「ニトラム」オーストラリアの無差別銃乱射事件を元に作られた作品です。リアルで考えさせられます。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「ニトラム」を観ました。

 

Fan’s Voice独占最速オンライン試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)。

 

ストーリーは、

1990年代半ばのオーストラリア、タスマニア島。観光しか主な産業のない閉鎖的なコミュニティで、母と父と暮らす青年。小さなころから周囲になじめず孤立し、同級生からは本名を逆さに読みした「NITRAM(ニトラム)」という蔑称で呼ばれ、バカにされてきた。何ひとつうまくいかず、思い通りにならない人生を送る彼は、サーフボードを買うために始めた芝刈りのアルバイトで、ヘレンという女性と出会い、恋に落ちる。しかし、ヘレンとの関係は悲劇的な結末を迎えてしまう。そのことをきっかけに、彼の孤独感や怒りは増大し、精神は大きく狂っていく。

というお話です。

 

 

発達障害の診断を受けたニトラムは、オーストラリアのポートアーサーで両親と一緒に暮らしています。子供の頃から花火で遊ぶ事が好きで、毎日のように花火で遊んでいると、近所から苦情を言われ、花火を母親から禁止されてしまいます。

父親は、近くの別荘地にコテージを購入し、そこで観光業を始めようと考えていました。それなら息子も仕事が出来ると考え、銀行の融資もOKが出るようで、準備を進めていました。息子にも話し、とても幸せそうでした。



 

潔癖症で厳格な母親は、サーフボードが欲しいというニトラムに買い与えず、ニトラムは近所の芝刈りのアルバイトでお金を稼ごうとします。すると、大きな家に住んでいるヘレンという女性が芝刈りを頼んでくれますが、芝刈り機が壊れてしまいます。困っているニトラムを見て、その女性は、芝刈りではなく、犬の散歩をしてくれたら賃金を払うと言ってくれます。

孤独なヘレンは、実はお金持ちで、ニトラムが家に来てくれるようになり、明るくなっていきます。ニトラムも彼女との出会いで、両親とだけの生活が変わっていきました。煩い事を言う両親との生活に不満が募ったニトラムは、ヘレンの家に同居させて貰うようになり、ヘレンもそれを了承しますが、彼が銃を持っている事に怒り、銃を使わないと約束をさせます。



 

ニトラムは自分の誕生日に、ヘレンをニトラムの両親に紹介します。母親はヘレンに結婚を考えているのかと聞きますが、そういう関係ではないとヘレンが説明します。すると、母親は、ニトラムが発達障害で苦労をした話を彼女にします。きっと、同じ覚悟があるのか聞きたかったのでしょう。

その後、父親が購入しようとしていたコテージが他の人に売られてしまい、父親は落ち込んで寝込んでしまいます。ニトラムは、そんな父親を見ていられず、ヘレンとどこかへ旅に出たいと言い出し、アメリカへの旅を計画します。しかし・・・。後は、映画を観てくださいね。


 

この映画は、オーストラリアの実際にあった事件を元に作られています。1996年4月28日日曜日。タスマニア島、ポート・アーサーで無差別銃乱射事件が発生。死者35人、負傷者15人。当時28歳の単独犯の動機が不明瞭であることも拍車をかけ、新時代のテロリズムの恐怖に全世界が騒然となった。という事件です。

 

恐ろしい事件なのですが、この映画で描かれているのは、発達障害の男性が、周りとの関係で段々と壊れて行ってしまう姿が描かれていました。思ったのですが、これは発達障害だからこういう事件を起こしたのではなく、味方がいなかった孤独な男性が、壊れてしまったのだと思います。たまたま、発達障害があっただけで、この両親と環境では、こうなる事もあり得るよなと感じました。

 

 

まず、母親が厳格なんです。部屋を見れば解りますが、完璧に掃除をして、自分たちが寝転がるソファには、ビニールを張っているんですよ。くつろぐためのリビングのソファですよ。何のために購入したの?自分たちがくつろぐためじゃないの?って言いたくなりました。

 

時々、日本でも見ますが、車でビニールを付けたまま乗っている人。変ですよね。自分が購入して、自分がくつろぐための空間なのに、何でビニール?まるで自分が汚いからって言っているようなもんじゃないですか。自分が欲しくて買ったのだから、好きに使って、汚れたら買い替えればよいでしょ。汚れるのが嫌なら、元から買わなければ良いんです。そんな母親なので、ニトラムに対しても、冷たいんですよ。息子を愛しているとは思うのですが、その愛は全く伝わらないんです。

 

 

それに対して、父親はとてもニトラムに優しいのですが、息子の問題点を見ないようにしている父親です。ですから、息子の教育は出来ないし、怒らなきゃいけない事は母親任せなんです。だから、母親も段々と壊れてしまう。この父親は、とっても弱い人なんです。一つ失敗してしまうと、もう次に進めないような、そんな父親でした。

 

そんな両親の元で育ったニトラムは、それでも素直で良い子だったと思います。花火が好きだったりするのは、子供の時に注意をして、ルールを決めてあげれば良かっただけなのに、それが出来ていないんです。花火をするなら、一人ではしない、1つづつゆっくりやる、人に向けないなど基本を教えれば、問題は無かったと思いました。

 

 

その証拠に、ヘレンと出会ってからは、車に乗る以外は、安定していて問題無かったと思います。車に乗ると興奮してしまうようでしたが、これも、教育すれば良いことだったのではと思いました。動物には優しかったし、色々な事が理屈立てて出来ていましたから。

 

それが、全て壊れてしまった時、ニトラムは自分をも壊してしまいます。恐いけど、私は、気持ちは解らないでもないんです。だって、自分の世界が無くなってしまったら生きている意味が無いですもん。でも、理解が出来ないのは、他人を巻き込むという事です。それに何の意味があったのか、だって、誰もがニトラムに冷たかった訳じゃないしね。その部分は、自分勝手な行動だし、”甘えてんじゃねーぞ!”って言ってやりたくなりました。

 

思ったのですが、社会の常識と自分が思っている事でも、他人には常識じゃない事も多いし、もっと人の話を聞くべきじゃないのかと考えました。映画館でも周りが煩いと直ぐに煩いと言う人がいるけど、楽しみに映画を観に来ている人もいるんですよ。上映中に話すのはダメだけど、売っているポップコーンを食べたり、飲んだりは普通でしょ。音が気になるなら、家で観れば良いんです。

 

 

この映画でも、花火が煩いと騒ぐ近所の方も、話し合って一緒に花火をやる日を作れば良かった事だし、母親も息子が言っている事を、もう少し理解しようと聞くべきだし、銀行だって、不動産屋だって、誰もが自分の利益だけを追求しているから、こんな事が起こるんじゃないのかな。現代人に必要なのは、コミュニケーション能力なのかなと思いました。これが欠けている人って多いですよね。特に、コロナ禍になってから、そう思うようになりました。

 

最後に、主演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズさん、凄かったです。”アンチヴァイラル”でも独特な役を演じていて、”ニューヨーク 親切なロシア料理店”では優しい青年を演じていて、今回も、壊れていく姿が上手いなぁと思いました。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。酷い社会状況の中で、で、弱い人間がどんどん壊されて行ってしまうという事が描かれていて、どこか弱い人間を助ける防波堤になるような場所が無いのかなと思いました。ロッテントマトでも、とても良い評価のようです。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「ニトラム」