「白い牛のバラッド」裁判で冤罪を生みだしてしまったら、裁判官は個人で責任を問われるのだろうか。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「白い牛のバラッド」を観てきました。

 

ストーリーは、

テヘランの牛乳工場に勤めるシングルマザーのミナ。夫ババクは殺人罪で逮捕され、1年ほど前に死刑に処された。今は聴覚障害で口のきけない愛娘ビタを心の拠りどころにしている。ある日、裁判所に呼び出され、夫の事件の真犯人が他にいたことを知らされる。冤罪判決についての謝罪を求めるミナだったが、死刑を宣告した担当判事に会うことさえかなわない。そんな折、ミナのもとに夫の友人だったという男性レザが訪ねてくる。親切な彼に心を開き、家族のように親密な関係を築いていくミナだったが・・・。

というお話です。

 

 

テヘランの牛乳工場で働きながら耳の聞こえない幼い娘ビタを育てるミナは、1年前に夫のババクを殺人罪で死刑に処せられた。夫の死から1年経とうとしているが、今なお喪失感に囚われている。

ある日職場に、突然裁判所から電話がかかってくる。裁判所に来て欲しいと言うのだ。夫の弟と一緒に裁判所で説明を受けると、信じがたい事実を告げられる。ババクが告訴された殺人事件は冤罪だったというのだ。

事件の第一証人が、真犯人は第二証人だと訴え出て、再精査した結果、第二証人が真犯人だったというのだ。あまりの出来事に泣き崩れるミナ。冤罪で処刑されたという事で賠償金が支払われることとなるが納得できないミナ。



 

裁判所へ行き、担当判事アミニへの謝罪を求めるが門前払いされてしまう。理不尽な現実にあえぐミナに救いの手を差し伸べたのは、夫の旧友と称する中年男性レザだった。夫から話を聞いたことは無かったが、結婚前に夫にお金を借りて返していなかったからと大金をミナに渡してくれる。やがてミナとビタは、親切なレザと家族のように親密な関係を育んでいく。しかしレザはある重大な秘密を抱えていた。

やがてその罪深き真実を知ったとき、ミナが最後に下した決断とは・・・。(公式HPより) 後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、衝撃的な内容でした。主人公のミナは、夫を亡くして一人で聴覚障害を持つ娘・ビタと暮らしています。夫の話は、あまり出てきませんが、話から察すると、以前は良い仕事をしていて、裕福だったように見えました。でも、何かの言い争いがあり、夫は相手を殴って逃げた様なんです。相手が死んでしまったので、殺人罪に問われて死刑になったんです。それが1年前の事。

 

そしてそろそろ一周忌という時に、裁判所から連絡があり、夫が殴ったところを見ていたという証人の男が証言を覆し、夫が殴った後、倒れた男に借金があった第二証人の男が殴って殺したらしいんです。第一証人も借金があったので、第二証人と結託して証言をしたようなのですが、お金の事で揉めて、裁判所に真実を訴えたらしいんです。調査の結果、夫は冤罪だった事が証明されたのですが、既に処刑は終わっているんです。

 

 

ここで問題なのが、判事たちは、夫が無罪を主張したのに、殴って逃げたのだから生きている事を確認しなかったのだろうといい、お前が殺したんだと言い続け、本人に信じ込ませてしまった事なんです。そして本人が自分がやったと自白し、犯人とされてしまったんです。ちょっと酷いですよね。やっていないと言い続けているなら、証言だけでなく、物証も出して、調べないとダメです。イランって、その辺りはどうなっているのかしら。

 

そんな前提があり、ミナは判決を出した主席判事に謝れと裁判所に訴えに行ったり、謝罪を求める新聞広告を出したりするんです。でもね、これも間違っているような気がするのですが、確かに間違った判決を下してしまったのは悪いけど、それを責めてしまったら、誰も裁判官なんてやらないと思うんです。裁判官たちも、出てきた資料しか判断材料は無いし、判決を出す日程も決まっていて、白か黒か、どちらか決めなければならない。

 

 

もちろん、人の命を左右するのだから、慎重に判断してもらわないといけないけど、もし、間違えてしまっても、個人に責任は取らせられないですよね。出来る範囲で判断して黒としたのに、与えられた情報が間違っていたとなったら、どうしようもないでしょ。黒と判断した裁判官に罪は無いと思います。だからこそ、裁判所は謝罪をしたけど、個人では謝罪は出来ないというのは当たり前の判断だと思いました。それは、どの社会でもです。もし、個人に責任をというなら、裁判員制度なんて、恐くて、絶対に出来ないでしょ。なので、冤罪で死刑になってしまったのは問題だけど、判事の責任を追及するミナも、酷いなと思いました。

 

そんなミナの前に、夫の友人と名乗る男性が現れて、援助を申し出てくれます。この人、ある秘密を抱えているんだけど、それはネタバレになるので言いません。夫の友人と言うけれど、夫が生きている間に訪ねてきた事は無く、まぁ、他人ですよね。ちょっと驚いたのは、ミナが、訪ねてきた友人である男性を家に入れて、お茶を出しただけなのに、未亡人が男を家に入れたからと言って、アパートの大家が強制退去を命じるんです。おいおい、それじゃ、宅急便屋が荷物を中に運んでくれてもダメなんかいっ!って思っちゃった。夫の友人と言われたら、家に入れて、話しくらい聞きますよね。イスラムっておかしな考え方なんだなって思いました。

 

 

アパートを追い出されたミナを助けたのも、友人のレザです。使っていない家があるから、そこを貸しますと言ってくれるんです。藁にも縋るように、レザが提供してくれた家に引っ越して、賃貸契約を結びます。ここでもイスラムの考え方が鍵になるのですが、賃貸をしようとすると、未亡人、シングルマザー、は嫌がられるようなんです。男性上位の社会なので、女性相手に貸すのは嫌なんでしょうね。

 

レザという男性は謎なのですが、良い仕事に就いていて裕福なようで、良い家に住んでいました。そして息子がいるのですが、折り合いが悪く、息子は兵役に行ってしまいます。父親に、一緒に居たくないからという言葉を残して出ていくんです。色々、問題がありそうでしょ。親子の事に関しては、ほとんど説明がありませんが、妻もいないので、何かあったのでしょう。

 

 

そうそう、もう一つ、疑問に思った事があったのですが、冤罪で死刑になったババクの親族に賠償金が支払われることになります。確かに大きな金額でしたが、10年後くらいに貰えるとかなんとかいう話があって、はぁ?10年後?って思いました。夫が死んで、今、苦しんでいるのに、10年後にお金払いますとか言われても、今苦しいんだよって事ですよ。考えられないと思いました。そんな事もあり、ババクの父親である義父がミナを訴えて、娘・ビタの親権を取ろうとするんです。障害を持ってるので、障害者支援金が出るようで、それ狙いなのかな。何処までも、お金という感じで、嫌だなぁと思いました。

 

そんなこんなで、色々な事があり、ある事実が発覚するのですが、ミナは、どんな決断をするのか。ラスト、私はドキッとしましたが、まぁ、どう解決しようとも、スッキリはしないだろうなぁと思いました。辛い決断ですよ。ちなみに、牛は通常生贄の代名詞であり、白いので無実という事を表しているのかなと思いました。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。これ、イスラム社会の中での話なので、特殊な感じはしますが、裁判で冤罪が出た場合にどうなるのかというのは、日本でも同じことなので、凄く考えさせられました。裁判員制度は、本当に怖いですね。選ばれて、裁判で出した答えが間違っていたら恨まれたりするのかもしれないし、もし正しくても、受刑者が出てきたら逆恨みをされるんじゃないかとか思うと、本当に怖いです。色々と考えさせられる映画なので、ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「白い牛のバラッド」