「鬼が笑う」一人の青年を軸に社会問題に鋭く切り込んでいく内容に殴られたような感覚を味わいました。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「鬼が笑う」

 

を観てきました。舞台挨拶付でした。

 

ストーリーは、

母と妹を父の暴力から守るため、父を殺してしまった石川一馬。更生保護施設で暮らしながら社会復帰を目指すが、社会からは「人殺し」と非難され、生きる希望を失っていく。ある日、一馬は職場のスクラップ工場で、外国人労働者へのイジメに巻き込まれてしまう。周囲が目を背ける中、中国人労働者の劉だけがイジメを止めに入る。そんな劉の姿に目を覚まされた一馬は、劉との交流を通し、自分の望む幸せを掴むべく立ち上がるが。

というお話です。

 

 

母と妹を暴力から守る為、父を殺めてしまった石川一馬。社会復帰を目指し、更生保護施設で生活を始めるが、社会は彼を「人殺し」と非難する。犯罪者と決めつけ、まともに取り合う事も無く、ただ、形ばかりの言葉をかけるだけである。社会に出たら、仕事を見つけ、大学で勉強もしたいと考えていた一馬だったが、彼は次第に生きる希望を失っていく。

一人で暮らしている自分の母親を助けたいと思っており、時間を作って訪ねて行くのだが、いつも拒絶され、帰れと言われてしまう。挙句の果てに、新興宗教に勧誘されて、一馬を追い出してくれと信者仲間に頼む始末。



 

ある日、一馬は職場のスクラップ工場に来た外国人の技能実習生と出会う。言葉は片言だが、仕事を覚えようと必死で働き始めるが上手く行かない。イラついた上司は、ベトナム人を虐め始める。

皆がいじめから目を背ける中、なりふり構わず止めに入った中国人労働者の劉。彼は正論を言い、社長もその話を聞いたように見えていたが、実は目障りな彼を追い出そうと考えていた。

一馬は、劉の姿に目を覚まされ、劉との交流を通じ、もう一度、自分の望む幸せを掴もうと考え、立ち上がるのだが・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、やっと横浜に来てくれて、やっと観れました。ほぁ~、期待通りの映画でした。結構、しんどい部分も多いんですが、凄く考えさせられる内容でした。始まりは、DVの酷い父親から母親と妹と守るために、主人公の一馬が、父親をバットで殴り殺してしまうというところから始まります。

 

その最初の場面で、既にフラグが立っているのですが、母親が父親から暴力を受けていても、それを受容れてしまっている態度なんです。良くみると、母親の顔などに痣は無いので、本人に酷い暴力を浴びせるというよりも、物に当たって暴れているという感じかしら。この夫婦は、これでバランスを取っているいびつな関係なので、子供たちはたまらないと思うけど、それが嫌なら警察に訴えるべきだったんです。

 

 

一馬は高校生のようだったので、もう自分の考えで行動出来るでしょ。そこら辺が足りなかったんじゃないかな。これだけ暴れていれば、ご近所でも噂になっていただろうから、警察に行っていれば、少しは対応してくれたんじゃないかな。

 

少し変だと思ったのが、父親が昼間からパチンコ屋に行っていて、母親の財布からお金を取っていく場面があったのだけど、家の中は小綺麗で貧困ではなさそうな内装だったんです。父親が、”誰が稼いでいるんだ”とも言っていたから、マトモに働いていて、お金を家に入れていたということでしょ。悪い父親じゃないじゃん。暴力は悪いけど、物に当たっていたなら理性が残っていたという事だから、一発バットで殴ったら、そこで話し合えば良かったのにね。

 

 

でも、まぁ、殺してしまったから仕方ない。DV被害者ということもあるだろうから、少年刑務所に入って、更生施設に移動してきたんだろうね。そこからスクラップ工場に働きに通っていました。施設でも、工場でも、酷い扱われ方をしていましたね。まぁ、現実もこんなもんだと思うけど、この一馬、人間に期待しすぎなんです。これだけ凄い経験を積んだにも拘わらず、人間に期待するって、少し足りないんじゃないのって思ってしまうほど、素直な男なんです。

 

通常、こんな経験をすれば、酷い扱われ方をするので、人間など信用しなくなるんだけど、何故か、期待しているんですよねぇ。誠実に生きていれば、きっと周りも認めてくれるなんて思っちゃっているんです。そんなこと、この社会で通用する訳が無いでしょ。そんなんじゃ、裏切られる事ばかりになってしまいます。

 

 

それに気付き、希望を失くした頃に、中国人労働者の劉に出会います。正義感が強く、自分が下に見られている事に気が付かず、上司や社長に対等に話しをしてしまいます。一馬にはカッコ良く映ったんだろうけど、どう考えても、間違ってますよね。雇う方は、使い捨ての労働者と思っているから、文句を言うなら出て行けと言うでしょ。

 

この外国人技能実習生の制度、国もキチンとするべきよね。外国人労働者の働くスペースには監視カメラを付けて行政も見れるようにするとか、給料は会社から行政が回収して実習生に渡すとか、そこまでしなくちゃ。小さな会社に行かせたら、奴隷のようになるに決まっているでしょ。大体、スクラップ会社は日本人がやりたがらなくて、在日など外国人がやっているのが多いんだから。ユダヤ人が金貸しを始めたと同じなんです。そんな会社でマトモな経営がされている訳が無い。

 

 

一馬は働きながら、時々、母親の様子を見に行くのですが、母親は、父親を殺したと言って、息子を恨んでいるんです。そりゃそうですよ。だって、母親は暴力を振るわれながら、父親に依存をしていたんですから。これこそ自分の事だけ考えているバカッ母です。宗教にものめり込んでいくので、安倍元首相を殺した山上のケースと一緒だと思いました。私なら、こんな母親、病院に入れるけどね。精神安定剤を飲ませて息子が神だと洗脳すれば、良くなるんじゃないのかな。本当に腹が立つ母親でした。そんなに自分が好きなら、子供なんて産むなよ。

 

いやぁ、観れば観るほど、キ〇ガイが多い世の中だよなと思える内容が描かれていて、考えさせられました。自分もその一人なんだと思うけど、そんな泥水の社会で泳いでいかなければならないんだから、泥水に慣れていかないと生きられません。生きたいなら、泥水に慣れろと言うしかないんです。いつまでも、真水が恋しいと思っていても、そんな場所はありません。

 

 

一馬は、良かれと思ってやることが、全て裏目に出て、悪い方向へ行ってしまう。正直で、正しい事をしているとは思うんですよ。でもね、社会では通用しないんです。一馬のすることを見ていたら、アライグマに角砂糖を与えているような気持ちになりました。社会では通用しないよ、砂糖は溶けちゃうよって言っているのに、角砂糖を水で洗ってしまう。頭悪いのかっ!って殴りたくなるよね。子供じゃないんだから、自分の頭で考えようよ。

 

人間って、必ず良い面と悪い面とあって、心底悪い人間はいないと思うんです。こんな社会で生きるために、少しでも優位に立って良い生活を送りたいと思うのは当たり前で、優位に立つために、汚い事もやらなければいけない。このスクラップ工場の社長だって、極悪社長だったけど、家族の前では良い父親だったと思います。両面を持つことは悪い事じゃなくて、必要な事なんです。それを責める権利は誰にも無いと思います。

 

 

だから、一馬が最後に選んだ行動は、息苦しくてここでは自分は生きていけないと思った行動だったのかなと思いました。それは、一種の開放だったのではと思います。でもね、こうするのなら、最初から誰にも期待せず、母親や妹には逢わずに、一人でひっそりと暮らせば良かったのに。新しい人間として、泥水での生き方に慣れて行けば良かったと思いました。まぁ、綺麗な水でしか生きられない魚もいるし、泥水でも平気で生きられる魚もいる。同じ魚だけど、違うのだから仕方ないですね。

 

でもね、泥水での生き方にもルールがあるのだから、ルールからはみ出るようなら、制裁は必要だと思います。悪い会社には指導が必要だし、行政の職員の教育も必要だし、宗教に関しては、もっと徹底してお金の管理をするべきだし、外国人労働者の扱いも変えていかなければいけません。こんなにもドロドロしてきて、その上、コロナなんて病気まで蔓延して、地球が人間を間引こうとしているとしか思えない災難が続きますが、それでも人間は負けないだろうな。というか、私は負けないぞと思っています。逃げるもよし、逃げないもよし、どちらも正解だと私は思うけど、私はドロドロの中でもがいて、泳ぎ切ってやると思う今日この頃です。

 

 

最後に、「鬼が笑う」というのは、先の事は解らないということわざですが、私は、どんな時でも先の事を想像して行動するべきだと思います。鬼に笑われようが、先の自分を想像することは自分の身を護る最大の武器だと私は思っています。それがどう変わろうが、準備をして変わったなら諦めが付くでしょ。何もしなかったら、後から後悔することになる。後ろを振り向かない人生にする為には、何が笑おうと、先を見て準備をするべきなんです。私はそう思っています。

 

 

この映画、凄く考えさせられる映画でした。本当は、もっと細かく書きたい位なんだけど、さすがに長くなっちゃっているので、この辺りで止めておきます。私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。はっきり言って、それほど有名は俳優さんも出演されていませんし、ツッコミどころは多いのですが、それ以上に、痛いところを突いていて、誰もが考えるべきことをストレートに伝えているので、良い作品だなと思いました。三野監督と脚本の三野さんとも、まだお若いですし、2作目なので、ここら辺でイイという誤魔化しをしていないんじゃないかな。現実ではあり得ないと思うような事でも、衝撃で、ガツンと効いてくるんです。うーん、唸ってしまうほどの映画でした。これは、ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

P.S : 映画の後に舞台挨拶をしてくださり、サイン会も開いてくださいました。嬉しくて、最初に並んじゃいました。主演の半田さん、本当にお優しそうで、素敵な方でした。監督もお若くて、これからが楽しみです。まだ上映が始まったところなので、観に行けたら、また観に行こうかなと思っています。キノシネマみなとみらい、歩いて行けるんですもん。

 

 

「鬼が笑う」