「破戒」日本にも明治以前には酷い差別制度があったんです。島崎藤村の小説を60年ぶりの映画化です。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「破戒」を観てきました。

 

ストーリーは、

亡くなった父から自身が部落出身である出自を隠し通すよう言われた瀬川丑松は、地元を離れて、ある小学校の教員として奉職する。教師としては生徒に慕われる丑松だったが、出自を隠していることに悩みを抱いている。下宿先の女性・志保との恋に心を焦がす丑松だったが、やがて出自について周囲に疑念を抱かれるようになり、学校内での丑松の立場は危ういものになっていく。

というお話です。

 

 

瀬川丑松は、自分が被差別部落出身ということを隠して、地元を離れ、ある小学校の教員として奉職する。彼は、その出自を隠し通すよう、亡くなった父からの強い戒めを受けていた。

彼は生徒に慕われる良い教師だったが、出自を隠していることに悩み、また、差別の現状を体験することで心を乱しつつも、下宿先の士族出身の女性・志保との恋に心を焦がしていた。

友人の同僚教師・銀之助の支えはあったが、学校では丑松の出自についての疑念も抱かれ始め、丑松の立場は危ういものになっていく。苦しみのなか丑松は、被差別部落出身の思想家・猪子蓮太郎に傾倒していく。



 

猪子宛に手紙を書いたところ、思いがけず猪子と対面する機会を得るが、丑松は猪子にすら、自分の出自を告白することができなかった。そんな中、猪子の演説会が開かれる。丑松は、「人間はみな等しく尊厳をもつものだ」という猪子の言葉に強い感動を覚えるが、猪子は演説後、政敵の放った暴漢に襲われ、殺されてしまう。

この事件がきっかけとなり、丑松はある決意を胸に、教え子たちが待つ最後の教壇へ立とうとする。後は、映画を観てくださいね。

 

 

私、お恥ずかしい話ですが、この作品が島崎藤村の小説だとは全く知らず、間宮さんが主演というだけで観に行ったんです。劇場に入ると、イヤに年配の方が多く、あれ?この映画は何なのかな?と思って、始まったら、島崎藤村の小説で、60年前に市川崑監督が映画化された作品なんですね。

 

内容は、とても深い良い作品で、明治時代の差別制度を描いた作品でした。確か、その昔、歴史か何かの授業で、日本にも差別がある事を習って、「士・農・工・商・穢多・非人」という分け方があったと教わった事を引っ張り出して、必死で言葉について行きました。最初に、”穢多(えた)”だからといって、宿屋を追い出される人が出てくるのですが、その時に”えた”だからという言葉がよく解らず、何だったかしらと必死に脳をフル回転させて引っ張り出しました。


 

そんな調子で、差別の事をほとんど知らずに観始めたので、映画の中で起きることが、とても不思議で、これは日本の歴史なのかしらと思ってしまいました。こんなに酷い差別があったんですね。インドのカースト制度よりも酷いくらいじゃないのかしら。だって、部落(穢多と非人はここに属するそうです。)出身の人は、先生の免許を持っていても先生としては雇ってもらえず、宿屋にも泊れずって、酷くありませんか?明治時代は差別は無くして、皆平等だと決まったハズなのに、酷い事を続けていたんだなと思いました。

 

そのような差別の中で、主人公の瀬川は、部落出身という事を隠しながら、小学校の教師を続けていました。子どもたちの間でも差別はあり、部落出身の子供たちは、他の子供たちに虐められたりしていました。親が差別をしているのですから、子供は真似しますよ。瀬川は、そんな子供を見ながら、部落出身を隠している自分を恥じているんです。そんな時に、思想家の猪子先生に出会い、出自を恥じるのは間違っていて、自分に自信を持って生きて行こうと思い始めるのですが、その矢先に猪子が殺されてしまうという、凄い展開になります。

 

 

瀬川は自分の出自を明かせば、それまで恥じて、隠れるようにしていた自分を開放し、スッキリすると思ったのかもしれませんが、そうではありません。部落出身と明かしてしまえば、父親が心配していた通り、酷い差別を受けることになります。父親との約束を破り、告白をしてしまう=破戒なのですが、それによって、得られるものと無くすものの多さは、この時代には測り知れません。破戒が良かったのかは、今後の瀬川の生きていく道によって決まるんです。辛い話でした。

 

そんな酷い時代のお話ですが、瀬川をずっと助けてくれる友人の銀之助が凄く良い人物なんです。彼が部落出身と聞いても、変わらずに彼を助け、友人として見送ってくれます。そして猪子も、瀬川を勇気づけてくれて、何処までも強い人間として描かれます。周りの人物により、力を蓄えられて行く瀬川の姿は、良いなと思いました。

 

 

主人公の瀬川を演じた間宮さん、今までの役とは違って、清楚で一本筋の通った男性を演じていて、素晴らしいと思いました。これからも、色々な役を演じて頂いて、楽しませて欲しいと思いました。やっぱり上手いです。そして、友人の銀之助を演じていた矢本さんも素晴らしかった。この映画、主人公も良いのですが、この友人の行動が、とても心に沁みてきます。なんて優しい男なんだろうと感動するほどです。このお二人が演じて、良い映画になりました。

 

他のキャストの方々も素晴らしく、映画の出来も良かったと思います。私は、過去の作品は観ていませんが、私の「破戒」はこの映画となりました。感動して、とても好きな映画になりました。島崎藤村は、それ程、好きな作家ではありませんが、これから読んでみようと思います。

 

 

私、その昔に大学を出て建築を始めた頃、どうしても進まない案件がある場合は、”部落”か”在日”を使えと言われたことがあります。何も知らなかった私は、その言葉さえ解らず、??という状態だったのですが、行政との交渉などで上手く行かなければ、彼らにお金を払って力を貸して貰い、行政を脅してもらうという事でした。今から25年位前だと思いますが、その頃に、差別は社会悪という風潮を使って、彼らは、反対に強い力を持っていたのかもしれません。私は、そんな力も使うことなく、建築を続けてこれましたが、色々、今でもあるのではと思います。

 

今の時代、日本国内の出自など関係無く、まして、国さえも関係無くなり始めているのですから、気にすることは無いと思いますが、歴史の中には在った事ですから、忘れずに記録を残して、二度と同じことは起こさないとしなければいけません。


 

私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。この映画、何故か上映館が少ないのですが、もっと増やして欲しいと思いました。とても良い映画です。これ程、良く出来ているのに、何故、宣伝も少なく、ネットでも名前が上がってこないのか不思議です。やはり、差別を描いているからなのでしょうか。でも、今だからこそ、歴史的な事を、キチンと描いて残して行く事は大切なのではないかと思いました。素晴らしい作品です。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「破戒」