「あのこと」
を観ました。この作品、今年ノーベル文学賞を受賞した作家アニー・エルノーの原作を映画化した作品です。ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞も受賞しています。
Fan’s Voice独占最速オンライン試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
労働者階級に生まれたアンヌは、貧しいながらも持ち前の知性と努力で大学に進学。未来を掴むための学位にも手が届こうとしていたが、大切な試験を前に自分が妊娠していることに気づく。中絶が違法とされる中、解決策を見いだすべく奔走するアンヌだったが。
というお話です。
1960年代、中絶が違法だったフランス。アンヌは、青春を謳歌していた。貧しい労働者階級に生まれたが、飛び抜けた知性と努力で大学に進学し、未来を約束する学位にも手が届こうとしていた。大学の寮に入り、昼は真面目に授業に出て勉強し、夜はバーで飲んで騒いでという生活を送っており、寮の住人から目障りだから、これ以上、規則が守れないようなら出て行って貰うという警告まで受けてしまうほどだった。
ある日、生理が来ていないことに気が付く。既に3週目だ。もしかしてと思い当たることがあったアンヌは、病院に行き、診察を受けると、妊娠していると告げられてしまう。この時代、妊娠したら中絶は出来ず、必ず産まなければならない。という事は、大学も学位も諦めて、労働者階級の生活に戻らなければならない。
医者に、何とか中絶して欲しいと頼むが、違法な事をすれば、医者も患者も逮捕されてしまうと言い、何の処置もして貰えない。こんなところで、人生を捨てるのはどうしても出来ないと考えたアンヌは、他の医者にも当たり、中絶を頼むが、どの医者に頼んでも聞いては貰えない。
噂話で聞いていた、編み棒で子宮を突き刺すという事もやってみるが、一般人が簡単に出来ることではなく、表皮を傷つけただけで流産などしなかった。妊娠期間はどんどん過ぎていき、解決方法も見つからない。仕方なく、子供の父親でもある男に連絡を取り、会うのだが、妊娠に動揺し、解決方法も見つけられず、彼が何の役にも立たないことが判り、アンヌは再度、自分で解決する為に友人たちに協力を頼むのだが…。後は、映画を観てくださいね。
ついこの間、ノーベル文学賞をいただいたアニー・エルノーさんの原作を映画化した作品が、もうすぐ公開します。素晴らしい出来でした。内容としては、短編小説の映画化なのでとても解りやすく単純なのですが、奥がとても深く、きっと、観ると、誰もが考えさせられると思いました。妊娠するということ、子供を持つということ、女性であるということ、そして若い頃の過ちを本人の自覚が無いまま法律で強要するべきなのかという事です。
好奇心旺盛な若い頃には、どうしても性交渉という問題が関わってきますよね。知識も無いままに性交渉をすれば、妊娠するんです。そんな時に、中絶は違法だと決めて、若い子供たちに責任を押し付けるのはどうなんだろうかと考えました。法律は大人が作るものなので、子供の立場を考えてやることが大切じゃないですか。まだ、これから勉強をしてという若者に、家庭を持たせて子育てをさせると言うのは、どうなんでしょう。やはり中絶する自由は与えるべきじゃないのかなと思いました。もちろん、レイプなどの問題もあるんですから。
大人なら、避妊すべきだと言えば良いのだけど、まだ子供です。もちろん、本人が子供を産みたいというのなら産む自由もありますし、まだ勉強がしたいと言うのであれば、安全に中絶してあげることが大切なのではないですか?自分で子宮をかき出したり、冷水に浸ったりなど、どれも命の危険があります。安全に中絶して、次回にはちゃんと産めるようにしてあげないとね。
この映画の時代、1960年代は、中絶禁止と法律で決められていたそうです。日本はどうだったのかしら。フランスでは、どの病院でも中絶は違法だからと言っていました。大学生の間では、子供が出来たら人生は終わりと言われていて、遊ぶのも命がけだったんですね。でも、男性の方だって、責任を取らされる訳だから、気を付けなくちゃねぇ。その時代、コンドームはあったのかな?ピルは、まだ無かっただろうけど。でも、若い頃だから、欲望が先になっちゃって、考えられないんだろうなぁ。困ったもんです。
そんな時代に妊娠したアンヌ。中絶をしてくれそうな裏ルートを知っていそうな友人に、何とか中絶してくれる人を探して欲しいと頼むのですが、誰もが、そう簡単には教えてくれません。というか、犯罪ですから、簡単な事ではないんです。アンヌは、妊娠期間が延びていくにつれて、どんどん精神的に追い詰められて行きます。中絶できる期間って決まっているので、それ以上になってしまうと、もう、産むしかないんです。この時代でも、12週くらいまでに中絶しないとダメなようでした。
現代の日本の法律では、21週までは中絶が出来るようです。11週までは、胎児を吸引するなどの方法で母体にそれほど負担が無いようですが、それ以上になると中絶と言いながらも出産と同じ方法を取るようで、入院してそれなりに母体に負担があると思うので、やはり中絶は出来るだけ早い方が良いようでした。
なので、アンヌがどんどん焦って、顔色が悪くなり、お腹も気になり始めてくるという様子が、何とも言えませんでした。可哀想だけど、でも、SEXをしてしまったのは自分の責任なんですよ。それでも、こんな若い女性に全ての責任を取らせるのも、ちょっと酷い話だなと思いました。これから学位を取ってという年齢なのに、それまでの努力を全部捨てろなんて言えません。やっぱり可哀想です。
こういう事って、相談が出来ないんですよね。アンヌも親に大学まで行かせて貰って、それを台無しにするような行為をしてしまったという事が申し訳なくて、親には何も相談が出来ないんです。仲の良い友達にも言えず、一人で悩むことしか出来ないんです。
あらすじで書くと、大学生が妊娠してしまい中絶禁止でどうしようか悩む映画というだけの内容なんだけど、こうやって書いていくと、凄く内容が深いんです。そして、また、このアンヌを演じているアナマリア・ヴァルトロメイさんが上手いんです。それに、映像の見せ方も上手くて、悩んで悩んで、堂々巡りしてしまう姿が良く描かれているんです。なので、観ているこちらまで、どんどん追い詰められて行くんです。それが凄いと思いました。
私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。これは、出来れば若い人に観て欲しいかな。その昔は中絶が出来ず、女性が本当に苦しんでいたという事を知って欲しいです。そして、現代では女性主導で避妊も出来るし、日本は中絶出来る権利があるので、自分の生き方を考えて、それぞれの妊娠を考えて欲しいです。もし、妊娠して困ったら、周りに相談してください。恥ずかしい事ではありません。そんな事を思った映画でした。もちろん、男性も観て欲しいです。今、アメリカで中絶禁止なんていう法律が出来ている事を、もう一度考えて欲しいです。
ぜひ、この映画観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「あのこと」