舞台「2020 ニーゼロニーゼロ」
を観てきました。
高橋一生さんの一人舞台です。
運命の分岐点は2020年だった。
あの年、2020年が導く私たち人類の未来とは。
疫病があっという間に世界を覆い、東京オリンピックがなくなったあの年、2020年を起点に、はるか昔、人類の誕生から、はるか先?の世界の終わりまで。
彼の名は「Genius lul-lul(GL)」今は2730年、彼は710年間沈黙を貫いてきた。つまり2020年から。GLは、過去と未来を行き来しながら、自分は何度も生まれ直し、自信の記憶をたぐり寄せているという。
もっと古い記憶は、紀元前10万ねん。クロマニヨン人だったGLは、ラガンバの群れを狩っていた。この時から彼には、人類が辿ってはいけない悲惨な未来が見えていた。文字を持たない原始人に「外すための予言」を伝えるために、洞窟の壁に絵を描き残す。
あるいは、第二次世界大戦中の1940年頃、GLは、陸軍参謀の石原莞爾だった。そして、かの特攻作戦の生みの親だった。ある一人の少尉に思いを馳せる。果たして、他人の許されざる行為を容認することはできるのか。
またあるとき、GLはアフリカのサバンナにいる。1980年頃、赤ちゃん工場を経営するドンゴ・ディオンムであった。またも「外すための予言の書」を書き始める。人類がひとかたまりになる「肉の海」、そして究極の間違いを容認する「大錬金」という人類が選択する破滅ルートだ。
時は移り、2020年、東京。東京オリンピックが中止となったパブリックビューイング会場。AI(人工知能)がGLに偽せて作った最強人間が人類の最高製品をプレゼンテーションしている。最高製品とは、仮想空間において自分がなりたい姿に生まれ変わることが出来る。それは「外すための予言書」に書かれていた事。すなわち「肉の海」へといざなう。
それから700年経った未来。GLは田山ミシェルという青年として自分をシュミレーションする。その頃、大衆は平均化されて1つになっている。そんな中、GLは唯一無二の「個」として生きている。彼が思いついたのは、究極の間違いである、太陽を使った「大錬金」。人類はそれを看過し、世界中の全てのブロックは崩壊し、滅亡する。=人類滅亡ルート
一方、2730年。最後の人間としてのGLは、「肉の海」から切り出された一人として、沈黙を選んだあの時に思いを馳せる。人間は作り続けることで人間を続けている。溢れてしまったら、どこか遠くへ行くしかない。GLは、再び世界から切り出される。
人類の悲惨な末路。あなたはどう答えますか? 後は、舞台を観てくださいね。
この舞台の内容ですが、凄く考えさせられてしまいました。人間は、海から発生した固体から進化し、二足歩行の動物となり、人間と進化してきて、何度も行った選択が間違った報告に走っていて、とうとう現在から710年後に滅亡するって事なんです。「大錬金」っていうのは、完璧に一瞬で滅亡となり、もう一つの「肉の海」となると、少しづつ死滅していって、最後の人間としてGLが残るという事なんです。何故、そうなってしまうのか。人間が愚かな選択を続けてきたからです。
このコロナというウィルスも、滅亡に進むためのフラグですよね。人が感染を恐れて、内に籠るようになり、現実世界での接触を避けて、仮想空間での接触で十分に満足してしまう。生物として生きる意味が無くなってしまうという事ですよね。「肉の海」、そのまんまですよ。恐ろしいです。今、その方向にまっしぐらじゃないですか。
人との関わりが面倒になり、結婚する人も、子どもを産む人も減って、ネット上だけの繋がりで、肉体は個になっていってしまえば、それは滅亡しますよね。そんな現実を、まるでおとぎ話をするように、高橋さん演じる、ジーニアス・LLが話すんです。彼の周りには、白い大理石のようなブロックが山積みになり、ただただ、コロコロと転がっている。それは、まるで意志を失った人間のように。その雰囲気が、少し神々しいほどに美しく、上品な空間を創り上げているんです。
私、ちゃんとストーリーがあるような舞台も好きなのですが、今回の考えさせるストーリーというか、世界を言葉で語っていくような、何か黙示録のような、そんな作品も好きなんです。まるでSF小説でしょ。こうなっているのは、過去のあなた達の選択のせいなんだよって教えてくれていて、じゃぁ、どうしたら良いのかって事は、一切教えてくれない。だけど、観ていると気が付くんですよ。今の自分たちが間違っちゃっていることが。簡単には直せないし、便利に慣れちゃっているけど、どこかで方向転換しなくちゃいけないねって思う自分がいて、今の生活を考える一つの起点になるようなお話だったと思います。
高橋さんは、確実に上手いから、説得力があるんです。どんなに奇想天外な想像のお話でも、そんな事もあるんじゃないかって思わせてくれて、まして、舞台は生なので、直接ドーンと重くのしかかってくるように思えるんですよね。うーん、やっぱり役者さんって、凄いですよ。
それに、今回は白井さんが演出なので、シンプルだけど上品で、舞台全てを使ってくれていて、ホントに凄いなぁと思いました。舞台って、演出家によって、全然違うんですよね。きっちりと、その物語に出てくる家や部屋を作る演出と、全くだだっ広い所に小物だけで見せて行くという演出と、全く違うんだけど、何も無くても、そこに家が見えれば良いし、空が見えれば良いので、そこを、役者と演出で、どう見せていくのかというのが重要なんだけど、今回は、舞台上にスクリーンとブロックだけなのに、古代の平原や、未来都市などが見えてくるところが凄いと思いました。これは、役者と演出家の共同作業だと思うので、才能だと思います。
本当に良い舞台を観せていただきました。とっても満足しました。お一人で80分間、舞台で動き回って、あれだけの人々を魅了するのですから凄いです。私は、観れて良かった。チケットを取るのが大変でしたが、本当に観ることが出来て良かった。ありがとうございました。この舞台、超!超!超!お薦めしたいと思います。これは、皆さんに観て欲しいけど、チケット取るのが大変だろうし、もう完売なのかしら。WOWOWとかで、配信をしてくれたら良いんですけど、どうなのかしら。もし、観る機会があったら、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
舞台「2020 ニーゼロニーゼロ」