「MEN 同じ顔の男たち」
を観てきました。
Fan's Voice独占最速試写会に参加させていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
夫の死を目撃してしまったハーパーは、心の傷を癒すためイギリスの田舎町へやって来る。彼女は滞在する屋敷の管理人ジェフリーと出会うが、街へ出かけると少年や牧師、警官に至るまで出会う男すべてがジェフリーと全く同じ顔だった。さらに廃トンネルから謎の影がついてきたり、木から大量の林檎が落下したり、夫の死がフラッシュバックするなど不穏な出来事が続発。ハーパーを襲う得体の知れない恐怖は、徐々にその正体を現し始める。
というお話です。
夫ジェームズと口論をし、その後直ぐに目の前で夫が窓から落ちて亡くなってしまったハーパーは、ショックを受けていた。友人に気分転換を勧められ、ロンドン郊外の田舎町を訪れたハーパー。豪華なコテージを借りてしばらくゆっくりしようと思っていた。管理人のジェフリーは、どこか奇妙な男性だったが、対応は丁寧で親切であり、コテージも手入れが行き届いていたので、ハーパーはこの場所を気に入る。
友人に電話をし、現地に着いて落ち着いた事を伝え、ミセスハーパーと呼ばれた事を伝える。自分が以前のくせでミセスのまま申し込みをしてしまったせいだが、ジェームズの事を思い出し、また憂鬱になってしまった。気分転換に近くの森を散歩しようと出かける。
森を散策していると大きなトンネルを見つける。既に使われていないようだが、気になって入っていくと、向こう側の入り口付近に誰かがいることに気がつく。その男は声を上げながら迫ってきて、怖くなり逃げ帰ってくる。助かったと思っていたのだが、ドアを叩く音がして覗くと、その男が立っていた。その男は、全裸で顔にいくつもの傷がある。驚いたハーパーは、直ぐに警察に電話をして捕まえて貰う。
少し安心し、町の教会に入って夫との出来事を思い返し、悩み、気を取り直して外に出る。するとおかしな少年に酷い事を言われ、ショックを受けていると、神父がやって来て助けてくれる。しかし、今度はその神父にジェームズとの事で酷いことを言われ、バーによって、コテージに帰る。そういえば、ここに来てから、会う人全て、同じ顔のような気がするが気のせいだろうか。この地域の特性なのだろうか。しかし、既にハーパーの周りには、奇妙なことが起こり始めていた。そして…。後は、映画を観てくださいね。
この映画の奇妙な世界は、観て貰わないと伝わらないと思うけど、それでも、出来る限り伝えてみますね。あの「エクス・マキナ」のアレックス・ガーランド監督の作品です。主人公のハーパーは、夫との事で罪悪感を持った女性です。この元夫のジェームズは、はっきり言って酷い男でした。離婚したい妻に罪悪感を与えて、そのまま亡くなってしまうなんて、酷いでしょ。ま、それは起点なんですけどね。
静かな所でゆっくりしようとコテージを借りると、彼女の前に現れる人は、皆、男で、同じ顔をしているんです。そして、庭にはリンゴの樹が沢山の実をつけて茂っています。アダムとイブで、イブは蛇に騙されて、リンゴを食べてしまい、恥ずかしさを知りますよね。それって、アダムを裏切って食べたという事でしょ。
そうなんです、この映画って、女性が男性に抱いている、気持ち悪さというか、相容れない部分を描いているんです。きっと、子孫繁栄のための恋愛をしている間は、この違和感は消えているんだけど、それが無くなると、途端に出てくるのよね。それでも結婚していられるのは、男と女ではなく生活のためなんじゃないかな。愛があっても、生物としての気持ち悪さは無くならないよね。
この映画で問題になってくるのが、ハーパーに対するジェームズの横暴な態度とか、支配欲なんです。彼女は、もう彼に耐えられなくなって、離婚を望むんだけど、ジェームズは絶対に許さないんです。夫婦は対等だと言いながら、夫の言うことを聞け!というように強要されるんです。そしてそれを聞かなければ暴力を振るうという行動に出る。あり得ないでしょ。
私なら絶対に許さないけど、ハーパーももちろん許しませんでした。そして強い態度に出ると、ある事をして、窓から落ちて亡くなってしまうんです。それって、全くハーパーは悪くないんだけど、彼女が罪悪感を抱くように、先にジェームズが酷い言葉を投げかけているんです。これは酷い男ですよ。
そして、心を癒すためにやってきた場所でも、男たちに支配されているというか、男から逃げられないという事を突きつけられて、ハーパーはどこまでも逃げようとするんです。でも、周りには同じ男が沢山いて、逃げることが出来ない。挙句、近づいてきた彼らは…、という事が起きて、私なら気が狂うかな。いや、笑ってしまうかもしれません。それくらいの衝撃が彼女を襲います。
でもね、マジでキモいのよ。何で女性たちの事を、自分の所有物のように思っているのか。確かに、アダムのアバラ骨からイブを作ったと言われているので、そうなるとアダムの一部という事になるんだろうけど、男も女も、女性から生まれるのよね。女性が持っている卵に精子が付いて、細胞分裂をして人間になるけど、一説によると、女性は女性だけでも子供が作れるという話があります。男性は要らないのよ。そうなると、何のための男なのって事になるので、そうなると困るから、いつまでも支配し続ける気持ちでいるのかもしれないですね。
映画の中でたんぽぽの映像があるのですが、男が要らないということと、西洋タンポポは受粉が必要無く種が出来るということを、対として描いているのかなと思いました。でも、西洋タンポポは受粉が必要無いから増えるけど、日本タンポポは受粉しなければ種が増えないので、数が減っています。日本タンポポを見つけたら、守ってあげてくださいね。(笑)
色々と書きましたが、この映画、ホラースプラッターと言って良いと思います。本当に怖いです。というか痛いです。私、何度も顔を背けたもん。でも、横目で観てたけどね。あのね、ナイフで腕を突き刺すと骨があるから、ズイズイって腕を引いても、ナイフは抜けません。この映画では腕からナイフが抜けてたから、腕だけはソフビなのかもしれません。そう思うと、ちょっと怖さが紛れるでしょ。
もっと、沢山書きたいことあるんだけど、ネタバレ出来ないから書けないのよ。この映画は、観た後に人と内容について語りたくなると思います。すごく不思議でファンタジーで、そしてホラースプラッターなので、その気持ち悪さを感じて欲しいです。女性は、いつも男性相手に感じている違和感とか気持ち悪さだから、理解出来ると思うのですが、男性には、この気持ち悪さが伝わるかなと思ったけど、解説をしてくださったグラフィックデザイナーの大島依堤亜さんがおっしゃっていましたが、男でも男が気持ち悪く感じたそうです。女性の感覚を味わって欲しいな。
映像は、素晴らしく美しいです。ここまで美しくて、残酷な映像は、そうないです。それに、映像の中に、沢山の言葉が詰まっています。それも感じて欲しいな。語らずとも伝わるという感じです。主演のジェシー・バックリーさんも、凄いです。彼女だから、この表現が出来たのではないかと思います。計算し尽くされた映像とストーリーを堪能して欲しい。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。この感覚は、ぜひ味わって欲しいな。他の映画では味わえない感覚だと思います。スプラッターがダメな方は、その部分だけは目をつむって貰うしかないかな。他の映像は美しいですから。その辺りは、ちょっとミッドサマーに近いかな。アレックス・ガーランド監督の傑作だと思います。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「MEN 同じ顔の男たち」