「ケイコ 目を澄ませて」
を観てきました。
キャスト登壇付き完成披露試写会に、Fan's Voiceさんで当選し参加させていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
生まれつきの聴覚障害で両耳とも聞こえないケイコは、下町の小さなボクシングジムで鍛錬を重ね、プロボクサーとしてリングに立つ。彼女には悩みが尽きず、言葉にできない思いが心の中に溜まっていく。ジムの会長宛てに休会を願う手紙を綴るも、出すことができない。そんなある日、ケイコはジムが閉鎖されることを知る。
というお話です。
嘘がつけず愛想笑いが苦手なケイコは、生まれつきの聴覚障害で、両耳とも聞こえない。再開発が進む下町の一角にある小さなボクシングジムに通い、日々鍛錬を重ねる彼女は、プロテストに合格。一人のプロボクサーとしてリングに立ち続ける。デビュー戦で勝利し、次の試合も期待されていた。
ホテルのルームメイクの仕事をしながら、ボクシングの練習を続け、休日には友人との話に花を咲かせるという、若者の楽しみも忘れない。でも、どこか冷めているケイコ。ボクシングの二回戦も勝利したが、ボクシングを好きな思いと裏腹に、恐さも感じて、逃げ出したいという気持ちが湧いてきてしまう。
母からは「いつまで続けるつもりなの?」と心配され、言葉に出来ない思いが心の中に溜まっていく。「一度、お休みしたいです」と、会長宛てに手紙を書いたのだが、どうしても渡せずにいる。そんなケイコの姿を見て、会長は優しく「休んでもいいんだぞ。」と言ってくれる。
そんなある日、会長から、ジムを閉鎖するという告知がされる。驚くケイコだが、ジムのコーチが新しいジムを探して紹介してくれる。しかし、このまま続けて行って良いのか、悩んでいたケイコは、直ぐに返答をせずに帰って来てしまう。今のジムでの最後の試合、第三戦を迎えるケイコは、会長に辞退も出来ると言われていたが、そのまま、試合を受けることに。そして…。後は、映画を観てくださいね。
聴覚障がい者の女子プロボクサーの実話をベースに、新しく構成されたお話です。岸井さんが、プロボクサー役に挑んでいます。舞台挨拶で目の前に立たれた岸井さんは、ほっそりしていて、まるでボクサー体形じゃなく可愛らしかったのですが、映画を観たら、肩に筋肉が付いていたりして、少し体重を増やされたのかしら。ボクサー体形になっていました。ホント、役者さんって凄いですよね。役に合わせて体形を変えるって、驚いてしまいます。
そんな岸井さんが演じるケイコは、聴覚障がいがあるので、セリフがほとんどありません。生まれつき聴覚障がいがあるので喋れないのですが、”はい”などの返事は出来るようでした。私は、音は聞こえるのが当たり前と思って生きてきてしまったので、彼らが音というものを、どう感じているのかは全く解りません。でも、この映画を観ていて、元々、音という感覚が無いので、私が音と思っているものを、目で見ているのかなと思いました。
そんなケイコは、プロテストに合格し、プロボクサーとして活躍しています。音が聞こえないのに、どうやって戦っているのだろうと思いますが、会長いわく、ケイコは目が良いので勝っているようでした。決して、天才的なボクサーではないようです。動体視力が良いので、相手の動きが見えるのでしょうね。それは、凄い武器だと思います。
なんたって、私、「あしたのジョー」や「リングにかけろ」でボクシングの勉強してたので、ボクシングよく知っているんです。(嘘です。(笑))でも、一時、ボクシングアニメが流行ったでしょ。「あしたのジョー」は伝説ですもんね。だから、脇を開かないとか、そんな事をケイコがノートに書いているのを観て、うんうんって頷いてしまいました。
だけど、ボクシングって過酷でしょ。20代の女性が節制して、このスポーツに打ち込むって辛いと思うんです。身体はごっつくなっていくし、試合をすれば、顔も身体もボロボロになってしまう。そりゃ、悩みますよ。それは、障がいがあろうと無かろうと、一緒です。そんな過酷なスポーツは長くは続けられないだろうし、難しいよなぁ。
ボクシングは若い頃でないと出来ないと思うけど、遊びたいし、他の事にもチャレンジしたいと思うよね。何を取るかだと思うけど、もし、私がケイコさんなら、20代はボクシングを頑張るかもしれません。きっと、戦った後の爽快感は、ボクシング以外に味わえないから。勝っても負けても、これは特別だと思います。これ程、自分を痛めつけて戦う事なんて、他ではあり得ないもんね。素敵だなと思いました。
ケイコは果報者だと思うけど、これほど親身になって考えてくれる会長やコーチはいないし、家族もケイコの事を、とっても大切に思っていました。その思いは、ちゃんと伝わってきましたもん。会長やコーチはもちろんのこと、家族と一緒の場面もあるのですが、弟の聖司が手話で”話しなよ。”っていうと、ケイコが”人は一人でしょ。”と返すんだけど、聖司の瞳が優しいんですよ。”そんなこと無いよ。”って言っているように見えるんです。それが、ケイコに伝わっているかは判らないけど、きっと、後から弟の事を思い出すと思うんです。頼れる人がいるんだなって。
この映画、言葉は少ないんだけど、表情で描いて行くというか、みんなの顔が温かいんですよね。向き合っている人は、きっと裏切らないだろうなって言う人ばかりなんです。それは、ケイコが戦った相手もです。もちろん、試合では、獰猛な野獣のようでお互いに恐いんだけど、きっと、それぞれに恐怖もあったし、弱さもあったんだろうなって思えるんです。弱い獣ほど良く吠えるっていうでしょ。だって、恐いよね。殴り合いだもん。
そうそう、16mmフィルムで撮影したと言っていて、確かに、画面が昔の映画っぽいんです。デジタルだと、輪郭線がしっかり出るでしょ。でも、フィルムだと、ちょっとぼんやりしていて、絵でいうと、木炭や鉛筆でスケッチしている感じなんです。デジタルだとしっかりペンで描いているという感じですよね。それが、何となく、映画を観ている!という感じで良かったです。今どき、デジタルでもこういう雰囲気が出せる加工もあるのかな。私、そういう難しいことは知らないけど、やっぱりフィルムの雰囲気は好きだなと思いました。
そういえばね、音楽がほとんど使われていません。聴覚障がいだと、音楽を知らないからなのかなと思ったけど、音楽としては、弟の聖司が、ギターで歌を作っているという場面があるんです。ケイコには音楽が聞こえないけど、生活の中に音楽はあるんだなと思い出させるためのように見えました。例え聞こえなくても、そこにテンポはあるし、音の振動が伝わるんじゃないかと思うんです。テンポと振動も音楽ですよね。その感じが、素敵だなと思いました。
感覚で伝えてくれる映画のように思えて、何ていうのかな、小説本を貰ったと思ったら、素敵な写真集だったような、そんな気がする映画でした。その場面場面に空気があって、全て色が違うんです。そして、そこにいる人物と風景から、物語が伝わってくるんです。それが、とても心地よい映画でした。雑音が、まるで音楽のように聞こえたの。心地良い、毎日聞いている音楽。それは、時には迷惑な雑音だけど、時には癒してくれる雑音なんです。生きている周りにある音が、ケイコには聞こえていないハズだけど、きっと、聞こえているんだろうなと思いました。
私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。私は、とっても心地良い気がしました。でも、好き嫌いが別れるかな。静かで、絵で見せていく映画なので、スパッとしたアクション映画とかが好きな方には、ちょっと苦手かもしれません。でも、岸井さんと三浦さんのコンビが良かったですよ。岸井さんも良いけど、三浦さんほど空気を彩色出来る人はいないでしょ。うーん、良かった。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
舞台挨拶の写真を撮らせて頂けました。
「ケイコ 目を澄ませて」