TIFF2022 ワールド・フォーカス部門
「クロンダイク」
を観てきました。
ストーリーは、
2014年7月、ロシアとの国境に近い東部ウクライナのドネツク地方の村。戦争が勃発し、トリクとイルカの夫婦が暮らす家の居間の壁が破壊されてしまう。逃げようとするが、村は封鎖され、簡単には外に出られない。トリクは、車を貸すことを条件に、村を出れるよう友人に頼み、その時を待っていた。
その時、マレーシア航空機がミサイルで撃墜されるという事件が起きる。民間機を地上からの攻撃で撃ち落とした様だった。戦闘機と間違えて撃ち落とした様だが、どちら側が落としたかで、世界からの見方も違ってくる。沢山の民間人が亡くなり、トリクの家の周りにも、遺体などが散乱している。その処理を手伝うトリクは、遺体をイルカに見せないようにしていた。
出産を間近に控えた妻のイルカは、家を引き払うことを嫌がり、外から丸見えの部屋に住み続けようと夫に言い続ける。しかし、事態はどんどん悪くなっていく。夫のトリクは、ウクライナ側につくか、ロシア側につくかの選択を迫られ、苦慮をする。その答えによっては、命に関わるからだった。
そして、やっと友人が村から脱出出来るように手配をしてくれ、トリクとイルカは家を離れようとするのだが・・・。後は、映画を観てくださいね。
今、現実に起こっているかのような内容の映画でした。ウクライナの人々は、こんな苦しい状況の中にいるのでしょうね。昨日まで隣人で仲良くしていた人が敵になってしまったり、親族でありながら敵対したりと、考えられないような事が起こっているようでした。
映画の設定は2014年ですが、今、実際に起こっている戦争を、設定を変えて描いたのだと思います。映画の最後に、名前などが出せない方々の協力があったというような記述がありましたので、大変な中、撮影を進めたのかなと思いました。
突然に戦争が起こって、家の壁が無くなったという状況から、映画は始まります。まるでコメディのような舞台なのですが、内容は真剣です。戦争で吹き飛ばされたんですから。そりゃ、ビックリしますよね。でも、昔からそこに住んでいるし、今更、行ける場所も無い。妻も妊娠していて、もう臨月だという状態です。
そんな状態なので、今すぐにでも安全な所に避難した方が良いんじゃないかなと思うんだけど、妻のイルカは、自宅から動かないと頑張っちゃっているんです。まぁ、臨月だし、自宅で産みたいという気持ちも解らないではないけど、でも、状況が状況なので、逃げるべきですよね。だって、ウクライナ側の兵士や、ロシア側の兵士がうろうろしていて、出会ってしまったら戦闘という状態なんです。
夫のトリクも、友人たちにどちらにつくつもりなんだと言われ、分離主義者(ロシア側)に付くよなと強要されて、軍の制服を貰います。トリクはどちら側にも付くつもりはなく、制服を置いておくと、そこへイルカの弟が帰ってきて、ウクライナを裏切ったのかと激怒されます。でもね、トリクは、ウクライナ人なのでロシア側じゃないと言ってしまったら、その場で友人たちに殺されかねなかったんです。こんな状況で、家族なら解ってあげて欲しいよなぁと思いました。
で、もう、どうしようもない状況なので、イルカに逃げようというのですが、途中まで行って、イルカは戻って来てしまいます。うーん、この妻、酷いなぁと思いました。普段から、とても我が儘な感じの妻なのですが、強情なんです。妊娠しているからって、何を言っても許されると思っているのかしら。観ていて、イラッとしました。
だって、状況を見れば、そこら辺に沢山の兵士がいるんだから、今、殺されてもおかしくないんです。戦争なんだから、それくらい、解って欲しいんだけど、自分の考えを曲げないんです。自分が子どもの頃から育ってきた家なんだろうし、戦争と言われても、自分は関係無いと言うのかもしれないけど、そうは言っていられない状況だって、解るだろうになぁと思いました。うーん、酷い女性でした。
そんな戦争時の生々しい状況を、とても良く描いていたと思います。本当にこんな風になっちゃったら、どうなるんだろうと不安になりました。日本は、島国だから、こんな風にならないのかもしれないけど、でも、彼らみたいに、どちらに付くとかって選択は無く、無差別に殺されるんでしょうね。見た目も違いますしね。そんな事を思ったら、マジで恐かったです。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。この映画、とてもリアルで、戦争というものが、どうやって起きていくのかという事を、よく描いていたと思います。こんな日常に、突然起きてしまうんですね。ちょっと驚きました。この映画、撮影をウクライナで行ったようで、戦争中でも、こうやって頑張っているんだと思うと、応援したくなりました。日本公開は決まっていませんが、もし、機会があれば、ぜひ、観てみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「クロンダイク」