「中村屋酒店の兄弟」を観てきました。
ストーリーは、
数年前に家を出てひとり東京で暮らす和馬は、親が経営していた酒店を継いだ兄の弘文のもとへ帰ってくる。数年ぶりに訪れる実家は当時のままの温かさと懐かしさに包まれていたが、その一方で確実に変わってしまったものもあり・・・。
というお話です。
ラジオ番組にて。
中村屋酒店の家族はとても仲が良く、息子二人は、父親と連れ立って釣に行くのが日課だった。そんな息子たちも成長し、次男の和馬は東京への憧れを兄に話始める。兄・弘文は、自分は店を継ぐと決めており、弟を送り出す。
数年後、父親は亡くなり、母親は認知症を患い、弘文は一人で面倒を見ていた。酒店は弘文が順調に経営しており、小さな町ながら何とか暮らしていた。
ある日、数年前に家を出てひとり東京で暮らしていた和馬は、兄の弘文のもとへ帰ってくる。数年ぶりに訪れる実家は当時のままの温かさと懐かしさに包まれていたが、その一方で確実に変わってしまったものもあった。
母親の認知症は酷く、弘文の事も解かっていないようだ。しかし、突然に帰ってきた和馬の事は思い出して名前を呼んだ。昔の事は覚えているらしい。
和馬は弘文に、実は結婚しようと思っている。だから俺が帰って来て酒店の仕事をするから、兄ちゃんは好きな事をしてくれと話し出す。若い頃に出て行ったきりだったので、今度は自分が家を見るから、縛られなくて良いと言いたかったようだ。
しかし、ある事件の報道を見た弘文は何かに気が付き、おかしな行動を取り始める。後は、映画を観てくださいね。
この映画、面白い試みだなと思いました。映画としては、45分しかありません。そして、映画の前に、ラジオ番組として朗読劇があります。短い朗読劇なのですが、中村屋酒店の歴史が描かれていて、昔の主人公たちの生活が描かれているんです。そして、映画に入っていくと、その朗読劇の内容が、自分の中で全て映像に置き換わって、凄く長い映画を観た気持ちになるんですよ。不思議な感覚でした。声だけなのに、頭の中に映像が見えるんです。モノクロ映画がカラーに見えてくるような感じに似ているかな。
若い頃に東京に行ってしまった弟と、地元で実家の酒屋を継いで、黙々と仕事をしてきた兄。弟は、全て兄に押し付けて、東京に出てしまった事を負い目に感じて、兄を自由にしてあげたいと思って帰ってきたんだろうという感じで始まり、これからは、兄弟仲良く酒屋をやっていけたら良いのになぁと感じながら、ほっこり観ていると、どんどん雲行きが怪しくなっていくんですよねぇ。
本当はどうだったのか、観る人によって解釈は違うとは思いますが、面白い展開だなぁと思いました。これだけの短い作品なのに、2時間映画以上の満足感を与えるほど、展開が上手いんです。無駄な部分を削いで、シャープに重要部分だけを繋げていくので、観ている方が飽きないんですよ。田舎町のほっこりした雰囲気の中に、不穏な空気が流れて、今まで見ていた風景が、全く変わって見えてくる。それが面白いんです。
短い作品なので、あまり感想を書いてしまうとネタバレになってしまうので、書けないのですが、うーん、本当に面白かった。役者さんたちも、上手かった。出演しているのは、ほとんど、和馬役の藤原さんと、弘文役の長尾さんで、兄弟の雰囲気も良いんですよ。そして2人が営んでいる酒屋が、昔ながらの木戸の酒屋で、その昔は、こんなお店あったよなぁという感じで、懐かしかったです。今は、木戸の店なんて作れませんからね。
それにしても、和馬が帰ってきた、本当の理由は何だったのかなぁ。どうしたかったのかな。本当に弘文と一緒に酒屋を細々とやりたかったのか、それとも懐かしくて少しでも一緒に過ごしたかったのか、それとも・・・。色々考えてしまいました。きっと、東京で、和馬にも色々な事が起きて、弘文に話せないような事も沢山あるのだろうと思いました。それでも、会いに来たかったのだろうし、家族だからなんだろうなって思いました。
凄く良い映画なんだけど、実は本当は良い話じゃないかもしれない、あまり詳しく書けないのが残念ですが、やっぱりこのお話は、何も知らないで観に行っていただいた方が面白いと思いますので、ネタバレはしません。
私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。この映画、面白いです。映画って、長ければよいんじゃなくて、やっぱり構成の仕方なんだなって感心しました。映画好きな方には、ぜひ観ていただきたい作品だと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「中村屋酒店の兄弟」