「すべてうまくいきますように」
を観ました。
Fan’s Voice独占最速オンライン試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
ユーモアと好奇心にあふれ、生きることを愛してきた85歳の男性アンドレ。脳卒中で倒れ身体の自由がきかなくなった彼は、その現実を受け入れられず安楽死を望むように。人生を終わらせるのを手伝ってほしいと頼まれた娘エマニュエルは、父の気が変わることを願いながらも、合法的な安楽死を支援するスイスの協会に連絡する。父はリハビリによって徐々に回復し、生きる喜びを取り戻したように見えたが。
というお話です。
小説家のエマニュエルは、85歳の父アンドレが脳卒中で倒れたという報せを受け病院へと駆けつける。意識を取り戻した父は、脳卒中と診断され、身体の右半分の自由がきかなくなる。医者がいうには、障がいは残るが、リハビリにより生活は一人でも出来るようになるだろうという。
母のクロードは、以前からアルツハイマーを発症しており、その上、鬱を併発していて、アンドレの症状を見ても、興味があるのかもわからない。あまり夫婦仲は上手く行っておらず、お互いに避けている。アンドレはバイであり、男性との浮気によって、クロードは苦しんできたのだろう。
アンドレは現実が受け入れられず、現在の自分を許せない。人生を終わらせるのを手伝ってほしいとエマニュエルに頼む。驚いたエマニュエルは動揺し、医者に相談をすると、鬱状態だろうと言って、抗うつ剤を処方される。しかし、アンドレの意志は変わらず、終わらせたいと頼む。
そんなアンドレの気持ちとは裏腹に、リハビリが功を奏し日に日に回復する父は、孫の発表会やお気に入りのレストランへ出かけ、生きる喜びを取り戻したかのように見えた。それでも、父はまるで楽しい旅行の日を決めるかのように、娘たちに”その日”を告げる。そして…。後は、映画を観てくださいね。
あらすじを読んで解るように、安楽死問題の映画です。でも、今までの映画と違うところは、死を望むアンドレという老人は、死が差し迫っているとか、もう身体が一切動かなくなるとか、そういう事ではないんです。リハビリをすれば、身体は回復するし、老人ではあるけど、結構、元気なんです。
それでも、今の自分の状態で生きていくのは嫌だから、死にたいと言い始めるんです。家族は、回復するのだからと説得するのですが、アンドレの意志は変わらず、仕方なく、長女エマニュエルは、スイスの安楽死協会を調べることになります。スイスの安楽死を補助してくれる協会は、本人の意志の確認が大切だと言い、エマニュエルは何度も確認すると、アンドレは、早く手続きをしてくれと言うばかり。
うーん、家族に迷惑をかけたくないという人が安楽死を望むのは、今までも聞いたことがあるけど、アンドレは、目一杯、家族に迷惑をかけて安楽死をしようとしているんですよ。エマニュエルは忙しいのに、父親の為に色々と調べて、弁護士にも相談をして、手続きもしてと、大変そうでした。だって、ちょっと間違えたら、自殺ほう助とか、殺人となってしまうので、大変ですよね。本当に自由な父親でした。
でも、映画を観ていくと、途中で家から拳銃が出てくる場面があり、実は、もっと前から、アンドレは自殺を考えていたのかもしれないと思える場面があるんです。アンドレは、昔からバイだったらしく、クロードと結婚はしたものの、男性の恋人がいたようで、今も、元恋人の男を病室に入れる入れないで揉めたりがありました。色々と、思うところが、アンドレにはあったのかもしれません。
そんな今までの生活があって、今回の脳卒中で半身不随という状態になったことで、気持ちが途切れたのかもしれないと思いました。結構、アンドレは自尊心が強いように見えましたし、リハビリで治ると言われても、完璧に戻れないなら嫌だと思ったのかもしれません。とても頑固な人で、エマニュエルが、”父に言われたら拒める人はいません”と言っていたので、昔からそういう性格だったのだと思います。
父親に死にたいと言われたエマニュエルは、とても悩みます。当たり前ですよね。父親の安楽死を頼まれるなんて、娘にとっては、一番嫌な事だと思います。それに、今回は、余命少ないとか、不治の病とか、回復が見込めないとか、そういう問題は無く、これからリハビリで回復出来ますよって言われているのに、死にたいというのですから、納得は出来ないですよね。それでも、父親の頼みならと思い、エマニュエルは安楽死協会に連絡を取ります。
観ていたら、安楽死と言っても、場所と死ぬための薬を用意するだけなんですね。それで自殺をするという事なんです。スイスでは安楽死が認められているので、自分で死んだのだったら、場所と薬を提供するだけでは罪にならないのかなと思いました。色々と手続きをして行くのですが、今までにも、死の直前で安楽死を辞めた人もいるという話しを聞いて、それを最後の望みとして、父親をスイスへ送り出します。
それまでにも、色々な事が起こって、エマニュエルと妹は振り回されますが、それも、アンドレのかわいい所だと思っていたのかもしれません。チャーミングな父親でしたが、迷惑な人でした。この映画を観て思ったのですが、安楽死をしたいという人って、きっと、自分勝手で、人の事よりも自分の事を考える人がするのかなと思いました。だって、安楽死をしたいと言えば、必ず誰かに頼まなければならず、人に迷惑をかけるんだから、迷惑をかけたくなければ、一人で自殺しますよね。
この映画、「スイミングプール」の脚本家・エマニュエル・ベルンエイムさんの自伝的な小説だそうです。映画では、綺麗に描かれているけど、実際は、もっと苦しんだんだろうと思います。父親を死に送り出すなんて、簡単に出来ることじゃありませんから。考えさせられました。
誰もが、死に向かって生きているんだけど、どこで死を受け入れる事になるかは、自分では決められません。若くして事故で死ぬこともあるだろうし、100歳くらいまで生きることもあるだろうと思います。どこで死ぬかなんて、誰にも解りません。だからこそ、今の時間を楽しく生きることが大切なのかなと思いました。と言っても、やっぱり、一応、未来の事も考えて、貯蓄しなきゃいけないし、健康も保たなければならない。人間って、面倒臭いですよねぇ。(笑)
死というものを考えさせられる映画でした。暗い映画ではありません。アンドレは、あっけらかんとして、死にたいと言うので、ちょっと本気なのかどうか迷いますが、観ていくと、彼が本気なのが解って行くんです。そんな彼の決意を、観て欲しいなと思いました。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。但し、好き嫌いが分かれるかもしれません。父親のワガママと取るか、彼の深い気持ちを考えるかで、観方が変わるような気がしました。でも、誰にでも訪れる死をテーマにしているので、ぜひ、観てみて欲しいです。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「すべてうまくいきますように」