「ベイビー・ブローカー」赤ちゃんポストに置かれた子供はどうするのが一番しあわせになれるのかな。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「ベイビー・ブローカー」を観てきました。

 

Fan's Voice独占最速試写会に参加させていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

借金に追われるサンヒョンと、赤ちゃんポストのある施設で働くドンスには、「ベイビー・ブローカー」という裏稼業があった。ある雨の晩、若い女ソヨンが赤ちゃんポストに預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づいて警察に通報しようとしたため、2人は赤ちゃんを連れ出したことを白状する。ソヨンは、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、人身売買の検挙するため尾行を続けていた刑事のスジンとイは、証拠をつかもうと彼らの後を追うが・・・。

というお話です。

 

 

古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョンと、「赤ちゃんポスト」がある施設で働く児童養護施設出身のドンス。彼らの裏家業は、ベイビー・ブローカーだ。ある土砂降りの雨の晩、その教会の赤ちゃんポストに近寄る若い女ソヨン。彼女は、赤ちゃんをポストに入れに来たようだが、ポストに入れずに、その手前に赤ちゃんを置き去りにする。

そこへ、一人の女が現れる。彼女は刑事・スジンで、その赤ちゃんポストを使って人身売買をしているらしいという情報を知り、偵察をしていたのだった。ポストに入れずに置かれた赤ちゃんは、そのままでは寒さで死んでしまう。スジンは、その赤ちゃんをおとりにして人身売買の証拠を掴もうと、赤ちゃんをポストに入れる。



 

案の定、サンヒョンとドンスは、ポストに赤ちゃんが入ったと知り、赤ちゃんを高く買ってくれる人物に売ろうと、ポストの録画ビデオを消して、赤ちゃんを連れ去る。

翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく赤ちゃんを連れ去った事を白状する。「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけようとした」という言い訳にあきれるソヨン。だが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。



 

一方、彼らを検挙するためずっと尾行していた刑事スジンと後輩のイ刑事は、赤ちゃんが売買される現場を押さえようとヤキモキしていた。あまりにも話が進まないので、偽の赤ちゃん購入希望者を派遣して買わせようとしたり、是が非でも現行犯で逮捕しようと、捜査を進めていくのですが・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

この映画、面白かったぁ。感動しました。描いている事が、繊細で深いんです。出てくる人物、誰しもが、それぞれに過去があり、苦しい思いをしているんです。でも、自分が経験したこと以外は解らないでしょ。子供を赤ちゃんボックスに捨てる母親の気持ちも解らないし、赤ちゃんを売ろうとする人たちの気持ちも解らないし、本人にしか解らない事が沢山あるんです。それを、お互いに、段々と伝えていき、分かり合うという感じの映画でした。

 

 

まず、母親が赤ちゃんポストに子供を捨てにきます。刑事のスジンは、”捨てるなら産むなよ!”と吐き捨てるように言います。でも、捨てたソヨンは、堕胎するのも人殺しだから、生まれてから捨てるのも同じでしょと言うんです。うーん、どうなんだろう。私は、育てられないなら産むべきではないという考え方なので、何とも言えませんが、この会話を聞いていて、やっぱりキリスト教の考え方が韓国は強いのかなと思いました。キリスト教では堕胎は罪ですからね。

 

でも、悩みました。人口が減っている今、産むだけ産んで、育てられないなら、育てられる誰かに託すというのも選択肢のひとつなのかな。みんなで育てていくというのも、ひとつの考え方なのかなと思いました。もちろん、それを推奨するなら、差別とか、貧富の差を失くして行く必要があると思うんですよね。これだけ結婚しない、子供を産まない人が増えている中、もう少し、施設などで育つ子供たちを、みんなで育てるというか、愛情を与えてあげることが出来ないのかしら。ロリコンとかの問題もあるから、大きく窓口を広げることが出来ないのかもしれないけど、やっぱり子供には愛情が必要だと思うんです。

 

 

この映画の中にも、売買される赤ちゃんの他に、施設にいる6歳くらいの男の子が出てくるのですが、サンヒョンに「養子にしてよ。」とずっと頼むんです。その施設は、親のいない子たちが育つ施設で、"迎えに来る"と言って置いて行った親ばかりなのに迎えに来ないのがほとんどのようなんです。その男の子は、親を待つより、今愛情が欲しかったんじゃないかなと思いました。誰かに愛されたいと思っているんです。 そんな姿がいじらしくて、かわいかったな。

 

サンヒョンとドンスとソヨン、そして赤ちゃんと男の子の5人が、赤ちゃんを里子に出す為に、里親候補に逢いに行きます。里親と言いながらも、売るんですけどね。人身売買とは思うけど、でも、愛情を持てない母親に育てられて不幸になるよりも、子供が欲しい里親に育てられる方が、赤ちゃんもしあわせなんじゃないかな。

 

 

ソヨンは、どーも話からして、親はいたけど愛情を与えられずに育ち、売春あっせん業者のところに来たみたいでした。母親は、生まれれば必ず子供に愛情を持てるとは限りません。持てない人もいると思うんです。もしそうなら、愛情をもって里親に育ててもらい、産んだ親とは、産んでくれてありがとうという関係で良いんじゃないかしら。人間が多様化してきているので、もう、無理に虐待している親に戻すとか、そういうのは辞めましょうよ。親に反撃出来るようになったら、逢わせればいいんじゃないかな。殴られそうになったら殴り返せば、相手も殴らなくなるでしょ。

 

最初、サンヒョンとドンスは、お金が欲しくて赤ちゃんの売買をしていたんだけど、里親を探す為に旅をして行く内に、本当に良い人に貰って欲しいと思うようになるんです。赤ちゃん、可愛いから、誰もがしあわせになって欲しいなと思い始めるんです。かわいいって赤ちゃんの武器だと思うんですよね。こんなにかわいいから、母親だって段々と母性が目覚めるようになるし、父親も父性が生まれるんじゃないかな。最初からある訳じゃなくて、赤ちゃんの武器のせいで、大人がメロメロになって愛しちゃうんだと思うんです。だって、動物の赤ちゃんだって、あまりにもかわいくてギューってしたくなるでしょ。同じなんですよ。

 

 

お腹の中にいる時、愛おしいと思う人も多いかもしれないけど、「お腹に寄生されている。」と考えてしまう人もいるんじゃないかな。私はそのタイプだと思う。でも生まれてきて、育て始めたら、もう耐えられないほどギュギューってしたくなるほど愛しちゃうと思うんです。まして、自分に似ていたら、もう絶対に離せなくなっちゃうよね。

 

そんな赤ちゃんの為に、成長していく大人たちの姿が描かれていました。うーん、本当に良かったです。泣いちゃったもん。サンヒョン役のソン・ガンホさん、全員のお父さん役のようになっていて、情けなさそうに見えるんだけど、みんなのしあわせを守る為に行動をしていきます。これは、カンヌで最優秀男優賞を貰いますよ。

 

 

やっぱり本当に上手い役者さんって、こういう事なんですね。コロコロと気持ちが変わって、最後には行き着くところに着地をして、という気持ちがこちらに伝わってくるんです。役者さんと一緒に映画の中で旅が出来るんですよ。観て良かったという気持ちにさせてくれるんです。

 

刑事スジンを、あのペ・ドゥナさんが演じています。私は、「空気人形」の可愛らしいぺ・ドゥナさんが忘れられず、今も好きです。今回は、強い女性に見せながらも、実は優しい女性という事が伝わってきて、素敵でした。映画の中では、母親のソヨンの対極として描かれているのかな。考えずに子供を産んだソヨンと、愛する人もいるけど産んでないスジンという感じかしら。女同士の考え方の違いを描きながら、その外側で”あわあわ”している男達と、責任を取らない父親とその関係者、の姿が描かれていて、とても考えさせられました。こんな大人が、子供ひとりの命を左右しているんだなと思うと、人間、しっかりしようぜ!って思っちゃいました。動物の親の方が、よっぽど子供を大切にしてるわよ。

 

 

私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。この映画、好きです。きっと、また観に行くと、新しいことが発見出来るような気がします。そんな映画でした。考えは人それぞれで、どの考えも間違っていないし、正しくもないのだろうと思います。それでも赤ちゃんにメロメロになって、この子の為に出来る事を考えるというのは、誰しもが共通することなんじゃないかな。赤ちゃんを通して、思いは通じて行くのだろうと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

P.S : 是枝監督とのリモートトークは面白かったです。フランス、韓国と、外国での映画制作が続きましたが、たまたまで、これからも日本で作っていきますとの事でした。6/24に公開なので、監督と一緒に韓国俳優さんたちも宣伝にいらっしゃるのではないかなとおっしゃっていました。子供の撮影秘話なども面白かったですよ。日本公開前に、またお話をしてくださると思います。楽しみですね。

 

 

「ベイビー・ブローカー」