「チルドレン・アクト」宗教が悪いのではなく、それを信じる人間の弱さが命を縮めることになるんです。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「チルドレン・アクト」

 

を観てきました。

 

ストーリーは、

裁判官のフィオナのもとに、病気の治療のための輸血を信仰上の理由で拒む青年の審判が持ち込まれる。成人には治療を拒否する権利があるが、彼は成年である18歳まで数カ月足りなかった。フィオナと青年の間には、面会を通じて不思議な絆が生まれていく。

というお話です。

 

 

裁判官のフィオナは、仕事中心の生活を送っている。大学教授の夫との生活はおろそかになり、夫は、とうとう不満を爆発させ、浮気をすると公言して、出張に出てしまう。夫のことが心配ではあるが、仕事をおろそかにする訳にはいかない。重要な案件が幾つも上がってきているのだ。

 

高等法院の裁判官を務めるフィオナ・メイは、自身のキャリアの中でも最も判断の難しい訴訟に臨んでいた。

白血病を患う17歳の青年、アダム・ヘンリーがエホバの証人を信仰していることを理由に骨髄移植を拒否する権利を求めていたのである。しかも、アダムの両親は共にアダムの決断を尊重する姿勢を見せていた。信教の自由はどこまで認められるべきかという難問を前に、フィオナは頭を抱えることとなった。

取り敢えず、フィオナはアダムに直接会ってみることにした。フィオナは両親がアダムに信仰を押しつけているのではないかと疑っていたが、確たる証拠を掴むことはできなかった。一緒に『サリーの庭』を歌うなどしているうちに、アダムはフィオナに惹かれたようであった。

その後の法廷で、フィオナは「アダム及びその両親の同意がなかったとしても、未成年者保護の観点から、骨髄移植を含むあらゆる治療を彼に施すことは合法である」という判断を下した。

 

その後、アダムは骨髄移植をし、無事に回復に向かって行く。そして回復したアダムは、何故かフィオナの後を付いて回り始める。ストーカー行為は辞めるようにと警告するフィオナに、あなたに話しを聞いて欲しいと言い始める。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、統一教会やら何やらで騒いでいる今、観て良かったと思いました。映画では、”エホバの証人”という宗教が取り上げられていますが、やっぱり宗教は問題だと思いました。主人公のフィオナは裁判官で、二世信者のアダムが輸血を受けるか受けないかの裁判を受け持つんです。

 

宗教側では、輸血をすると他人の血が混ざってしまうから神に背くことになるといって、輸血を許していないんです。でも、アダムは、白血病で危険な状態なので、直ぐにでも輸血(骨髄移植)をしなければならない。未成年なので、両親に聞くと、本人が了承するなら輸血しても良いと了承しているんです。でも、輸血をしてしまったら、”エホバの証人”から除名されてしまうので、輸血をしても良いと言いながら、あまり良い顔をしていません。

 

アダムは、子供の頃から経典を教えられているので、神に背くくらいなら、このまま死にますと言っているんです。でもね、これ、間違っているでしょ。聖書では、血が混じるというのは、輸血をするなと言っている訳じゃないんですよ。全く解釈が違っているのに、無理矢理に結び付けているだけなのに、宗教に入った人って本当に盲目で、外を見ようとしないんです。

フィオナも意志を変えるのは無理そうだと感じ、法に乗っ取った解釈を優先して、判決を言い渡します。未成年者保護の観点から、輸血をして助けるようにという判決です。目の前の青年が、輸血をすれば助かると判っているのにやらないというのは、やはり人道的に間違っていますよね。でも、ここからが、この映画の凄い所なんです。

 

 

骨髄移植をして助かったアダムは、自分に命を与えてくれた存在としてフィオナを親のように慕い始めます。でも、フィオナは、仕事上での関わりなので、付きまとう事も迷惑だと断り、話しも聞くことを拒否します。まぁ、そうでしょうね。私生活にまで、仕事で関わった人が入ってくるようになったら、生活出来ませんからね。それに、フィオナは、今、夫との関係がボロボロになっていますんで、アダムの話しなんて聞いている余裕は無かったんです。

 

で、まぁ、アダムは静かになるのですが、ここからは、ネタバレになるので、もし、観る予定の方がいらしたら、ここからは、鑑賞後に読んで欲しいです。本当は、ネタバレしたくないんだけど、ここからの展開が、この宗教が問題なんじゃないかという事なので、書かない訳に行かないんです。すみません、この後から、ネタバレします。

 

アダムは、骨髄移植を受けて、白血病は回復するのですが、実は、この白血病、再発率が多いんです。日本だと、渡辺謙さんが白血病で苦しまれたと思いますが、完治するのが大変な病気で、再発が多いんです。そして、アダムは再発します。フィオナに宛てた手紙にも、再発するような気がするという一文が入っていたんですが、本当に再発してしまうんです。

 

ここで問題が起きます。以前は、アダムは未成年でしたが、それから時間が経って、18歳を超えているんです。成人した人物が輸血を拒否した場合、輸血は出来ません。アダムは、再発して、今度は輸血を拒否するんです。フィオナが、判決後にケアを行っていたら、もしかしたら輸血を受けたかもしれないけど、フィオナは仕事としてアダムと関わりました。仕事なので、そこで終わりですよね。でも、アダムは誰かに救いを求めていて、それがフィオナだったんです。フィオナの責任じゃないけど、辛いだろうなと思いました。

 

 

通常なら、両親が心の支えになって、息子の気持ちを聞いてやるべきなのに、信仰の方を向いてしまっていて、両親は表向きは息子と付き合っていたけど、信仰に背いた(輸血した)息子に対して、向き合わなかったんだと思うんです。アダムは、頼る人も信仰も無くなり、結局、子供の頃から教え込まれた教育によって、神の所に行くために、輸血を断るんです。これ、おかしいでしょ。

 

アダムが輸血を受けないと聞いて、フィオナは心を痛めるんだけど、本当は裁判官が心を痛める事じゃないんです。だけど、ここで一人の人間として、アダムを助けることも出来たんじゃないかという気持ちも残りますよね。話を聞くだけでも良かったのにとは思うけど、でも、彼女にとっては、沢山ある仕事の1つで、仕事上は関わるべきではないんです。難しい問題だと思いました。とても心に残りました。

 

こんな凄い映画が、日本で大きく公開されないのが残念だけど、宗教の名前が出てしまっているからでしょうね。うーん、宗教って難しいです。一方で人間を助ける事もあるけど、一方で殺すことになり、今の統一教会の問題でも、安倍元首相が殺されたり、自殺者が多かったりと、色々と暗い部分がありますよね。ただ、信じて、祈るだけなら良いけど、人間の医療を妨げるとか、命に関わることに関係しちゃダメとかにならないのかしら。

 

二世信者の苦しみが良く描かれていたと思います。もし、子供に無理やり信仰をさせていなければ、こんな事にならなかったんだと思うけど、両親が信仰していたんじゃ、仕方ないですよね。でも、誰かが助けてあげなきゃ、世界を何も知らず、間違った生き方しか知らずに終わってしまいます。ホント、宗教って残酷だなと思いました。

 

この映画、原作は、イアン・マキューアンの「未成年」という小説です。原作も良さそうなので、ぜひ読んでみたいと思っています。

 

 

私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。描き方に問題が無いとは言いませんが、問題定義として、この映画は良く出来ていると思いました。全国で上映して貰えないのがとても残念です。どこかで配信してくれないかな。決して、宗教が悪いとは描いていないんです。それを何処まで信じるかという人間を描いているので、それが素晴らしいんです。ぜひ、観に行ってみてください。もし、お近くで上映していないようでしたら、原作をぜひ。

ぜひ、楽しんでくださいね。カメ

 

 

「チルドレン・アクト」