「Ribbon」を観てきました。
ストーリーは、
コロナ禍の2020年。美大生の"いつか"は大学の卒業制作展が中止となり、1年かけて制作した作品を持ち帰ることに。様々な感情が渦巻いて何も手につかない彼女は、心配してくれる両親とも衝突してしまう。妹の"まい"もコロナに過剰反応し、普段は冷静な親友の平井も苛立ちを募らせている。そんな中、絵を描くことに夢中になるきっかけをくれた田中との再会や、平井との本音の衝突によって心を動かされたいつかは、自分の未来を切り開くため立ち上がる。
というお話です。
コロナ禍の2020年。
"いつか"が通う美術大学でも、その影響は例外なく、卒業制作展が中止となった。悲しむ間もなく、作品を持ち帰ることになったいつか。いろいろな感情が渦巻いて、何も手につかない。
ある日、母が心配して部屋に来てくれる。何も手につかなかったいつかの部屋は、酷く散らかっていて、娘の性格を知っている母は片付けに来てくれたのだ。部屋を片付け、食事を作ってくれて、食事を始めたいつかは、自分の卒業制作の絵が無いのに気が付く。母親にどうしたのかと聞くと、ゴミだと思って捨てたという。まだ制作中だったいつかは激怒し、母親に帰れと言ってしまう。
次の日、今度は父親が現れて、母親と仲直りして欲しいと言って帰り、次の日、妹の”まい”が現れる。いつかは、何でバラバラに来る訳?と聞くと、「そりゃ、密を避けるためでしょ。」というまいに、何も言い返せない。まいと公園に散歩に行くと、怪しげな男性がいる。以前からいつかは不審に思っており、まいに話すと、どこかで見たような人だけどと言う。
その後、いつかが一人で散歩に行くと、不審に思っていた男性が声をかけてくる。田中と名乗り、中学の同級生だった事を思い出す。彼がいつかの絵を褒めてくれた事から、いつかは絵の道に進み始めたのだった。
沈んでいた心が少し回復したいつかだったが、連絡が付かなかった平井から電話があり、大学に忍び込んで絵を描いていたと聞き、激怒してしまう。しかし、平井が自分の絵を大学から持ち帰りたいと懇願する声を聞き、ある作戦を実行に移す。
コロナ禍での沢山の出来事と出会いを経て、いつかは、未来をこじ開けなきゃという気持ちに辿り着く。後は、映画を観てくださいね。
のんさんの監督主演作品です。実は、あまり期待しないで観に行ったのですが、とてもよく出来ていて、驚きました。こういう才能のある方だったんですね。コロナ禍で、とにかく、誰もが、どうしてよいのか解からない時期に、大学卒業というイベントに当たってしまい、作っていた卒業制作も展示会が中止になり、就職もどうなるのか解からない、家で待機している間に卒業になってしまいそうな状態で、何もやる気が起きなくなってしまう。いや、やる気はあっても、外に出れず、何も出来ないという状態のなか、混乱する主人公の姿は、とてもリアルに映りました。
本当に、あの時期、こんな感じだったと思います。外に出たいけど、友達と会いたいけど、どこに病原菌がいるのか解からない、恐ろしい、コロナに感染したら死ぬと思っていたんですから、そりゃ、情緒不安定になるし、特に大学4年生なんて、可哀想だったと思います。4年生だと、ほとんど学校に行かないと言われてしまうかもしれませんが、私も美大だったから解るけど、美大生は卒業制作に必死で取り組んでいるんですよ。一般の方々とは違い、卒論を出して終わりではないので、ここら辺が、ちょっとキツい部分であり、楽しい部分でもあるんです。
大体、誰もが、最後に自分がやりたい事をこの卒業制作にぶつけるぞーって感じで入れ込むので、それを発表する場が無くなり、先生に審査はされても、誰にも見られずに壊すだけというのは、辛かっただろうなぁ。観ていて、本当に辛さが分かりました。でも、きっと、リアルな姿だろうと思います。美大生はこんな状態で卒業したんでしょうね。うーん、可哀想でした。主人公の”いつか”は、自分の卒業制作の絵は、持って帰れる大きさだったので、まだ良かったと思いましたが、友人の平井さんは、壁画ほどの大きさがあったので、諦めるしか無かったのでしょうね。自分の描いた絵を壊すって、子供を殺されると同じ感覚だと思うので、身を切られる思いだったと思います。
いつかは、家に絵を持って帰ってきて、まだまだ描き入れようと思っていたのだと思いますが、どうしても筆が進まないんです。だって、自粛で外に出れないし、友人とも会えない。家族とだって、団らんが出来ないような状態で、その卒業制作の絵を続けて描いたからって、どうなるの?と思ったら、そりゃ、やる気は無くなりますよ。
あのコロナが広がって、感染者が100人を超えたとか言っていた時は、本当に怖かった。どんな恐ろしい病気か判らなかったし、有名人があっという間に死んでいき、感染したらおしまいかもって思ったものです。最近は、東京で1万人以上と言われても、そんなに驚かなくなりましたが、最初の頃は、大変でしたよ。この映画は、そんな時期を想定して作られているようで、誰もが過剰反応でコロナ対策をしている事が描かれていて、ちょっと笑えて面白かったです。さすがに、”さすまた”を持ち歩いて、ソーシャルディスタンスと言っていたお父さんには大笑いしました。
途中で、部屋の中でいつかが落ち込んで泣き叫ぶ場面があるのですが、これ、本当に気持ちが伝わってきました。だって、誰も悪くないのに、コロナが蔓延した為に、全てが壊れて行ってしまっていて、抗いようがないという状況で、叫ぶしかないんです。いやぁ、解りますよ。きっと、みんな、こんな状況になっていたと思います。私もそうでしたもん。
あの時期のリアルな心理を、本当に良く描いてくれていたと思いました。それに、映像が美しいんです。ちょっと、一部分、リボンがうねうねしている部分がキモち悪いかなって思ったけど、ふわふわと浮いているリボンや、いつかの柔らかい心を表している部分は、とても良かったと思いました。
そして、同級生の田中君との交流も、ちょっと控えめだけど、心は通じているんだねって感じで、素敵でした。普通に暮らしていたら、そんなに簡単に恋愛は生まれませんよね。だけど、良い友達だなって思って、お互いに幸せになるのは、こんな感じであると思うんです。その辺りも、とてもリアルで、温かい作り方になっていました。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。のんさん、色々な才能をお持ちのようで、これからも色々な場面で活躍してくれそうな予感がしました。そういえば、映画の中に、岩井俊二監督が出演されていましたよ。1場面だけだけでしたけどね。岩井監督にも可愛がられているのかな。素敵な作品を、また作って欲しいです。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「Ribbon」
↓ のんさんの初監督作品です。