、ただ、太ったオッサンが、最後に娘に許しを請うという映画なんだけど、そこには、もっと深い内容があり、宗教、小説、人生、病気、などなど、沢山のことが盛り込まれて、人間とはという事が描かれていました。
私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。感動しました。きっと、また観たら、新しい発見があると思います。1度観ただけでは、その底知れぬ内容を知ることは出来ないのではないかと思うほどでした。私は、とても好きな映画です。でも、肥満体のブレンダン・フレイザーさんは、ちょっと観ていて辛かったな。やっぱり痩せていてカッコイイ時のブレンダンさんに会いたいな。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「ザ・ホエール」