「やがて海へと届く」を観てきました。
ストーリーは、
自分をうまく表現できない真奈は、自由奔放なすみれと出会う。2人は親友になったが、すみれは一人旅に出たまま突然姿を消してしまう。すみれがいなくなってから5年、すみれの不在をいまだ受け入れることができずにいる真奈は、すみれを亡き者として扱う周囲に反発を抱いていた。ある日、真奈はすみれのかつての恋人である遠野から彼女が大切にしていたビデオカメラを受け取る。真奈はもう一度すみれと向き合うため、すみれが最後に旅した地へと向かう。
というお話です。
引っ込み思案で自分をうまく出せない真奈は、大学のサークル勧誘の時にすみれと出会う。すみれは、自由奔放で誰とでも話が出来るような女性だった。真奈は彼女に憧れを抱き、あなたのように話せないと悩みを打ち明けると、チューニングして周波数を合わせればいいんだよと言う。そんな2人は、いつしか親友になっていた。
それから時間が経ち、ある日、すみれは一人旅に出たまま突然、居なくなってしまう。その日から5年。真奈はすみれの不在をいまだ受け入れられず、彼女を亡き者として扱う周囲に反発を感じていた。
ある日、真奈はすみれのかつての恋人・遠野から連絡があり、彼女が残していた荷物を整理すると言われる。そして残ったものを彼女の実家に持って行くと言う。遠野の家に行き、荷物を確認し、すみれの実家に2人で荷物を届けに行くと、すみれの母親が迎えてくれる。すみれの母親からビデオカメラを貰って欲しいと言われ、真奈は受け取ってくる。遠野に見たのかと聞くと、観ていないと言う。
真奈は家に帰り、すみれの残したビデオカメラを見ようとするが、何となく最後まで観ることが出来ない。モヤモヤが残ったままの真奈は、ある事件がきっかけとなり、職場の人と一緒に、すみれが最後に旅した地へと行ってみることにする。そして、そこで見たものは。そして戻ってきた真奈は、すみれのビデオカメラを見ようと決意する。後は、映画を観てくださいね。
この映画は、観に行く前に何も情報を入れずに観たので、東日本大震災が関わっている映画だとは知りませんでした。始まってすぐに、アニメーションが流れて、何故か水が描かれていたので、何なのかなと思っていたら、最後の最後で、その意味が解り、感動でした。
真奈とすみれは、大学で知り合い、親友になります。それはもう、とても仲の良い2人でした。すみれは子供の頃から母親と上手く折り合いがつかず、真奈と出会って、真奈の家に転がり込みます。家を出て、真奈の家で暮らし始めるんです。
すみれは、真奈と暮らし始めて、やっと安心できる場所が出来たという感じでした。それくらい、自分が育ってきた環境に違和感を感じていたようでした。だけど、あまりにも幸せで、安心出来る場所が出来てしまい、不安もあったのかもしれません。しばらくして、すみれは遠野という同級生と付き合い始め、同棲をすることにします。なので、真奈の家から出て行くんです。
この時の彼女の表情は、とても辛そうに見えて、何で辛そうなのかしらと考えました。私の深読みかもしれませんが、すみれは、真奈に恋愛感情があったように思います。それについては、映画の中では触れていませんが、私は、きっと、すみれは真奈が好きだったけど、そうは言えないから、遠野と付き合い、普通の女性として生きようとしていたのだと思いました。
いつも母親にも周りにも、”標準”を求められ、それに自分を合わせてきたすみれ。辛かったのだろうと思います。だから、ビデオカメラをいつも手に持って、本当の自分を見せずに、外を見ていたのかなと思いました。全て、カメラを通して接していたんです。すみれのセリフで、「人は世界の片方の面しか見ていないと思わない?」というのがあるのですが、すみれは、いつも人から、綺麗で優しくて、人当たりの良い人物と見られていたのですが、本当は、人と接するのが苦手で、好きな人とだけいる事を願っていたように思います。だけど、周りから”標準”を押し付けられ、いつも”標準”を装っていたかなと思いました。
真奈は、すみれの本当の顔を見ることは出来ておらず、すみれの良い部分のみを見ていたと思います。でも、一緒に暮らしていて、何か辛いものを抱えていると思っていたけど、知ることが出来なかったのかなと思いました。だから、すみれの事が忘れられず、本当のすみれを知りたかったと思ったのかなと思います。
震災とか、事故とか、ある日突然に襲って来て、目の前から好きな人がいなくなってしまうことってありますよね。誰もが経験することだし、死んでしまったら何処に行ってしまうのか、誰も解らない。死はいつも身近にあるけど、一番理解が出来ていない事だと思います。だからこそ、自分で何か理屈をつけて、解決していくしかないんじゃないかなと思うんです。だって、どんなに足搔いても、死から逃れる事は誰も出来ないのだから、受け入れるしかないじゃないですか。生きている人間が、自分で納得するしかないんです。仕方ないんですよ。
すみれは、きっと、突然、死が訪れるとは思っていなかっただろうと思います。未来を考えていたのだろうと思うけど、それは誰も解らない。真奈が、いくら、すみれは生きていると思っていても、もう、戻ってこないんです。どこかで区切りを付けないと、何も変わらないですよ。変化を受容れないと、と思いました。
とっても雰囲気の良い映画で、すみれの本当の気持ち、真奈がすみれを思う気持ち、そんな2人の外にいる遠野の気持ち、色々と考えてしまいました。私には、この映画は、深い恋愛映画に見えてしまい、感動でした。浜辺さんと岸井さんが素敵で、良かったです。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。とても微妙な映画なので、観る人によって、全く感想が違うかなと思いました。私は、恋愛映画として観たので、結構、感動して、素敵だなと思ったのですが、そう読み取らなかった場合は、どう見えるのか、ちょっと解りませんが、映像も美しく、俳優さんも良かったので、私は気に入りました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「やがて海へと届く」