「対峙」被害者家族と加害者家族の対話など上手く行く訳がないと思っていたのだけれど。凄かったです。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

 

「対峙」

 

を観てきました。Fan's Voice独占最速試写会に参加させていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

アメリカの高校で、生徒による銃乱射事件が発生。多くの同級生が殺害され、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。事件から6年。息子の死を受け入れられずにいるペリー夫妻は、セラピストの勧めで、加害者の両親と会って話をすることに。教会の奥の小さな個室で立会人もなく顔を合わせた4人はぎこちなく挨拶を交わし、対話を始めるが…。

というお話です。

 

 

アメリカの高校で、生徒による銃乱射事件が勃発。多くの同級生が殺され、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。

それから6年、いまだ息子の死を受け入れられないジェイとゲイルの夫妻は、事件の背景にどういう真実があったのか、何か予兆があったのではないかという思いを募らせていた。

夫妻は、セラピストの勧めで、加害者の両親と会って話をする機会を得る。場所は教会の奥の小さな個室、立会人は無し。

「お元気ですか?」と、古い知り合い同士のような挨拶をぎこちなく交わす 4 人。そして遂に、ゲイルの「息子さんについて何もかも話してください」という言葉を合図に、誰も結末が予測できない対話が幕を開ける。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、スゴかったです。。密室劇で、2時間弱なんですけど、まぁ、緊迫感がハンパなくて、息詰まる場面が何度もあり、次に何が始まるのかが全く予測が出来なくて、何とも言えない悲しさと苦しさが襲ってくる内容に、涙が出ました。

 

最初、教会の場面からで、誰かが教会の会議室を借りたいと言ってきているようで、一体、何が始まるんだろうという感じなんだけど、幾つか室内の環境に注文を付けていて、何だか偉そうだなと思っていたら、その人がセラピストかコーディネーターのようで、二組の夫婦を合わせる準備をしていたんです。

 

時間になり、2組の夫婦が対峙します。加害者の両親と被害者の両親です。いやぁ、日本では考えられないと思いました。だって、自分の子供を殺した相手の親と、自分の子供が殺した相手の親が、一つの部屋の、一つのテーブルに着いて、話し合うんですよ。

 

 

この加害者側と被害者側が同じテーブルに着くというのは、「修復的司法」と呼ばれているそうで、被害者側の回復の為に、想像だけで憎むのではなく、加害者がどういう人間だったのか、どうして犯罪になってしまったのかという事を、聞くことにより、回復するらしいんです。

 

場所は教会の1室で、安心出来る場所という事の様でした。キリスト教が基本のアメリカでは、教会は神聖な場所なので、神が守って、見てくれている場所(神の家)として、安心出来ると言われているのでしょう。これは、キリスト教でないと、あまり理解が出来ないかもしれません。

 

トークをして下さった、坂上香監督が教えてくださいましたが、日本でも、一時期、警察主導で試されていたらしいのですが、直ぐに何かに阻止されて、終わってしまったそうです。何となく、日本では難しそうな感じがありますもんね。

 

 

日本って、長い歴史の中に、”仇討ち”という考え方があって、一時期は、”仇討ち”なら犯罪にならなかった時代もあるんでしょ。年末になれば、毎年のように「忠臣蔵」を放送しているし、そういう精神構造が昔から構築されている日本人にとって、対話をして相手を許すということが、根付くのは難しいんじゃないかな。今でも、復讐という言葉が、映画でもドラマでも、よく使われているでしょ。

 

日本だけじゃなくて、中国や韓国もそうなんじゃないかしら。今でも、徴用工問題とかを持ち出してくるくらいですからね。それにユダヤ人だって、どんなに時間が経っても、ナチスドイツのことは許さないでしょ。そう簡単に、憎しみが消えることは無いと思っています。この映画のように、対峙が出来るのは、本当に稀なケースなのではないかしら。

 

 

私は、”仇討ち”を悪いとは思っていません。もちろん、会って許せたら良いかもしれないし、それくらい心に余裕が出来たなら、会えるかもしれない。でも、家族を殺されたりしたら、無理でしょうね。この映画の事件の場合、犯人も自殺してしまっていますが、もし、犯人が生きているなら、自分の命をかけてでも、殺そうとすると思います。この映画のジェイとゲイルだって、もし、生きていたなら、対峙などせずに、復讐したんじゃないかしら。

 

でも、既に、犯人も、自分の息子も亡くなってしまっている状態で、毎日、その事が忘れられずに眠れないという事が続いていたら、新しい人生を見つける為に、何か道を模索していて、セラピストとかに、会ってみますかという提案を受けたのかなと思いました。そこで、相手の事をしり、言いたいことを言わせて貰って、一区切りつけて、新しい道へ進もうと思ったのかなと思いました。

 

 

日本では、銃乱射事件は無いけど、オウム真理教の無差別テロや、秋葉原の無差別殺人、京都アニメの放火事件など、他にも理不尽な殺人は起きているので、そういう場合に、何年か経ってから、こういう試みをやってみるのも、良いのかもしれないと思いました。その場合、相手は死刑囚になるのかな。本人以外の家族は居なさそうですよね。犯人との対峙は、さすがに、ちょっと難しいかな。精神が壊れてしまいそうです。

 

映画は、密室劇で、まるで舞台を観ているようでした。以前、「おとなのけんか」という映画があったと思いますが、それは、演劇の為に書かれた戯曲を映画化したもので、とても良く出来ていたのですが、この”対峙”は、映画から舞台化したら面白いのではないかと思いました。役者の技量がとても良く出ると思うし、感情の起伏が激しいので、観ている方も、目が離せなくなっていくんです。2時間くらい集中して観ると、本当に脳が疲れるけど、爽快感があると思いました。観た~!って感じがするので、とても気持ち良くなるんです。

 

 

内容はとても重いので、爽快感があるような内容ではなくて、考えさせられます。もし、自分が加害者家族になったら、自分が被害者家族になったら。もし、自分が加害者で家族に迷惑をかけてしまったら、もし、自分が被害者で家族を悲しませたら。色々なケースがあると思います。出来れば、犯罪などに関わりたくないけど、何かの拍子に、自分もそこに入ってしまうかもしれない。どんなに真面目に生きていても、巻き込まれることはありますから。

 

そんな事を、何度も考えてしまう映画でした。キャストは、私が知っていたのは、被害者の父に、ハリーポッターのルシウス・マルフォイ役のジェイソン・アイザックスさん、加害者の母親が、ヘレディタリーの占いおばさんのアン・ダウドさん、他の方は、あまり知りませんでした。

 

 

この映画、私は、超!超!超!お薦めしたいと思います。これは、舞台化して欲しいなぁ。ぜひ、生舞台で観てみたいような内容でした。でも、もちろん、映画でも、ずーっと緊張感が続き、脳がとても疲れます。凄く感動するし、涙が溢れてきました。良い映画でした。こういう映画を名作というんじゃないかな。構成も脚本も良かったです。文句のつけようがありません。素晴らしい作品でした。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

P.S:あまりに凄い映画だったので、感想を書くのに、いつもの倍以上、時間がかかってしまいました。また観に行きたいです。

 

「対峙」