「郊外の鳥たち」
を観ました。
Fan’s Voiceさんの、独占最速オンライン試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
地盤沈下が進んだため「鬼城」(ゴーストタウン)と化してしまった地方都市。地質調査にやって来た測量技師の青年ハオは、廃校になった小学校の机の中から、自分と同じ名前の男の子の日記を発見する。そこには、開発が進む都市で日常を謳歌する子どもたちの姿がつづられていた。やがてその子どもたちは、1人また1人と姿を消していく。
というお話です。
地盤沈下が進み「鬼城」と化した中国地方都市の地質調査に訪れた青年ハオ。傾いた建物の傾斜角度を測量し、その地域の沈下状態を調べている。目視でもわかる程、建物は傾いてきている。地下で何が起きているのか。
調査に周ると、廃校となった小学校があった。内部を捜索していると、机の中から、自分と同じ名前の男の子の日記が見つかる。そこに記録されていたのは、この地区が開発され始めた頃、新旧入り混じった都市の中で生き生きと日常を謳歌する子供たちの姿だった。
懐かしさを覚えたハオは、子供たちの遊んでいる姿を想像する。それが、自分の子供の頃とリンクし、現代の事なのか、過去の思い出なのか、よく解らなくなっていく。その街を走り回っているのは、自分だったのか、それとも関係の無い子供たちなのか。過去の物語なのか、未来への予言なのか。やがて子供たちは、ひとり、またひとりと姿を消していく。
目を覚ましたハオは、日記と現状から、地下に大きな水の流れがあることを訴えるのだが、周りの仲間には信じて貰えない。しかし、夢で見た映像と、現状の調査資料からは、それしか考えられないのだ。そして…。後は、映画を観てくださいね。
この映画、とても難しかったです。全てが現実で、現代に起きているように見えるんだけど、よく見ると、子供たちがいる時は、調査に来たハオや仲間たちは寝ているんです。なので、彼らの夢の中が見えているのかもしれない。それを、説明したりはしないので、観ているこちらが想像して、考えなければならないので、自分がこうだろうと思った事が正解なのかは解らないんです。なので、今回は、私の解釈で感想を書いて行きますね。監督の意図とは違っているかもしれませんが、あくまで、私が観た感想です。
このハオたちですが、どこの依頼で来たのかは解りませんが、地盤沈下の調査を任されているようでした。測量器を持って、傾斜角度を測っているのですが、結構、いい加減です。なので、建築会社とかではなく、行政か研究所関係から来ているのではないかと思われ、これから再開発をするためとかではないようでした。きっと、地盤沈下が酷すぎて、原因も解らないので、再開発などは出来る状態ではないのでしょう。
そんな酷い状態のこの地域にも昔は人々が沢山住んでいて、今のマンション群を建てる為に再開発をかけたのでしょう。古くから住む人々は、どんどん追い出され、新しい建物に引っ越して行ったのだと思います。しかし、地盤沈下の為に、誰も住まなくなったという事なのだと思います。原因は、再開発時に地盤調査をきちんとせず、杭を岩盤に打たずに建ててしまい、上部の水源が流動して、地盤沈下となったのではないかと思います。
このハオたちがそれを調査していて、ハオは、下の地層に水脈があり、地底湖のようになっているんじゃないかという考えを伝えます。それは、自分の記憶なのか、夢で見た子供たちの記憶なのか解りませんが、見ていた風景に、水のある場所が多かったんです。
子供たちは小学校に通い、放課後は解体中の地域で遊んでいました。男子が6人いたかな。女性が2人絡んできます。子供はそれぞれ、背が大きかったり、太っていたり、小さかったりと、同じ学年でも違いがあり、それなりのあだ名があったりして、楽しそうにしていました。
ある日、太った子が学校に来なくなり、心配した彼らは、太った子の家に行こうとしますが、家の場所がありません。その時、ある女子が、”私は家を知っている”と言うんです。どうも仲間に入りたくて嘘をついたようにみえました。太った子の家にみんなで行こうとしますが、あまりにも遠くて、ひとり、またひとりと消えていきます。子供同士の何とも言えない感情が、ひとりづつ、子供を消して行くんです。ちょっと怖いでしょ。
私は、この子供の頃の出来事は、ハオの昔の思い出の中にあるもので、想像が入っているのかなと思いました。少年はハオの分身で、本人はここに住んでいなかったけど、同じような事が彼の身にも起こっていて、友達が新しい家に引っ越していったことを思い出していたのかなと思いました。そして、仲の良かった友達とも、離ればなれになっていったということかなと思いました。
監督が、”海辺のカフカ”をモチーフにしているとお話されていましたが、村上春樹の”海辺のカフカ”、素敵な作品ですよね。あれは、カフカという少年(仮名)とカラスという想像上の存在が、父親の束縛から逃げようとし、不思議な世界に入り込むというものでした。ギリシャ神話のオイディプス王から来ている、父親を殺して母親と交わる話は、この映画では、土地殺し、あるいは母なる大地を犯して、自分も滅んでいくという所に繋がっているのかなと思いました。
地盤沈下なんてしていたら、いつまでも人は住めませんし、その土地は利用が出来ません。殺されたも同じなんです。無知であるがゆえに、自分たちの首を絞めている人々を描いていたのかなと思いました。私の解釈は違うかもしれませんが、私は、そんな風に思いました。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。考えれば考えるほど、色々な事を想像出来て、世界が広がります。もしかして、本当に過去の事ではなく、現代に、子供とハオたちがいるのかもしれないし、そうでないかもしれない。面白い映画でした。映像も美しく、何となく昭和の日本を思い出すような風景もありました。ファンタジーだと思って、観て欲しいかな。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「郊外の鳥たち」
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