「ウエスト・サイド・ストーリー」を観てきました。
ストーリーは、
1950年代のニューヨーク。マンハッタンのウエスト・サイドには、夢や成功を求めて世界中から多くの移民が集まっていた。社会の分断の中で差別や貧困に直面した若者たちは同胞の仲間と集団をつくり、各グループは対立しあう。特にポーランド系移民の「ジェッツ」とプエルトリコ系移民の「シャークス」は激しく敵対していた。そんな中、ジェッツの元リーダーであるトニーは、シャークスのリーダーの妹マリアと運命的な恋に落ちる。ふたりの禁断の愛は、多くの人々の運命を変えていく。
というお話です。
ニューヨーク、ウェストサイド・マンハッタン。ポーランド系アメリカ人少年で構成されている非行グループ・ジェット団は、最近になって力をつけてきたプエルトリコ系アメリカ人の非行グループ・シャーク団と、敵対関係にあった。一触即発の状況が続く中、我慢の限界を迎えたジェット団リーダーのリフは、シャーク団と決着を付けるため決闘を申し込むことに決め、元リーダーで親友のトニーを連れて中立地帯のダンスホールで開かれるダンスパーティーに出席する。
そこでトニーは、初めてのダンスパーティーに期待で胸を弾ませていたマリアと出会い、2人は恋に落ちる。しかし、マリアはシャーク団リーダーのベルナルドの妹だったため、トニーはベルナルドの怒りを買ってしまう。トニーは自宅に連れ戻されていたマリアを探し、彼女が働く洋服店で再会する約束を交わす。
一方、決闘の方法を巡って対立するリフとベルナルドは、一対一の素手による決闘を決めるのだが、双方とも決闘用にナイフを用意し、万が一の時にはグループ全員で戦うことを仲間と示し合わせる。翌日、洋服店で再会したトニーとマリアは将来結婚することを誓い合う。その後、マリアは決闘を止めさせるようトニーに頼み、彼は決闘が行われている場所に向かう。
既に決闘は始まっており、トニーは必死に止めようとするがベルナルドは聞き入れず、ナイフを取り出して襲いかかる。それに対抗してリフもナイフを手に戦うが、トニーをかばってベルナルドに刺されてしまう。激怒したトニーは、ベルナルドを刺し殺してしまい、それをきっかけにグループ全員が戦い始める。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。
この映画は、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」を基に、現代版として描かれたミュージカル作品で、それを、スティーヴン・スピルバーグが映画化しました。1961年にも、一度、映画化をされているようです。何となく、観たことがあるような気がするのですが、TVでやっていたのかな。よく覚えておらず、今回の映画化で、やっと、全部のストーリーを知ったような気がしました。ミュージカルを観に行こうと思いながら、まだ、観に行けて無かったんです。
内容は、もう、ホントに、映画の教科書になりそうなほど、真っすぐで、美しく、キャストも音楽も最高で、テンポも良くて、文句の付けようがないものでした。全く、粗が見つからないんです。よく、映画の紹介などで流れるモノクロのウエスト・サイド・ストーリーに、カラー着色をしたような、昔の映画を壊さずに、良い部分を引き継いでいるように見えました。
完璧な音楽とダンスは観ているこちらもワクワクさせて、テンポの良さによって、気持ちよく映画に入らせてくれました。ミュージカル映画として作っているので、観る方も、映画というよりもミュージカルを楽しむという気持ちで観に行っているので、本当に楽しかったです。
トニーとマリアが出会い、ジェット団とシャーク団の闘いが本格化し、どうにも止められなくなってしまい、二人の愛は引き裂かれて、となるのですが、ロミジュリとちょっと違っています。ま、でも、物語に関しては、昔から知られている内容なので、目新しくはありませんよね。何処までも能天気に恋に陥った二人と、彼らの周りの状況が違い過ぎて、悲劇になってしまうのは、今も昔も変わりません。
でも、スピルバーグ版のウエスト・サイド・ストーリーは、街全体を舞台のように使っていて、そこで踊ることによって彼らの生活を描き、移民たちの苦しみや、それぞれの問題を訴えていました。この時代のニューヨークは、それぞれの移民が、自分たちの住む場所を主張していたようなんです。なので、プエルトリコ系はこの地域に住み、ポーランド系はこちらの地域に住むという住み分けが自然と出来ていたようですが、どうしても、地域がかち合う部分が出てきてしまう。その上、ニューヨークは再開発真っ只中で、古い建物に住む人々を追い出していたんです。
丁度、時代が変わる時代に、そこから簡単には動けない移民たちの苦しみは、ストレスとなって、隣に住む移民たちに向けられたのかなと思いました。同じ移民なんだから、仲良くすれば良いのに、そういう事が出来ないようでした。でも、明日は我が身で、同じように立ち退きを迫られることになるのにね。
それにしても、色の使い方があまりにも美しくて、目が離せませんでした。これ程にカラフルな色を使いながら、全く下品にならないというのが、スピルバーグ監督ですね。鮮やかな色の衣装を身に付けて街をダンスするプエルトリコ系の移民たちが、太陽の光に照らされて輝いて見えていると思ったら、夜の帳の中、愛し合う二人だけを照らす灯りが優しい空気を醸し出していたりと、場面の濃淡が上手くて、まるで美術館で絵を見ているような気分にさえなりました。
うーん、この映画は、褒め言葉しか出てこないので、感想が単調になってしまいます。本当に、映画の教科書のような映画でした。これこそ、エンターテインメント作品というような映画でした。主役のアンセル・エルゴートさん、良い作品に出ているのですが、あまりパッとしないタイプかなと思っていたけど、今回、カッコ良かったですね。そして、レイチェル・セグラーさん、とっても可愛くて、歌もダンスも上手くて、素敵でした。
一つだけ、文句をひねり出してみると、ロミジュリというと、レオナルド・ディカプリオとクレア・デインズの映画があまりにも美しくて、豪華で、優雅がだったのですが、それと比べると、どうしてもプエルトリコ系とポーランド系の移民という部分で、裕福な人々のお話と言うのに対して、貧困層の話となっているので、貧困層は野蛮だなぁって感じに見えてしまう所が、ちょっと引っかかったかな。でも、それはそれ、これはこれだからねぇ。少しでも文句を付けようとすると、シェークスピアの貴族の話とは違うよって事かしら。それが、悪いという訳じゃないんだけどね。
いやぁ、あまりにも文句の付け所が無くて、”完璧な映画”という感じだったので、感動して、感嘆して、満足しました。あまりにも優等生な映画なので、それが良いと思う方と、そうでない方もいらっしゃるかもしれませんが、私は、あまりの美しさに感動しました。やっぱりスピルバーグだなぁと思いました。
私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。子供に観せると、時間も長いし、つまらないと言われてしまうかもしれませんが、こういう良い映画を、子供の頃から観て欲しいなぁと感じました。もちろん、子供向けのアニメも良いのですが、こういう教科書のような映画を小さい頃に観ると、感情が豊かな子になるんじゃないかなぁなんて思ってしまいました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「ウエスト・サイド・ストーリー」