「川っぺりムコリッタ」人が生きていく為に必要なモノは何なのか。そして死はいつも隣に在るんです。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「川っぺりムコリッタ」

を観てきました。

 

Fan's Voice独占最速試写会に参加させていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

.北陸の小さな町にある小さな塩辛工場で働き口を見つけた山田は、社長から紹介された古い安アパート「ハイツムコリッタ」で暮らし始める。人と関わることなく、ひっそりと生きたいと思っていた山田の静かな日常が、隣の部屋に住む島田のせいで一変する。山田と島田の間に、少しずつ友情のようなものが芽生え始めるが、山田がこの町にやってきた秘密を島田に知られてしまい・・・。

というお話です。

 

 

山田は、北陸の名もなき町にある「イカの塩辛」工場で働き始め、社長から紹介された「ハイツムコリッタ」という安アパートで暮らし始めた。できるだけ人と関わらず生きていこうと決めていた山田のささやかな楽しみは、風呂上がりの冷えた牛乳と、炊き立ての白いごはん。

やっと給料日を迎え、山田は、念願の米を買い、ホカホカ炊き立てご飯を茶碗によそい、工場で社長から頂いた”イカの塩辛”をご飯に乗せた瞬間、部屋のドアがノックされる。ドアを開けると、そこには隣の部屋の住人・島田が風呂を貸してほしいと立っている。ぼさぼさ頭で汗だくの男は、庭で野菜を育てているという。生理的に受け付けられず断るのだが、後日、またやってきて、今度は図々しく上がり込み、勝手に風呂に入ってしまう。



 

以来、毎日のように山田の家にやってくるようになったことから、山田の静かな日々は一変する。ここのアパートの住人はみな、社会からは少しはみ出した感じの人たちばかりだった。無論、みな貧乏だ。旦那さんを無くした大家さんはなんだか訳アリの雰囲気だし、墓石売りの溝口さんは息子を連れて訪問販売しているし、ひっそりと生きたいと思っていた山田だったが、なぜだか住人たちと関わりを持ってしまっている。

ある日、子供のころに自分を捨てた父の孤独死の知らせが役所から入る。なぜ、とうに縁が切れた父親の死後の面倒をみなければならないのか?反発しながらも、島田に説得され、山田は遺骨を引き取りに行く。父が残した携帯電話には「いのちの電話」への着信履歴が残っていた。自分を捨てたと思っていた父の死因は自殺だったのだろうか?母に捨てられて以来、「自分なんか生まれてこなければよかった」という思いと戦ってきた山田は、腹立たしいような、「やっぱりそうだったのか」と落胆するような複雑な感情にかられる。

そんな山田を、島田は不器用に、かつ優しく励ます。少しずつ友情のような関係が芽生え始める山田と島田。溝口の墓石が破格の値段で売れたときは、ハイツムコリッタの皆で食卓を囲む。山田の心に光が灯り始めた頃、山田が北陸の町にやってきた「秘密」が、島田に知られてしまう。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

 

期待していた以上の素晴らしい作品でした。凄く笑える部分が沢山あるのですが、時々、ちょっと物悲しくなって、人間とは、人生とはって、少し考えてしまうような、そんな感じがありました。

 

主人公の山田は、小さい頃に両親が離婚し、母親と暮らしていたのですが、高校の時に4万円渡されて、これでアンタとは終わりだと言われて別れたっきり、母親と逢っていないというんです。色々な家族があると思うけど、ちょっと酷いですよね。そんな過去を引きずっていて、自分には生きる資格なんて無いんじゃないかと思っているんです。

 

そんな山田が、塩辛工場に就職して、ハイツムコリッタに住み始めて、色々と変わっていきます。良くなったとは言えないけど、人との関わりは増えて行ったんじゃないかな。だって、引っ越してくつろいでいたら、いきなり、隣の島田ですって挨拶に来て、風呂に入れろって言うの、凄いでしょ。ビックリしちゃいました。

 

 

私だったら、絶対にダメっていうけどなぁ。生理的に嫌なんです。家族なら良いけど、全くの他人が同じお風呂に入っているって、なんかダメです。ホテルに行けば、誰かが入ったお風呂に入る訳だし、新しい賃貸に入れば、前に使っていた人が入っていたお風呂なんだから一緒でしょと言われてしまうだろうけど、今、自分が入ったお風呂に、直ぐに人が入るって、考えただけでも怖いです。

 

で、山田も断るんだけど、何度もやってきて、とうとう勝手に入っちゃうんです。もー、嫌だ~!って感じですよね。その上、ご飯を炊いてお味噌汁を作って、食事をしようとすると、島田は、お茶碗とお椀を持ってきて、勝手に人の家のご飯を食べるんです。ビックリでしょ。でも、一応、庭で採れた野菜を持って来てくれるんだけどね。現代では考えられないくらい、人の物は自分のもの、自分のものは自分のものっていう、自分勝手な考え方が成り立っているところなんです。

 

 

島田役を、ムロツヨシさんが演じているので、強烈でピッタリなんですよ。もう、誰も止められないって感じで、山田も諦めて受け入れるんですけど、実は、このムロさんが演じる島田には、辛い過去があるようなんです。今はひとりで、”ミニマリスト”とかって言って、ケチケチ暮らしているけど、深い悲しみを宿している人物なんです。でも、詳しくは明かされません。観ている人が想像する部分かな。

 

ある日、山田の所に、子供の頃に別れた父親が亡くなったという知らせが入ります。孤独死だったようで、携帯には「いのちの電話」に何度も電話をした履歴がありました。なので、山田は、父親は自殺だったのかなと考え、母親もクズだったけど、父親もクズだったんだと思い、またも自身を失くしてしまいます。

 

でもね、塩辛工場の沢田社長が良い人で、凄い良い言葉をかけるんです。山田が”仕事を5年続けても何になるんでしょうね”って自暴放棄気味に言うと、社長が、「5年経たなきゃ解らないし、10年経たなきゃ解らない。それは、やった人にしか解らないことなんだ。」って言うんです。これは心に沁みたなぁ。人間には経験が大切で、予想して理解するなんて事は一切出来ないんです。人間の経験は人それぞれで、同じことをしていても、学ぶ人もいれば、何も考えない人もいる。でも、その経験した時間は、決して裏切らないんです。

 

 

映画を観ていて思うのですが、若い頃に観た映画と同じ映画を今観ると、全く違う感想が浮かぶんです。それは、自分が色々な経験を積んで、人間の機微を受け取れるようになったからだと思うんです。年を取ったなぁとも感じるのですが、その経験は自分の宝だと思っています。年を取ったからこそ、沢山のモノを受け取れて、世界が広がって行く。この沢田社長も、それが解っているからこそ、山田に経験を積むことを促したんじゃないかな。きっと、こんな良い人が周りにいれば、山田も仕事を続けられるだろうし、しあわせを感じられるようになると思いました。

 

ムコリッタには、墓石を売る溝口さん親子が住んでいます。この溝口さんも貧しいのですが、きっと良い暮らしをしていたこともあるんじゃないかなと思わせる言動があるんです。すき焼きやふぐ刺しを思い浮かべる時の表現が、この人はきっと、昔は良い食事を沢山していたんだろうなと思えるような感じなんです。そして、溝口さんがポロッと口にした、”金魚が空を飛ぶ”話は、「いのちの電話」の女性が話してくれた事なんです。きっと溝口さんも、辛いことがあって電話をしたことがあるのかなと思いました。

 

 

その溝口の話を聞いて、山田は、ちょっと驚いて、ちょっとホッとしたような気がしたと思います。父親は自殺をするために「いのちの電話」にかけていたのではなく、誰かに助けて貰いたくて電話をして、助けられたのかもしれないなと思ったんじゃないかな。一人で悶々と考えているより、誰かと話しをするって、大切ですよ。人はどこかで繋がって、助け合って生きるモノなんだと思いました。電話ひとつでも、誰かが助かる事もあるんです。

 

大家の南さんは、若くして夫をガンで亡くし、ハイツの経営をしています。まだ、夫を想っていて、いつも傍に感じていたいと思っているんじゃないかな。観ていると何となく、彼女の感覚が解るんです。それこそ幽霊でも良いから一緒にいて欲しいと思っているんじゃないかな。でも、死という境界を渡ってしまったら、もう戻ってくる事は出来ません。後は、自分が納得するしかないんです。それって、時間がかかりますよね。静かに時間を待つしかないと思いました。急いでも無理なんです。

 

問題が大ありの住民たちが集まっているハイツムコリッタ。でも、小さなしあわせが沢山詰まっているお家なんです。そんな温かな場所なら、きっと、どんなに傷ついた人でも、いつかは癒されるんだろうなと思いました。

 

 

映画を観た後に、荻上監督とプロデューサーの野副さんがいらして、質問に答えてくださいました。面白かったです。荻上監督って、本当に正直な方なんですね。今まで監督の映画のファンでしたが、監督のファンにもなっちゃいました。う〇こプロデューサーのお話には笑っちゃいました。

 

映画の最後の方で、空に浮かぶ凧が出てきて、それがイカだという話があったのですが、私は、宇宙人の凧だと思っていて、何故なら、大家さんの娘が宇宙人を呼んでいたからなんです。それをイベント後に監督にお伺いしたら、宇宙人で良いんですよと言ってくださって、ちょっと安心。それでやっと私の想像が繋がりました。

 

台風の時に坊主が”くる!”と言っていたのは、災難が来るのもあるけど、宇宙人も来るって事だったんじゃないかなって思って。台風という災難が去った後、島田が山田の過去を知ったりしたけど、あの凧で降りて来てくれて、「大丈夫、全部持って行くからね。」ってことだったんじゃないのかなって思ったんです。亡くなった方々が、宇宙人と一緒に降りてきて、面倒な感情を持って行ってくれたのかもしれません。

 

 

最後に、荻上監督と言えば食事風景ですよね。山田が炊くご飯が、美味しそうなんです。炊飯器を開けた時の立ち上る白い湯気は、まるでご飯の香りがしそうなほどでした。その白いご飯に、工場で作った塩辛を乗せて食べる風景は、さすがと言うほどの絶景?でした。ううーん、美味しそう!白いご飯にお味噌汁に塩辛。時々、採りたてのキュウリやトマトを、そのままマヨネーズを付けて食べるという、何とも羨ましい食事風景に悩殺です。

 

この映画、あまりにも気に入ってしまったので、感想を書いていると止まりません。この辺りで止めますね。公開されたら、また観に行っちゃうだろうな。DVDも買っちゃうだろうな。だって、私の大好きな俳優、松ケン&ムロ&吉岡さんという、もう、よだれが出そうなキャスティングに、満島さん、その上、柄本佑さん、緒形さん、江口さんが出演されているという、豪華絢爛なキャストです。大満足でした。

 

 

私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。私は、大好きな映画の1本に入りそうです。ずっと観ていられるような映画です。私、そっとあの近くに行って、ヤギに頭突きを食らわして、隠れて住民の反応が見てみたいな。ヤギ、うるさいんですよ。(笑)何もかもが、私には完璧な映画でした。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「川っぺりムコリッタ」