「マヤの秘密」を観てきました。
ストーリーは、
1950年代のアメリカ郊外。かつてナチスの軍人だった男から戦時中に暴行を受けたマヤは、街中で偶然その男を見かけ、復讐心から男を誘拐。夫のルイスの手を借りて自宅の地下室に監禁する。マヤは殺したい気持ちを抑え、男に罪の自白を求める。しかし、男は人違いだと否定し続ける。
というお話です。
1950年代後半、アメリカ郊外の街。アメリカ人の医者の夫とルーマニア出身のマヤは、幸せに暮らしていた。ある日、マヤは、街で男の指笛を聞いた瞬間、“ある悪夢”が蘇ってくる。最近、近所に越してきたその男は、戦時中に自分を暴行し、妹を殺したナチスの軍人で、マヤがいまでも悩まされる悪夢の元凶だった。
マヤは、今まで、自分がロマ族で暴行にあった事実を夫に話す事が出来なかったが、男を見つけた事で決断をする。マヤは復讐心から男を殺そうと誘拐し、夫・ルイスの手を借りて地下室へと監禁するが、トーマスと名乗るその男は人違いだと主張し続ける。記憶がおぼろげなマヤは、男を殺したい気持ちと同時に、ただ事実を知りたいと罪の自白を男に強要し続ける。
一方、男のほうもマヤの話を否定し続けるものの、何かを隠しているような表情をみせる。マヤを信じたい夫は、妻の狂気じみた行動と知らなかった秘密を知り、真実を突き止めようと奮闘する。
さらに、監禁された男の妻は、夫の安否を心配しながらも、自らの素性を話さなかった夫への不信感を募らせる。それぞれの秘密が明らかになるにつれ、新たな疑念が生まれる。何が真実なのか? 彼女の悪夢は《妄想》か? 《現実》か? 後は、映画を観てくださいね。
暗くて嫌な映画でした。あ、でも、映画としては素晴らしいのかな。だって、主人公マヤの気持ちを考えれば、暗くなるのは当たり前ですから。結構、最初の方は、ジェットコースターのように進みません。良くあるのは、主人公の幸せな生活をこれでもかって見せつけてから、不幸に突き落とすでしょ。でもね、この映画は違います。始まった時から、マヤの顔には暗い影が見えて、不安を抱えているんだなという事が解るんです。そして、彼女の苦しみの元凶である人物が直ぐに現れます。いきなりなの!と思ってしまいました。
マヤは公園で、聞いたことのある指笛と声を聞きます。まさかと思いながらも、知っている声を追って行き、よく顔を見ると、あの夜の男だと確信します。これ、凄い勇気があると思うけど、自分をレイプした犯人の後を付けるって、恐いですよね。誰か一緒に行ってくれるならまだしも、一人で行って、捕まったりしたらとか思わなかったのかな。絶対に復讐してやるという意志が強かったのでしょうね。そして、復讐の為に、この男を拉致します。その拉致の仕方も凄かった。やるなぁ~って思っちゃいました。結構、酷いやり方でした。
そして殺そうと思うんだけど殺せず、拘束して家に連れ帰るんです。家の地下に監禁して、戦争時に行ったレイプの事を思い出せと問い詰めるんだけど、自分は戦争に行ってないから解からないと言うんです。彼はスイス出身で、役所勤めをしていて、戦争には行っていないという経歴もあり、名前も、マヤが聞いた”カール”という名前とは全く違います。人違いだと訴える男に、マヤは、絶対にあなたですと言い張り、夫は判断がつかなくなります。男が嘘をついているのか、マヤがノイローゼ気味で、妄想に取りつかれているのか、分からないんですよ。
この真実はどうなのかという事を探っていく過程が辛かったなぁ。とにかく、男が人違いですと言い張るので、観ている方も、人違いかもしれないなぁと思い始めちゃうんです。だって、15年も前の事件だし、暗闇での話だから判らないでしょ。マヤは、狂ったように”こいつだ、こいつだ”って言い張るけど、どーも話がおかしいかなって思い始めるんです。その辺りの誘導が上手いなぁと思いました。
普通に暮らしている夫婦が、ある日、突然、復讐者となって、誰かを拉致監禁して尋問することになってしまうという、恐ろしい展開のお話でした。まだ、この時代は、戦争による爪痕が強く残っていたのだという事が解ります。
やられた方は、その苦しみを忘れる事は絶対に無いと思いますが、やった方は、簡単に忘れてしまうのかなぁと思っていましたが、この映画の中では、やった方もその罪に苦しんでいるという姿が描かれていました。まぁ、考えてみれば、正常な人間なら罪悪感があるので、良心の呵責に苛まれるはずだとは思いますが、近年、罪悪感や良心の呵責なる単語が、死語のようになってきている世の中なので、とても怖いです。
人間の精神が劣化してきたのですかねぇ。日本人は、悪い事をしたら謝りましょうという文化を子供たちに継承してきたと思うけど、そうでない近隣諸国が多いですもんね。これだけ人種が混じって行けば、そりゃ、良心という心の部分が劣化して減ってしまい、罪悪感が失われていくのは当たり前なのかもしれません。でも、嫌ですねぇ、隣人を疑わなければならない世の中なんて、悲しいです。
マヤは、ルーマニア出身のロマ族だったようなのですが、第二次世界大戦では、ユダヤ人以外のジプシーのようなロマ族たちも、迫害されたようです。確か、同性愛の方々も迫害されたのでしたよね。なんだか、自分たちと違うものは全て排除するという考え方って怖いです。でもね、私だって、考え方の違う人と喧嘩になったり、二度と近づかないと絶交したりという事が人生の中でいくつかあるので、そういう些細な事が大きくなると恐い事になるんだなと思いました。だから、喧嘩しても、悪口を言っても、これ以上は止めておこうという精神的なストッパーみたいのを誰もが持ち合わせないと、ロシアとウクライナみたいに、戦争になっちゃうのかな。やっぱり、プーチン大統領、ちょっと変ですよ。何かおかしい気がします。
この映画、そんなに多い内容がある訳ではないのですが、誰もが戦争でおかしくなって、その苦しみ痛みを長い間抱えて生きていたのだという事が解る内容でした。そして、その痛みが恐ろしい方向へと向いてしまう事もあるんだなという事が描かれていました。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。楽しい映画ではありませんが、考えさせられる深い映画でした。暗くて、辛い内容ですが、この時代の人々は、そんな苦しみを心に秘めて、生きていたのだと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「マヤの秘密」