「崖上のスパイ」スパイ映画だけどそこに愛が潜んでいて、哀しさと夜明けが見える作品でした。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

 

「崖上のスパイ」

 

を観ました。

Fan’s Voiceさんの、独占最速オンライン試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

1934年、冬。ソ連で特殊訓練を受けた男女4人のスパイチームが、極秘作戦「ウートラ計画」を実行するため満州国のハルビンに潜入する。彼らの目的は、日本軍の秘密施設から脱走した証人を国外脱出させ、同軍の蛮行を世界に知らせること。しかし仲間の裏切りによって天敵・特務警察に計画内容が察知され、リーダーのチャン・シエンチェンが捕まってしまう。残された3人と彼らの協力者となったジョウ・イーは、どうにかピンチを切り抜けるべく奔走するが。

というお話です。

 

 

1934年冬、満州国のハルビン。ソ連で特殊訓練を受けた共産党スパイチームの男女4人が、極秘作戦“ウートラ計画”を実行するため現地に潜入する。ウートラ計画とは、秘密施設から逃れた同胞を国外に脱出させ、日本軍の蛮行を世界に知らしめること。

一方、特務警察は共産党員を逮捕し拷問。上部の諜報員が、死を恐れて寝返ってしまう。彼の情報により、スパイチームが4人降りて来るという事が特務警察に知られてしまう。裏切り者の暗号解読などにより、着地地点を特定し、彼らが降りて来るのを既に待ち受けていた。



 

4人は二手に別れ、それぞれにハルピンへ向かう。1チームは森の中で待合せした協力者が特務だと見破り、敵を倒して列車に乗り込むが、2チームは気がつかず、特務に騙されたまま一緒に列車に乗り込むことに。1チームのチャンは、暗号で協力者は特務だと伝えようとするが、敵に察知されてしまい伝わらない。

ハルピンに到着するが、特務の執拗な追跡と、次々と放たれる罠により、ついにはリーダーの張憲臣(チャン・シエンチェン)が特務の手に落ちてしまう。チャンとペアだった小蘭(シャオラン)は、何とか逃げおおせ、ハルピンの闇へ潜み、機会を待っていた。



 

王郁(ワン・ユー)、楚良(チュー・リャン)は、協力者が特務と気づくが、時すでに遅く、逃げ出すことが出来ない。そんな時、彼らの本当の協力者である周乙(ジョウ・イー)が現れ、八方塞がりの危機を突破させようとするが、命がけのミッションを完遂できるのか。(公式HPより) 後は、映画を観てくださいね。

 

ジョン・ウー監督のスパイ映画です。ジョン・ウー監督は、スパイ映画を作るのは初めてのようで、どうなるのかなと思っていたのですが、最初の方は、ジョン・ル・カレのように、冷たくて乾いたような雰囲気で進んで行くのですが、その中に、少しだけ人間の情が含ませてあり、それが、段々と膨らんでいきます。ただ、冷たいスパイではなく、危険な事をするのは、理由があり、その理由には人間の情が絡んでいるという事が解って行きます。

 

 

なんたって、敵が特務警察という、日本軍の直下にある警察で、共産党員を抹殺するという特殊任務を請け負っています。日本の軍人は出てきませんが、それでも日本軍がどれだけ非道な事をして、満州国を作り、支配してきたかという事が何となく伝わるように作ってありました。日本人としては、ちょっと複雑な思いがあるけど、こればっかりは、本当に日本が行った事だから、文句は言えません。

 

そんな満州国で、秘密施設から逃げ出した共産党員を国外脱出させるというのが、今回の任務です。生き証人を何とか海外に脱出させ、どれほど酷い蛮行が行われているのかを暴きたいのだと思います。しかし、日本軍も暴かれては困るので、必死で出て行くのを止めようとします。4人のスパイに対して、何十人の警察官がいたのかしら。凄い数の人々が、捜査に参加していました。そのトップにいるのが、ガオ科長という人物で、一見、”喪黒福造”っぽいんだけど、頭の切れるボスです。

 

 

このガオ科長の下にいるのが、ジョウ・イーという特務科のエースなんだけど、実は、この人が共産党員の協力者なんです。危ない橋を渡りながら彼らを助けていくんだけど、ガオ科長に疑われて、どうしようもないところまで追い詰められます。この辺の攻防が凄かったです。誰が騙しているのか、誰が騙されているのか、入り乱れて凄かった。このガオ科長、思っていたよりも頭が良くて、感も鋭くて、何をやっても見抜かれるような感じなんです。そんなガオ科長に対して、ジョウ・イーも負けずに頭脳戦を仕掛けるので、お互いに譲らず、騙し騙されで、ここは面白いです。

 

スパイとしてハルピンへ向かう4人は、訳アリです。チャンとワンは夫婦で、子供をハルピンに残して出国したという過去があります。シャオランとチューは、実は恋人同士。こういうペアをワザと2チームに分けて、潜入させたのだと思いました。これは、裏切らせない為ですよね。ここら辺がスパイの怖いところで、仲間であっても、心底信用していないというのが、丸解りで、ちょっとイヤな部分です。重要な任務だから、予防線を張るのは解るけど、どうせなら夫婦と恋人同士でやらせてあげて欲しかったな。でも、そうすると、もしもの時に相手を庇ってしまうからダメなんだろうけどね。

 

 

ル・カレのスパイ小説だと、こういう情的な部分がほとんど削られているのですが、チャン・イーモウなので、やっぱり人の愛情が絡んできていました。これについては、映画後にトークショーで、森さんと立田さんも仰っていて、お二人の会話を聞いて、”やっぱりそうよねぇ。”と再確認出来て良かったです。

 

そして、シャオランを演じているリウ・ハオツンさんが、新しいチャン・イーモンガールだと森さんが仰っていて、そんな風に言われているんだと知りました。チャン・イーモウというと、チャン・ツィィーが、彼の映画に出たおかげで有名になったというのがあり、その後は、このリウ・ハオツンさんだそうです。確かに、凄く可愛いんですよ。”ワン・セカンド”の時も、どこから出てきたんだろうというほど可愛くて、また、この映画で監督は起用したようでした。

 

 

そうそう、”ワン・セカンド”と言えば、あの映画で父親役だったチャン・イーさんが、今回はペア役としてリウさんと共演しています。あの疲れたオッサンを演じていたチャンさんが、今回は、スパイとして大活躍なので、同じ人とは思えないけど、同じなんです。ビックりでした。

 

1934年の満州のハルピンが舞台なので、古い雰囲気の街が描かれるのですが、これが綺麗でした。ちょっとセピアがかったような街並みだけど、そこに、煌びやかな映画館が浮かび上がり、そこではチャップリンが上映されているという、何とも美しい映像に惹かれました。暗い世界なのに、こんなにも鮮やかに描かれていて、さすがチャン・イーモウの世界だわと思いました。この美しさは、彼の独特なものだと思います。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。美しくて哀しい世界を描いていますが、”ウートラ計画”に表されているように、”夜明け”を感じさせる作りになっていて、日本が悪者になっているんだけど、良い世界が来て欲しいなと思わずにいられないような映画でした。映像も素晴らしいです。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「崖上のスパイ」