「この子は邪悪」
を観てきました。
ストーリーは、
心理療法室の院長・窪司朗の娘である花。かつて一家は交通事故に遭い、司朗は足に後遺症が残り、母は植物状態、妹は顔に重度の火傷を負い、花も心に深い傷を抱えることとなった。ある時、母親が心神喪失状態という高校生・四井純と出会い、次第に心を通わせていく。一方、花の母が5年ぶりに目を覚まし、司朗が家に連れて帰ってくる。司朗は久々の家族団らんを喜ぶが、花は母にどこか違和感を抱き・・・。
というお話です。
心理療法室を営む、医者の窪司朗は、親による子供虐待が多い状況を危惧しており、研究を重ね、意欲的に取り込んでいた。ある日、家族4人で遊園地へ遊びに行った帰り、暴走トラックに追突され、妻は植物状態、次女の月は顔の大火傷を負い、司朗は脚に障がいが残ってしまった。長女の花だけは、奇跡的に無傷で助かったが、自分が遊園地に行きたいと言ったせいだと思い込み、心に傷を負ってしまう。
あの事故から5年、花は学校へは行かず、顔の火傷のせいで外へ出なくなった月の面倒を見ながら暮らしていた。そんな花の前に、四井純という青年が現れる。彼は、母親が心神喪失で、以前に司朗の病院に通い、花と遊んだことがあるらしい。親しげに話す純は、花に友達になって欲しいと頼む。
実は純は、街で起きている謎の奇病の件を調べていた。奇病になった人は、純の母親のような症状によく似ていたのだ。調べていくと、その鍵を握るのが司朗だと分かり、花に近づいたのだった。
ある日、司朗が、”お母さんが目覚めたよ。”と言って、母親の繭子を連れ帰る。家族が揃ったと喜ぶ司朗と月だが、花はどこか繭子に違和感を感じていた。事故後の整形のせいだと言われるが、納得がいかない。疑念を抱いたまま一緒に暮らし始めると、次々とおかしなことが起こり始める。後は、映画を観てくださいね。
この映画、面白いとは思いますが、ちょっと中途半端な気がしました。ホラーならホラーに傾けて欲しいし、サスペンスとして科学的な根拠も設定した上で描くなら恐く描く必要は無いし、ダークファンタジーとするならファンタジー要素をもう少し増やさないとまとまらないし、うーん、ちょっと、スッキリしない感じでした。
心理療法室を営んでいるのですが、建物の雰囲気はちょっと古い医院っぽくて良いんだけど、司朗がやろうとしているのが、虐待児童を助ける事なんです。この辺りも、最初の方にサラッと描かれてしまうので、もう少し説明した方が良いのではないかと思ったのですが、現代病と言って良いほど、ここ最近は増えているという事なんです。子供は助けを求められないから、何とかしたいという事を言っているんですね。
そして、子供を助けるために、司朗が行っている治療が、問題になってくるんです。なので、この映画の根本は司朗の治療についてなのですが、そんな中で、家族が交通事故に遭い、その自分が行っている治療を、家族を助けるために使ってみたことが、家族の問題に発展していくというものでした。なので、もう少し上手く組み立てたら、もっと観やすくて、恐くて、楽しめたんじゃないかなぁって思うんだけど、イマイチ、しっくりこない感じが残ったまま、終わってしまったという感じに思えました。
あと、私は、最後の終わり方が、ホラーの王道”オーメン”そのものなので、これはダメでしょ~って思っちゃいました。これはやらない方が良かったんじゃないかな。はっきり言って、ここで私はとても残念になりました。恐さを出したかったんだろうけど、他のやり方をしないと、そのまま描いてしまったら、恐さも何も、はぁ?ってなっちゃいますよ。うーん、残念でした。
と、悪いことばかりを書いてしまいましたが、キャストは良かったですよ。このキャストで、もう少し描き方を変えていたら、もっと面白かっただろうなと思います。ウサギを使っているのですが、このウサギたちが、現代に好まれるミニウサギで、耳が小さいんです。これ、恐さを出したいなら、昔ながらの大きくて耳がピンッと立っているウサギを使った方が良かったと思います。あの赤い目が怖さを出したと思うけど、みんなミニウサギで、目が黒いので、可愛いだけなんですもん。
親からの虐待を無くすために司朗が施す治療は、私は良いと思いました。だって、虐待を辞めさせるには、親と離すしかないけど、子供はいつまでも親を求めてしまうでしょ。それなら、虐待が出来ないようにするしかないよね。でも、さすがにここまでやってしまったら人形の様だから、もう少し考えて欲しかったかな。こんな治療が出来るなら、いくらでもやり方があったと思うんです。だって、こんな治療を確立したのだから、司朗は天才ですよ。こんな小さな医院でやっているような事じゃないと思うんですけどね。
そんな司朗の治療を探っていくのが、純という青年です。自分の母親が、精神疾患状態になっていて、母親と同じ状態の人間が、ここ最近に増えている事を調べて、司朗の医院に辿り着くんです。純という青年なのですが、演技が下手なので、家族に混ざってくると、とても違和感がありました。そして、隠れて調査しているといいながら、バレバレなんです。いくら何でも、そんなにバレバレなら、正直に話して、教えてもらった方が良いんじゃないの?って思っちゃいました。
長女の花は何も知らないので、母親に違和感を感じて騒ぎますが、それなら、司朗が花にも、ちょっと治療をしておけば良かったんじゃないのかな?前もって、脳に教え込んでおけば、新しい母親でも、素直に受け入れたと思うんですよね。この映画、そういう部分が甘くて、そこら辺んも詰めて置けば、観る方がツッコミをしなくて済むと思いました。脚本がゆるいかなと思いました。
私は、もっと怖くて、ゾッとする映画かと思ったんだけど、恐い部分は、音と目の動きだけで表現していて、考えてみると怖いことではないんです。ただ、驚かせているだけでした。玉木さん演じる司朗が、もっと極悪医師とかなら、楽しかったんだけどなぁ。ただ、家族思いのお父さんなんです。その治療は問題になるんだろうけど、子供への虐待が増えていて、今、どうしようもない状態でしょ。児相も何もしないし、警察は手を出せない。それなら、こんなやり方も必要じゃないのって思ってしまいます。
よく、自分が虐待されていたから、自分の子供にもしてしまうというけど、しない人の方が圧倒的に多いからね。暴力を振るうのは、自分が壊れているからです。こんなにも精神的に問題がある人が多い社会で、子供を守るのは、本当に大変です。やっぱり、少し踏み込んだ対処をして行かないと、これからも、子供が殺されることが増えていくんじゃないかな。
映画に戻りますが、映画としては、ちょっと残念かなと思える内容でした。どうせなら、もっと、グログロしたゾッとするホラー映画にして欲しかったな。期待してしまったのがいけなかったのかしら。ま、でも、キャストは良かったです。玉木さんも、コメディタッチを消して、優しくて怖いお父さんを演じていたし、桜井さんも良かったし、南さんも頑張っていたと思います。
私は、この映画、一応、お薦めしたいと思います。ホラーでもなく、ダークファンタジーでもなく、サスペンスだけど不思議なお話で、ちょっとどっちつかずの内容でしたが、それなりにキャストが良いので楽しめるとは思います。あまり期待しないでください。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「この子は邪悪」