「ボーンズアンドオール」
を観てきました。
ストーリーは、
人を食べてしまう衝動を抑えられない18歳の少女マレンは、同じ秘密を抱える青年リーと出会う。自らの存在を無条件で受け入れてくれる相手を初めて見つけた2人は次第にひかれ合うが、同族は絶対に食べないと語る謎の男サリーの出現をきっかけに、危険な逃避行へと身を投じていく。
というお話です。
1988年、バージニア州、高校生のマレンは、クラスメートとのお泊り会に誘われ、父親に止められているにも関わらず、コッソリ抜け出してお泊り会に行ってしまいます。友達と楽しい時間を過ごしていたのですが、ある香りで気持ち良くなったマレンは、友達の指を口に入れ、喰い千切ろうとしてしまいます。騒いだ友達に驚き、正気に戻ったマレンは、走って家に帰り、父親に助けを求めます。「また、やってしまった。」と。
直ぐにバージニア州から逃げて、メリーランド州へ。こんな事を何度続けてきたのか。そして、マレンの18歳誕生日の直後、父親が失踪。残されたカセットテープには、マレンが3歳の時にベビーシッターを食べた出来事が語られており、出生証明書も一緒に置いてあった。
マレンは一人で生きることを余儀なくされ、まず母親を探しに行くことに。出生証明書にあった母親の住所、ミネソタ州に向かう為にバスに乗る。乗り換えのコロンバスのバス停で、怪しげな男サリーに声をかけられる。彼も「人食い」であり、同族は臭いで解る事をマレンに教える。サリーはどこか怪しげで恐い所があり、マレンは少し一緒にいただけで逃げ出してしまう。
インディアナ州へ着き、今度はスーパーで同族の男と出会います。彼の名はリー。女性に嫌がらせをしていた男を罠にかけて食べた後、その男の車を盗み、リーはマレンの母親探しを手伝う事にします。途中、リーの故郷のケンタッキー州を訪れ、彼の妹に会います。そしてリーが家に居たくない訳をしります。
家族との辛い過去を持つリーと、母親の思い出も無いマレン。二人はマレンの母親の住所に向かう途中、お腹が空いて、ある男性を殺して食べますが、その男性に家族がいる事を知り、ショックを受けます。今までは家族のいない人間を襲っていたんです。マレンとリーの意見が割れ、二人は離れ離れに。後は、映画を観てくださいね。
この映画、衝撃的でした。人を食べないではいられない人間という、特殊な人々のお話です。マレンだけが遺伝子変異か何かで、そうなっているのかと思ったら、人類の中に一定数いるようで、旅をしていると、時々、出会っていました。そんなに沢山いたら、結構、捕まったりしていると思うんだけど、何故か、誰も捕まっていないようでした。
この”人喰い”ですが、必ずしも遺伝する訳ではないみたいですが、劣性遺伝でもないので、一定数は増えて行っているんじゃないかな。どれくらいの頻度で食べたくなるのかとか、通常の食事では満足出来ないのかとか、謎はとっても多いのですが、それに関しては、全く解明はされません。ですが、そういうことは、この映画では関係無いのいかな。
私の想像ですが、監督が描きたかったのは、”人喰い”という事ではなく、周りから忌み嫌われる人々が差別を受けるから、全てを隠して生きるしかない人々が一定数いるんですよって言う事を描きたかったのかなと思いました。色々な問題で、自分の住んでいる場所で落ち着いて暮らせない人々が一定数いるじゃないですか。そういう方々は、色々な所に移動して難民となるか、または素性を隠して住むかしかないんでしょ。姿かたちは、同じなんだから、自分から言わなければ判らないと思うけど、みんな、苦しんでいるんですよっていうことじゃないのかな。
ま、人喰いは、やっぱり困るかな。殺人犯が隣に住んでいて、もしかして人を殺したくなっちゃうかもしれないって事でしょ。やっぱり怖いと思いました。食べられたくないもん。だって人の歯は、硬い肉を噛み切って食べるようには出来ていないでしょ。どちらかというと、奥歯なんて、草食的なすり潰す歯が多いような気がします。だから、こういう歯に食い千切られると、痛そうですもん。嫌だなぁ。
映画の中では、マレンもリーも、自分が人の肉を食べたくなるという事を、良い事だとは思っていないんです。自分の身体を呪っていると思います。それでも、身体は正直で、どうしてもお腹が空いてしまう。我慢が出来なくなるんです。いつも、好きこのんで人間を食べているのではなく、必要に駆られて、仕方なく、食べてしまうんです。なので、食べた後に自己嫌悪に陥るし、家族がいる人を食べちゃったりしたら、悲しませる人を作ってしまうからと後悔し、その上、追われる事も視野に入れなければいけなくなるでしょ。慌てていました。
まぁ、でも、マレンとリーだけだったら、何とか隠して生きていけるのかなと思ったけど、サリーという人物が関わってきて、大変な事になります。このサリー、最初の方で、マレンに近づくのですが、その時から、どーも、彼女に執着したようで、まるでストーカーのように、彼女の周りをうろつきます。お爺ちゃんなんだけど、凄く不気味なの。マレンもリーも、とっても美しいのに、何故か、不気味な魔術師のようなサリーが追ってくるという、気味が悪い展開になっていきます。
内容は、ちょっと飛んでいる感じなのですが、アメリカの乾いた大地を車で旅しながら、喉の渇きを潤すように人間を殺して食べていくという、何とも言えないロードムービーでした。ティモシー・シャラメさんは、やっぱり美しいですね。もう、文句のつけようがありません。テイラー・ラッセルさんは、”ウェイブス”でとても良い演技をしていて可愛かった女優さんで、やっぱり出てきましたね。今、注目株だそうです。サリー役は、ベテランのマーク・ライランスさんで、トップ俳優ですよね。穏やかな表情なのに、とても怖かったです。この3人が絡み合い、不気味さと恐ろしさを醸し出します。
「ボーンズアンドオール」は、骨も身体も、全て食べて欲しいということから来ているのかなと思うんです。骨まで食べると、何かが変わると言っていたけど、この全部食べて欲しいって、自分の存在を消して欲しいという悲しい願いだったんじゃないかな。人を食べて生きるなんて、本当は嫌だったけど、生きていく為には仕方が無くて、それでも罪悪感で一杯だったんだと思うんです。だからこそ、全部消し去って欲しかったのかな。可哀想なお話でした。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。ちょっと、内容は微妙です。私は、自分の解釈で観たので楽しめましたが、人喰いにこだわってしまうと、よく何が言いたいのか、判らなくなるかもしれません。でも、キャストは素晴らしいので、そこは満足出来ると思いました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。![]()
「ボーンズアンドオール」








