TIFF2022 コンペティション部門
「孔雀の嘆き」
を観ました。
ストーリーは、
スリランカの小さな村に生まれた19歳の青年アミラは、両親の死後、首都コロンボに移住し、中国資本の企業の建設現場で働きながら4人の弟妹たちを養っていた。彼の母親は、アミラが反対する声を聞かずに再婚し、再婚相手のDVに合い、亡くなってしまった。その後、義父も無くなったが、義父が借金の為に家の債権を渡してしまい、その家に住むことが出来なかったのだ。
コロンボに移住はしたが、幼い弟妹は保護者がいないという事で施設に入れられてしまう。すぐ下の妹は難病を患っていた。妹の心臓手術のために大金が必要になったアミラは、高額の給料と、先端医療が受けられるインド行きのビザを保証してくれる女性経営者のもとで働き始める。それは、望まぬ妊娠で生まれた子供を外国人夫婦に斡旋する組織だった。
アミラは、違法な組織での仕事だが、妹のためだと思えば、苦にならなかった。妊婦たちは、望まぬ妊娠をし、堕胎するための医者を探していて、この施設を紹介されるようだった。時間はかかるが、子供を産んでお金が貰えるならと、女性たちはここに来るのだった。望んだ子供ではないので、何の問題も無いはずだったのだが、ある日、一人の妊婦が、子供を産んだ後、やっぱり子供を連れて帰りたいと言い出す。望んでいなかったにも係わらず、産んだら自分の子供という自覚が目覚め、母性が出て来たらしい。経営者は許さないというが、アミラは可哀想に思い、彼女の話しをずっと聞いてしまう。ある朝、彼女はお金を置いて子供といなくなり、アミラは、その後も仕事を続ける。
ある日、妊婦を病院から輸送しているトラックが警察の検問にかかり、上手く偽装をしていたのだが、警察に気配を察知されてしまい、裏に隠れていた妊婦たちが見つかってしまう。警察関係の協力者も、大勢の警官がいる場所で見つかってしまったのでは、隠しようが無い。アミラと同僚は捕まり、女性経営者は直ぐに国外へ逃亡してしまう。しかし…。後は、映画を観てくださいね。
この映画、とても考えさせられました。望まない妊娠をして堕胎を希望する女性に、産んでお金を儲ける話を持ち掛けるって、悪い事なんだろうけど、悩んでしまいました。子供を持てない夫婦が、どうしても子供を欲しがっていて、生まれた子供を養子に迎えてしあわせになれるというのなら、なんか、それって、良い事のように思えてしまいました。
もちろん、人身売買と言われてしまえば、そうなので、犯罪なのだと思うけど、誰もが子どもを産めるわけでは無く、苦労しても産めない人もいるんです。そういう方は、養子を貰うしかないので、子供を買うと言う感覚ではなく、子供を迎えて、自分の子として育てるんだと思うけどな。この辺りが、もっと合法的にならないのかしら。
そもそも、望まない妊娠って何なんだろう。レイプとかなら解るけど、自分がSEXを楽しんで、たまたま妊娠したら望まない妊娠って、それ、避妊すれば良かった話ですよね。子供が欲しくないなら、避妊しなさいよ。
アメリカで堕胎するのは違法という法律が制定されてしまったらしいけど、レイプなどの場合は堕胎させてあげるべきですよね。でも、自分が避妊しないで、たまたま妊娠した場合は、責任を持つべきだと思うのは私だけなんだろうか。そういう、たまたま避妊しなくて出来た子供は、望まれない子供だから、斡旋とは言わなくても、養子縁組を合法的にすべきだと思うのですが、どうなのかしら。
産んでみたら子供に愛情が湧いてしまい、離れたくないと思う女性もいて、それはそれで良いんじゃないかなと思いました。それで育てていけるなら、本当の母親が育てるのが一番ですよ。でも、もし、貧困だったり、虐待をするようになるなら、その前に、養子に出して欲しい。それはやはり政府が見るべき問題ですよね。
そんな世界を見ながら仕事をしているアミラは、どう思っていたのかしら。自分は、何としてでも弟妹を養おうと思っていたのに、未成年で保護者がいないからと、弟妹は施設に入れられてしまい、すぐ下の妹は難病にかかってしまうという、まるで不幸を一身に背負ったようでした。その前には、両親が亡くなったと思ったら、土地の権利を抑えられているという問題があったりして、何処まで行っても、問題が山積しているんです。19歳でこんなに問題を抱えていたら、大変だったろうな。
でも、この施設で働くようになり、給料は上がって、生活は起動に乗り始めていたと思いますよ。犯罪だと判っていたけど、この仕事をするしか、妹を助ける方法が無かったんですから。高額な手術費用を用意しなければならず、病院には一刻も早くと言われて、切羽詰まっていたんです。女性経営者も、アミラのことを気にかけてくれていて、妹を助けるお金を早く稼げるように動いていたんです。
この女性経営者も、その上にボスがいて、そう簡単にはお金を用意出来ないようでした。悪い人ではなく、彼女にも、色々な事情があり、この仕事に就いたようでした。なので、この映画を観ていると、犯罪とは言いながらも、心から悪い人はいないように思いました。誰もが、それぞれに事情を持っていて、金を稼ぐためには極悪になるというような人々では無かったように思います。それなりに、良い人達だったんじゃないかな。
どんな終わり方になるのかはお楽しみですが、犯罪なので、ハッピーにはならないけど、でも、考え方なので、これをハッピーと思える人もいるかなと思いました。私は、良い映画だなと思いました。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。スリランカの映画で、時々、分からない部分もありましたが、国が違うから仕方ないのかなと思いました。でも、概ね、理解出来るし、感動も出来る作品です。日本公開は決まっていませんが、もし、観る機会があったら、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「孔雀の嘆き」