「インフル病みのペトロフ家」を観ました。
Fan’s Voice独占最速オンライン試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)。
ストーリーは、
2004年、ソ連崩壊後のロシア。大都市エカテリンブルグでインフルエンザが流行する中、ペトロフは高熱にうなされ、妄想と現実の間をさまよっていた。やがて彼の妄想は、まだ国がソビエトだった頃の幼少期の記憶へと回帰していく。
というお話です。
2004年のロシア、エカテリンブルク。インフルエンザが流行している。ペトロフは高熱にうなされ、妄想と現実の間を行ったり来たりしながらも、家に帰る為にバスに乗る。
バスで9歳の少女に卑猥な言葉を投げた老人を若い男性が殴り、外に放り出す。秩序を乱したからだ。ふと見ると外から男が入ってきて、ペトロフを引っ張り出す。ふわふわとしながらついて行くと、銃を持たされ、豪華な服を着ている男女を壁の前に並べて、撃てという。ペトロフは言われるがまま、他の人々と一緒に銃を撃つ。
ふと気が付くとバスの中。妄想だったのかと気が付く。すると、今度は友人のイーゴリがやってきて、一緒に飲もうと連れ出す。ペトロフはインフルエンザで高熱だから家に帰るというが、強引に車に乗せられる。その車には、棺桶が積んであり、死体が入っているという。何故かはよく解らない。
ペトロフはアスピリンを貰い飲むのだが、なんと何十年も前のソ連時代のモノで、効く訳が無いという話をイーゴリがしているのを聞きながら、段々と妄想が酷くなり、まだ国がソヴィエトだった子供時代の記憶へと回帰していく。
一方、ペトロフと別居中のペトロワと息子だが、息子がインフルエンザにかかったようで、熱に苦しみ始める。妻のペトロワは、図書館司書でストレスが溜まりまくり。ムカつく人々を殺したいという妄想を抱いている。そして・・・。
ペトロフはインフルエンザの妄想から抜け出すことが出来るのか。後は、映画を観てくださいね。
この映画、私には難しかったなぁ~。ペトロフが、高熱でふらふらしながらバスに乗っているところから始まるのですが、どんどん妄想が入ってくるんです。妄想映画とは思っていなかったので、え?これ、現実なの?妄想なの?って不安になりながら観ていると、どーも、妄想だったのかなって展開になり、安心したのですが、それからも、バンバン妄想が入ってきて、どれが何だか解らなくなっちゃうんです。なので、途中から、全てを理解しようとするのではなく、雰囲気で観ようと思い始めました。
ペトロフの現在は、2004年のロシアなのですが、自分が子どもの頃の1976年に意識が飛び、その頃に出会った女性を思い出したり、1990年に意識飛び、友人がペトロフを主人公にして小説を書いていた事を思い出したりするんです。ロシアではなく、ソヴィエト連邦の時代には当たり前だったことが、現代では違ってきているけど、それでも、やっぱり昔を引きずっていることが描かれており、そう簡単に人々の意識が変わらないことを、よく描いているなと思いました。
面白かったのは、高熱で朦朧としていると、そこに、変なオバサンが現れて、UFOが自分を連れ去ったのよとか話しかけたり、この少女には治癒能力があるからと言って、ペトロフを治そうとしたり、結構、コメディ?って思うような部分も沢山ありました。ふと窓の外を観ると、UFOが来てたりするのが笑えたなぁ。
ペトロフは、映画の中では別居中と言ってたけど、公式HPを見ると離婚したのかな?ペトロワと一緒に住んでいないようでしたが、息子には会いたいようで、自分が息子を世話するのと、自分と父親との関係がリンクしていって、この父息子の関係の話は良いなぁと思いました。
で、問題は、ペトロフの妻のペトロワなんです。大人しくて美しい妻に見えるけど、すんごい過激で、残酷な内面を持つ女性なんです。図書館司書として働いているのですが、その図書館にやってくる、やりたい放題の”文学サークル”や、友人のDV夫、小学校の警備員などに、殺意を抱いているんです。彼女にストレスを与える存在だったり、友人を虐める奴を許さないって感じでして、こちらも妄想だと思うんだけど、怒ると眼球が真っ黒になり、吸血鬼っぽい感じかしら。でね、凶行に走るんだけど、それが妄想なのか現実なのかは、映画を観てのお楽しみです。
いやぁ、でも、このペトロワの気持ち、凄く解るなぁと思いました。職場で好き勝手やっているお客って嫌じゃないですか。お店をやっている方は解ると思いますが、テーブルの上に椅子を乗せていいかとかって、あり得ないでしょ。それは図書館の話なんだけど、テーブルの上に椅子って、危ないし、汚いし、傷も付くし、はっきり言って、物を大切にする人間や、清潔を重んじる人間からすると、許せないんです。完璧に掃除をして、机の上にシートなどを轢いて、それで乗せるならともかく、そのままってどーよ。食事をするテーブルに土足で上がると一緒だよ。私も許せないと思ったなぁ。
友達のDV夫とかもだけど、日常生活の中で、許せない人間っていますよね。もちろん、実際には出来ないけど、ホント、後ろから行って包丁でブスッと刺すとか、したくなっちゃう気持ち湧きますよ。だから、ストレスが溜まっている社会は怖いんです。気を付けないと、知らない内に恨まれていたりするってことが、この映画でも描かれていて、ロシアの人々も抑圧されているんだろうなと推測出来るところが、何とも凄いと思いました。
試写後のアフタートークでロシア文学者の上田さんと映画ジャーナリストの立田さんがお話してくださいましたが、キリル監督は、現在はドイツに出国しているそうです。ロシアで色々な裁判があり、それが終わってすぐに、出国したらしいです。今日のニュースでロシア軍がウクライナに300か所もミサイルなどを打ち込んだとの事でしたが、ロシア国内でも、戦争反対などの活動をすると弾圧が酷くなっているようですね。この映画のペトロワ役の女優さんは、反ロシアを掲げて運動をしているようです。あと、ちょっと忘れちゃいましたが、男優さんがウクライナに住んでいて、インスタに軍服で近況を上げているようです。
今、この状況でロシア映画が観れるというのは、ありがたいと思いました。ロシアって、本当はどんな国なんだろうという事を知るのに、映画や小説などは良いんです。ただ、悪い奴って避難するのではなく、どんな精神構造で、どんな人が賛成していて、反対している人もいるのだという事を知るのに良いかなと思いました。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。はっきり言って、突然に妄想に入っていくので、理解するのに時間がかかり、難しかったのですが、後から映画の内容を咀嚼していくと、色々な深い精神部分が見えてくるんです。ロシアを少しでも知りたいと思われたら、この映画を観てみると良いかなと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「インフル病みのペトロフ家」