「女神の継承」今回は少しネタバレです。私の感想は皆さんとちょっと違うと思います。ゾッとしました。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「女神の継承」

を観てきました。

 

ストーリーは、

タイ東北部の村で脈々と受け継がれてきた祈祷師一族の血を継ぐミンは、原因不明の体調不良に見舞われ、まるで人格が変わったように凶暴な言動を繰り返すようになってしまう。途方に暮れた母は、祈祷師である妹のニムに助けを求める。ミンを救うため、ニムは祈祷をおこなうが、ミンにとり憑いていたのは想像をはるかに超えた強大な存在だった。

というお話です。

 

 

タイで祈祷師などのドキュメンタリーを撮影していたチームは、祈祷師の一人・ニムを単独で撮影することにする。ニムの取材を続けて行き、彼女が精霊バヤンの意志を継承し祈祷師となった経緯や、どんな事をしているのかなどの話を聞いていた。そんな時、彼女の姉の夫が亡くなり、ニムと一緒に葬式に行くと、姪であるミンの様子がおかしい。本人は体調不良だと言うが、ニムは何かを感じる。

その日からミンは、人格が変わったように凶暴な言動を繰り返し、仕事もクビになってしまう。生理が止まらず苦しんだかと思うと、暴力を振るったりと、手が付けられない。ニムとミンの母親である姉とは、力の継承の事で確執があったのだが、ミンを助けるために力を合わせる約束をする。

 


 

ニムは、原因を探し始めると、ミンは実の兄と関係があったらしい。兄は事故で亡くなったというので、兄が憑いているのかと思ったのだが、調査の結果、どうも違うらしい。ミンの家族の男性は、何故か酷い原因で早死にするのだった。

もしかして、精霊バヤンの祈祷師をミンに継承する時期に来ているのかと探っていくのだが、それも違うようだった。手を尽くしてしまったニムは、祈祷師仲間の所へ行き、ミンを見て貰うと、悪霊が幾つも付いているという。ニムの姉が結婚した一族の過去に問題があり、その悪霊が復讐をしているのだというのだった。

簡単には太刀打ちできないような巨大な悪霊の力に、ニムだけでなく、何人もの祈祷師が協力して、除霊に挑むのだが・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

 

タイ映画で、珍しくホラーです。結構、恐かったけど、ラストのオチが凄いと思いました。ニムの最後のインタビュー映像で、はっきり言って、180度回転するんですよ。それを感じた人と、ただのホラーと思って観た人と違う感想になると思います。只のホラーとして楽しむのも、もちろんありの映画です。恐いですし、敵が解らないから、何となく、昔の「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」のタイ版と言っても良いような内容でした。

 

タイは、私も行ったことがあるのですが、多神教で、街中の角々に供物が置いてあるんです。色々な神様にお礼をしているんだと思うんだけど、本当に信心深いんです。今回は、そんなタイに、祈祷師がこんなにいるのかと、初めて知りました。色々な神様それぞれに、憑代と言われる人がいるんですね。それを一族で継承していくという事みたいでした。

 

 

もちろん現代だから、あまりそんな事を心から信じていないし、困った時だけ、メンタル的な安心を得るために行っているように見えました。でもね、ガンとかなら病院に行って治療が必要だけど、何となく調子が悪いとか、そういうのってメンタルから来ているモノが多いでしょ。だから、祈って貰っただけで、治っちゃう事もあるんだと思うんです。人間の精神パワーって、人が考えているよりも凄く強いんだと思うんですよね。

 

そして、この精神パワーが、今回、この映画で問題になってくるんです。ここからは、私が考えた映画の解釈です。少しネタバレになりますが、もしかしたら、映画製作者とは、全く違う考え方になっているかもしれないので、そんな事を思う人もいるんだという程度で読んでください。

 

 

ニムの最後のインタビューが、最後の方で流れるのですが、ニムは自分がバヤンの巫女だと確信出来ないと言うんです。それまで、バヤンの力を借りて、沢山の人を治してきたのに、最後にきて、力を感じられていないと告白するんです。現代で素に戻れば、そう感じるだろうと思いますよ。

 

信仰って信じることによって、自分の内なるパワーが出て、何か特殊な事が出来ると思うのですが、自分を信じられなくなったら、パワーは無くなりますよね。ニムは、今までバヤンの巫女だと自分に言い聞かせて、自分を信じていたから、治療などが出来ていたけど、一度でも疑ってしまったら、その力を失うのだと思うんです。仏像のバヤンの首が落ちたことも原因だと思うけど、仏像だって劣化するから、一番細い首が折れるよね。人の作ったものなんだから、ちゃんとメンテをしないと壊れます。だから、全く不思議な力でも何でも無いと考えられるんです。

 

 

悪霊が憑いているミンですが、祈祷師一族で継ぐのは自分しかいないという事で、プレッシャーを感じていて、それが嫌でしょうがなかったんじゃないかな。そのストレスで身体を壊し、精神も病んできたという事もあると思います。それに、実の兄と恋愛関係にあったのなら、尚更、兄が自殺をして、精神が壊れたのだと思います。悪霊が取り着いたと考えれば簡単ですが、もしかしたら、精神を病んだだけかもしれません。

 

問題は、ニムの姉で、ミンの母親・ノイです。ノイは長女なので、彼女がバヤンの力を継承するハズだったのですが、それが嫌で、ニムに無理やり継承させたんです。その負い目をずっと抱いていたんじゃないかな。それに、夫の家がやっていた、犬料理のための犬の屠殺場を引き継いだと言っていたので、沢山の犬を殺していたと思うんです。そんな自分勝手なノイは、土着の宗教を大切にせず、キリスト教に入信して、夫の葬式でも、タイ式の葬式に、牧師を呼んでいたりして、そりゃ、神様も怒るだろうと思いました。

 

 

そんなノイですから、自分が信仰に対して、酷いことをしていると心のどこかで感じてストレスになっていたと思うんです。平気な顔をしていたけど、自分の信仰心の無さが、全ての悪霊を呼び寄せているのかもと感じて、自分で悪い方向へと導いて行ってしまったのかもしれないと感じました。

 

ニムが、自分には力が無いと最後に言ってしまったことで、この酷い事件は、もしかしたら悪霊ではなく、人間が起こした事なのかもしれない、人間のトランス&ヒステリー状態が引き起こしたのかもしれないという解釈も出来るんです。という事は、人間が一番怖いって事ですよね。私は、ゾッとしました。全て、人間が起こしている事だと判ってしまったら、悪霊の恐怖よりも、恐ろしい恐怖です。

 

 

もちろん、観る人によっては、あんなに凄いことが起きたんだから悪霊のせいだと感じる人もいると思います。もしかしたら、本当にそうかもしれません。でもね、よく考えてみると、人間が出来ることばかりなんです。超人的なことはしていないんですよ。人間が壊れると、何をするか解らないですから、自分を信じて、ストレスは溜めず、壊れる前に早い内に対策をするべきなんです。

 

なので、この映画は、未知の悪霊の怖さと人間の怖さ、どちらともとれるように作ってあって、本当に良く出来たホラー映画だと思いました。ミンは、悪霊が憑いたと言っていたけど、あの行動や言語は、とてもキリスト教の悪魔的な雰囲気でした。その辺りも、もしかしたらワザとなのかな。だって母親がキリスト教の教えを娘に話していただろうから、本能で、自分の知っている悪魔の動きをしたんじゃないかしら。もし、本当にタイの昔からの悪霊なら、ちょっと違うと思うんです。その辺りも考えてあるのなら、凄いと思いました。

 

 

私は、この映画、お薦めしたいと思います。恐かったし、オチが凄いと思いました。観た後に、いくらでも考え方が増えて、何処までも広がって行くので、面白いなと思いました。只のバッドエンドで、ぶった斬りという感じじゃないんです。ゾッとさせるんですよ。上手いです。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「女神の継承」