【イタリア映画祭2022】
「そして私たちは愚か者のように見過ごしてきた」を観てきました。
ストーリーは、
企業の管理職にあったアルトゥーロは、自らが導入したアルゴリズムによって解雇される羽目になる。恋人も友人も失い、貯金もない48歳の彼が唯一探し当てた仕事は、グローバルIT企業フーバーが経営する飲食宅配代行の配達員だった。
というお話です。
近未来のイタリア。企業の管理職にあったアルトゥーロは、自らが導入した社員査定のアルゴリズムに余剰人員と判断され、職を失う。恋人も友人も失い、貯金もない48歳の彼が唯一探し当てた仕事は、グローバルIT企業フーバーが経営するフードデリバリーの配達員だった。
彼は家計の足しに大学の非常勤講師ラッファエッロを同居人に迎えるのだが、アルゴリズムに管理される配達員の仕事に孤独を募らせる。3Dホログラムで理想の恋人を出現させるアプリで、ステッラという仮想恋人を得て心の安らぎを得るが、無料体験期間が終了して、彼女とも会えなくなってしまう。
彼女と会えるアプリに課金するためにお金を稼ごうと、配達員としての評価を上げるため、別のアプリで労働時間を増やそうとするが、移動手段の自転車を盗まれた挙句、交通事故に遭ってしまう。
何をやっても報われず、打ちひしがれたアルトゥーロに、同居人のラッファエッロが、ホログラムで現れるステッラはインドのムンバイ本社で働く実在の女性であるいう。それを信じたアルトゥーロは、本社ビルの清掃員の職に応募してムンバイに向かうことにする。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。
この映画は、近未来に、何でも便利にしていこうと、色々なモノをAIに任せて、人間が要らなくなっていく世界を描いています。主人公のアルトゥーロは、自分が開発導入した人員査定アルゴリズムによって、自分も査定されてしまい、必要ないと言われてしまいます。確かに、良く考えてみれば、アルゴリズムの開発が終われば、開発者は必要ないですよね。新しいシステムを考え出すならまだしも、それだけが仕事だったのなら、必要ないんです。なので、リストラされてしまうんです。
48歳の彼は求人を探しますが、求人があるのは40歳までで、48歳の彼が職を見つけるのは困難でした。酷く困っていたら、ウーバーのように食事を配達してくれる配達員の仕事の求人があり、それに応募します。なんだか、とっても怪しげな感じなのですが、他に仕事が無いので、仕方なく、その仕事に就くんです。
フーバーでは、仕事をすべてアルゴリズムで管理しており、一定時間働いた後、その場で休みを何分取って、そしてまた仕事に戻らせるという、全て腕時計式のアラームで指示をしているんです。でも、配達時間は事故で遅れることもあるし、休み時間だからと言って、その時間にきっちり休めるとは限らないでしょ。人間はロボットじゃないから、こんなの無理だよなぁと思っていたら、その内、配達員が走る上を、ドローンが追い越して荷物を運び始めているんです。なので、その内、配達員の職は全てドローンに取って代わられるんだろうなという事を暗に示していたのかなと思いました。
誰もが便利だと良いと思うけど、それが自分の首を絞めているとは思っていなくて、ある日、突然に気が付くんですよね。便利になることについて、何も深く考えず、見過ごしているという事なんです。私も、便利になって、生活が楽だなと思っているけど、昔よりも人と話さなくなったし、顔を見なくなったし、コミュニケーションが無くなりましたよね。ネット上で知り合ってるというけど、文字上だけでしょ。
殆どAIが管理するようになってしまったら、人間は必要無くなって、そうなると仕事が無くなり、収入が無くなるので、物が売れなくなり、AIが管理する必要も無くなってしまう。堂々巡りで、人類滅亡になっちゃいますよね。何事もほどほどで、人間が管理して、間違いがあってもいいんじゃないの?蟻の巣があると、働き蟻の中に働かない蟻が何パーセントかいるそうです。働かない蟻がいるからこそ、もしかしたら未来があるのかもしれません。
もし、AIが支配する世界が進んで、人類も存続出来たなら、光瀬龍のSF小説「百億の昼と千億の夜」に出てくる”ゼンゼンシティ”という都市に住む人間たちのようになるのかなと考えました。一人が入れるコンパートメント(箱)に入り、栄養が与えられるだけで、動かずに好きなことだけを思考しているという、マトリックスのカプセルの中のような感じですかね。それが、とても現実的になりつつあるのかなと思いました。
そんなことを教えてくれる、面白い映画でした。私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。この映画も、日本公開は決まっていませんが、これは、面白いから公開してくれたら良いんじゃないかなぁ。みんな考えさせられると思うけどなぁ。私は、とっても楽しめて、観た後に何度も考えてしまいました。オンライン上映がもうすぐありますし、もし、公開されたら、ぜひ、観てみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「イタリア映画祭2022」