TIFF2022 コンペティション部門
「ザ・ビースト」
を観てきました。
ストーリーは、
スペイン、ガリシア地方の小さな山間の村。自然と共に暮らす生活を求めて移住してきたフランス人の中年夫婦アントワーヌとオルガは、村に人々を呼び戻すために荒廃した空家の修繕を始める。そして、エコにこだわり、オーガニック農業を進めていく。
そんな村にノルウェーの風力発電業者が現れ、風車を設置する契約を持ちかける。しかし風力発電は騒音・振動などが問題であり、環境に悪いことを知っていた夫婦は反対をする。村人にも呼び掛け、多数決で風力発電の件は契約に至らなかったが、村の有力者である兄弟シャンとローレンは、儲からない今の仕事を辞められると契約に乗る気だったがそれをぶち壊され、アントワーヌに腹を立てていた。
空家を修繕して人を呼ぼうという考えも鼻に付いていた二人は、それから、ことごとくアントワーヌに嫌がらせをするようになる。その嫌がらせはエスカレートしていき、危険を感じたアントワーヌは、ビデオを持って何かあると、すぐに撮影をするようになっていく。
そんなアントワーヌと兄弟との対立は大きくなり、農作物にも影響が出るような嫌がらせもされてしまう。それでも我慢を通していたアントワーヌとオルガだったが、兄弟は耐える二人に我慢が出来なくなり…。
というお話です。
この映画、面白かったです。スペインの田舎町にフランスから移住した夫婦が隣家の住民から追い詰められて行くという、サスペンススリラーという感じかしら。どうなるのか、次の展開が読めず、ずーっとストレスを感じさせられるような内容で、上手いなぁと思いました。
フランスからスペインの山奥の田舎町へ移住したアントワーヌとエイダ。空気も水も良くて、公害などが無い、有機農業をするには最適な地域です。でも、あまりにも辺鄙な所なので、過疎化が進んでいて、空家が沢山あるんです。
アントワーヌは、この地を終の棲家と決めて、少しでも人が戻ってくるようにと、空家の修繕を自主的に始めます。そんなアントワーヌの姿を、村の人々は、あまり好意的に見ていません。この地にずっと住み続けている人々は、既にこの地を見放しているんです。どんなに働いても、楽になることは無いし、都会に出たくても、出て行くだけの資金が溜まらない。溜まった人は、既に出て行ってしまったのですから、残っているのは、生きるのがやっとの人々だけなんです。
そんな村の人々ですから、アントワーヌの考え方とは合わないんです。アントワーヌが、「こうしたら儲かる。」というような事を話しても、教育もあまり受けていない人々なので、伝わりません。そんな事が続いた後、風力発電の業者がやってきて、風車を建てたら権利金を払いますと言うんです。
隣家の兄弟は、その金でここから出て行けると思うのですが、実は、大間違いなんです。アントワーヌは経営の勉強をしてきているので説明するのですが、最初に貰った金だけで、都会で生活なんて続かないんです。先の計算が出来ていないんですよ。
大体、あの風力発電、音と振動が凄い公害になるし、作物にも影響があるんです。太陽光発電とか風力発電とか、どれも公害になることが解っているのに、業者との癒着で進めてしまうんですよね。この田舎町も、いい様に踊らされて、付けてしまったが最後。誰も住めなくなると思いました。特に、酪農業の場合は、家畜がストレスで死んでしまいます。空気の良い場所で、ゆっくり暮らしているのに可哀想です。
そんな状況の中、アントワーヌの隣家の兄弟は、自分たちが幸せになれないのはアントワーヌのせいだと言わんばかりに、嫌がらせを続けて行きます。日本でも、ご近所問題ってあるけど、それと一緒です。何処までも嫌がらせをして、アントワーヌは警察に助けを求めるのですが、長く住んでいる兄弟に、あまり文句を言えず、嫌がらせは止まりません。本当に怖いと思いました。どんなに話しても聞いて貰えず、脅したり、襲ってきたり、命の危険さえ感じ始めるんです。
どうなっていくのかは、映画を観て欲しいのですが、どんな地域でも起こる近所との揉め事。誰かが間に入ってくれれば、何とかなるかもしれないけど、ほとんどの場合、何か事件が起こらなければ、警察も動かないし、問題ですよね。話が通じないと言うのは恐ろしいです。そんな問題を繊細に描き、心の動きも良く描かれていました。
最初に野性馬の捕獲の話しが出てくるのですが、話しの内容に関係無いなぁ~と思っていたら、最後の最後で、この話が関わってくるんです。おお~と思いました。冒頭の馬の話し、忘れないでいてくださいね。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。この映画は面白かったな。サスペンススリラーとして、十分に楽しめる作品だと思いました。日本公開は決まっていませんが、もし、観る機会があったら、ぜひ観てみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「ザ・ビースト」