「ハッチング 孵化」を観ました。
Fan’s Voice独占最速オンライン試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)。
ストーリーは、
北欧フィンランドで家族と暮らす12歳の少女ティンヤ。完璧で幸せな家族の動画を世界へ発信することに夢中な母親を喜ばすため、すべてを我慢し自分を抑えるようになった彼女は、体操の大会優勝を目指す日々を送っていた。ある夜、ティンヤは森で卵を見つける。ティンヤが家族には内緒で、自分のベッドで温め続けた卵は、やがて大きくなり、遂には孵化する。卵から生まれた「それ」は、幸福に見える家族の仮面を剥ぎ取っていく。
というお話です。
北欧フィンランド。12歳の少女ティンヤは、完璧で幸せな自身の家族の動画を世界へ発信することに夢中な母親を喜ばすために全てを我慢し自分を抑え、新体操の大会優勝を目指す日々を送っていた。
ある日、動画撮影中に部屋に入ってきた鳥が、家の装飾品を壊し、めちゃくちゃにしてしまう。母親は怒り、鳥を外に逃がそうとするティンヤを止めて、その鳥を殺してしまう。
その夜、ティンヤは死んだ鳥が気になりゴミ箱を見に行くと、鳥はそこに居なかった。探しに行くと、鳥は森の中で卵を守っており、瀕死状態。ティンヤは可哀想に思い、鳥を殺し、卵を代わりに守り、自分で温めることにする。
ティンヤの母親は、自分が怪我でアイススケートを諦めたという穴を埋めるように、娘に新体操でトップを目指すように強要する。娘を自分の道具のようにあつかっているんです。そして自分は夫がありながら、恋愛し、愛人を持っていて、夫は、彼女は自由奔放だからと許容しています。それはティンヤの目には裏切りに映っていて、家族を壊しているのは母親なのに、自分は家族の為に体操をしなければならないという気持ちが大きくなっていきます。
両親への不満、そして嫌がらせをする弟、自分より新体操が上手い友人、ティンヤの心を乱すことがどんどん増えていく。
やがて卵は大きくなりはじめ、遂には孵化をする。卵から生まれた”それ”は、幸福に見える家庭の仮面を剥ぎ取っていく。”それ”は、ティンヤの傍に存在し、彼女の意識を読み取って何をするのか・・・。後は、映画を観てくださいね。
この映画、恐かったです。うーん、やっぱり北欧ホラー映画は怖いですね。日本のような、恨みつらみとか、怨霊という事ではなく、おとぎ話的な怖さとか、精神面での怖さが強く出ていて、ゾッとするんです。今回も、無垢で正直な少女が、段々と自分の心の悪の部分に押しつぶされていくという、恐ろしい展開でした。
両親と姉と弟という4人家族で、パッと見はノーマルなのですが、母親はフィンランドの幸福な家族の生活を配信する「素敵な毎日」という名前のSNSをやっていて、いつも完璧に見せていないと気が済まないような人なんです。なので、娘にも完璧を求めているんです。
こういう母親って、たまにいますよね。自分の娘は自分のモノって思っている人。子供を個人として見ていないんです。子供は無垢だから、必死で母親のいう事を聞いて、望み通りの子供になろうとするけど、いつか気が付きますよ。母親が自分をモノとしか見ていないという事に。本当に愛してくれている訳ではないという事に。
そんな母親の元で育つティンヤは、自分を押し殺して、ずっと頑張っているんです。その鬱屈した部分が、拾って来て温めている卵に移っちゃったんじゃないかなぁって思いました。だから、恐いことがどんどん起こってくるんです。
でね、この映画、明るそうに見せているんだけど、どこか寒々しくて、出てくる人達に、全然、血が通っていないように見えるんです。特に、この家族、本当に人間なの?っていう感じなの。父親と弟なんて、まるでクローンのようで、顔はもちろん違うけど、同じ色の服で、同じような風貌で、何をやっているの?って感じなんです。
唯一、ここに出てくる人で、人間的だなと思ったのは、母親の愛人男性と、その子供かな。この2人は、普通の人間のように見えました。なので、ティンヤが体操で苦しんでいる事にも気が付くし、おかしな事が起こり始めると、直ぐに自分と子供から、悪いモノを遠ざけようという行動に出ます。うん、この人が一番普通の人間でした。それ以外の人物は、どこかおかしいんです。
映画を観た後に、映画ライターの高橋さんと立田さんがアフタートークをしてくださったのですが、とても解りやすかったです。お話に共感出来る部分が沢山ありました。北欧ホラーは人気が出てきていますが、ホラー映画の監督に女性が増えてきたのも気になりますとの事でした。この映画も、女性監督なんです。
私は、常々思っているのですが、ホラー映画を創るのは女性の方が合っていると思います。何故なら、この映画でも、ある部分でその事が描かれますが、女性は毎月血を流します。それも、その血は、命になるはずだった血なんです。そう思っただけでも、凄いホラーだと感じませんか。毎月、命を流している。それが、当たり前の生理現象で、それを許容して生きている、女性の存在自体がホラーに感じるんです。私、子供の頃に、その事を知った時、本当に怖いと思いました。もう、長く生きてきたので、もちろん納得はしていますが、時々、考えると怖いです。何故、女性にのみ、こんな機能が付いたのか。この怖さを抱えていない男性に、本当に怖いホラーは創れないと思っています。
この映画も、そんな女性が作ったからこそ、細部にまで気が使ってあり、母親の怖さも描けているのだと思います。子供を産む。命を生み出す。その子供を自分のモノとして、使いこなそうとする。そんな事を、傲慢にも考えてしまう母親は、恐怖の何ものでもありません。このティンヤだって、卵を温めて、そこから生まれてきた”それ”と対峙し、何を見たのか。ティンヤにとって、”それ”は自分が産んだ子供なんです。恐ろしいでしょ。
ホラーの題材としては、それほど新しいとは思いませんが、これほど繊細に描かれて、繋がりが考えられていると、本当にゾッとします。最後まで観ると、自分で、その先も色々と想像してしまいました。考えれば、考えるほど、恐ろしい内容でした。恐ろしいけど、とても美しくて、惹き付けられる作品です。なんでこんなに美しいんでしょうね。恐いのに、美しくて、それがゾッとする要素にもなっているんです。
私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。ホラー映画としては、ランクが高いと思います。頭を使って観て頂けたら、凄く楽しめると思いました。もちろん、軽く楽しめるホラーとして観て頂いても良いのですが、マニア的に観ると、すんごい楽しめると思います。題名の「ハッチング」という言葉も鍵になっているので、考えてくださいね。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「ハッチング 孵化」