「ゴヤの名画と優しい泥棒」優しい泥棒にはゴヤを美術館から借りる理由があったんです。楽しいですよ。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「ゴヤの名画と優しい泥棒」をFan’s Voice独占最速試写会にて観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

1961年、世界屈指の美術館ロンドン・ナショナル・ギャラリーからゴヤの名画「ウェリントン公爵」が盗まれた。この事件の犯人はごく普通のタクシー運転手である60歳のケンプトン・バントン。長年連れ添った妻と息子とアパートで年金暮らしをするケンプトンは、テレビで孤独を紛らしている高齢者たちの生活を少しでも楽にしようと、盗んだ絵画の身代金で公共放送(BBC)の受信料を肩代わりしようと企てたのだ。しかし、事件にはもうひとつのある真相が隠されていた。

というお話です。

 

 

世界中から年間600万人以上が来訪・2300点以上の貴重なコレクションを揃えるロンドン・ナショナル・ギャラリー。1961年、“世界屈指の美の殿堂”から、ゴヤの名画「ウェリントン公爵」が盗まれた。

この前代未聞の大事件の犯人は、60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントンだった。彼は、以前から政府に不満を持っており、政府が「ウェリントン公爵」の絵を手に入れるために、税金から高額な資金を支払ったことに憤ったのだ。

 

 

孤独な高齢者が、TVに社会との繋がりを求めていた時代。公共放送の受信料を取りたてる政府は、こんな絵画に高額の税金を使うくらいなら、受信料を無料にすべきだと考えたのだ。そして、彼らの生活を少しでも楽にしようと、盗んだ絵画の身代金で公共放送(BBC)の受信料を肩代わりしようと企てたのだ。しかし、事件にはもう一つの隠された真相が・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

この映画、面白かったです。1961年に、実際に起こった事件を基に描かれていて、ロンドン・ナショナル・ギャラリーから絵画が盗まれたのは、この事件が最初で最後だそうです。ちょっと驚きますよね。こんなおじいちゃんが犯人だったなんて。

 

 

もともと口うるさくて、公共放送の受信料を払うのを拒んでいたケンプトンは、「ウェリントン公爵」を盗んで、その身代金で公共放送の受信料を払おうと思ったようなんです。そりゃそうですよね。この絵画を買った金額を考えれば、高齢者たちの受信料は全て払えそうですもん。このケンプトンの怒りって、凄く理解が出来ました。

 

日本もNHKの受信料を払わせているでしょ。もし、公共放送だから払えというなら、税金として納めさせればいいんじゃないの?わざわざ受信料として取るのはおかしいでしょ。それに受信料というなら、観ない人からは取っちゃいけないですよね。あと、払わない人には、観れないようにすればいいんです。公共放送だから国民は払うべきだというなら、税金として取ればいいでしょ。でも、そうなったら、国民の税金で放送をしているんだから、NHKの職員は公務員の給料形態と同じにして、資金の使い道は、すべて細かく公開するようにしないと。それが嫌なら、受信料なんて取っちゃいけないんです。

 

 

ケンプトンは、もちろん捕まって、裁判にかけられるのですが、その裁判が最高でした。彼は、絵画を盗んだのではなく、借りたと主張するんです。公共放送の受信料を払わせようとするのに抗議するために、借りただけで、誰も不都合は無かったはずだから、無罪だと主張するんです。その裁判の描き方が面白かったですよ。裁判所でのやり取りが、とても上手く描かれています。これは楽しかった。良く出来ていました。

 

このケンプトンおじいちゃん、とってもかわいく描かれていて、ジム・ブロードベントが素敵に演じています。彼を取り巻く妻のドロシーをヘレン・ミレン、息子たちを、フィオン・ホワイトヘッドとジャック・バンデイラが演じています。ヘレン・ミレンとの夫婦が、良かったなぁ。ヘレンは、アクション映画に出演している時や、女王を演じている時とは全く違って、普通のおばあちゃんを演じていて、良かったです。

 

 

映像は、ちょっと古い雰囲気に描かれていて、画面をいくつかに割ったり、枠線を入れたりというところが、とてもおしゃれでした。古い技法なのだそうですが、私には、とてもおしゃれに見えました。そして主人公夫婦が映画館で観る映画が「007 ドクターノオ」だったのかな。007の最初の作品だそうで、そこに、この盗まれた「ウェリントン公爵」の絵が出てくる場面があるんですよ。盗んだのはドクターノオだったということで、映画にしたようでした。

 

ロジャー・ミッシェル監督の最後の作品となった今作。65歳で急死してしまいました。とても残念です。「ノッティングヒルの恋人」で有名になった監督です。あの映画も良かったけど、今作も良いですよ。どことなく、静かなやさしさが映像に描かれているんです。温かい人だったのかな。そんな気がしました。

 

 

最後に、上映後に西洋美術館 主任研究員の川瀬さんと、映画ライターの森さんがいらしてくださって、この映画の基になった事件のことや、「ウェリントン公爵」の絵についてのお話などを聞かせてくださいました。凄く面白くて、映画の理解が深まりました。川瀬さんがお話してくださいましたが、この「ウェリントン公爵」の絵は、キャンバスではなく木板に描かれたもので、木はマホガニーだそうです。マホガニーと言えば、固くて高級家具に使われる木材ですよね。でも、しょせん木なので、湿気に弱いし、乾燥すれば割れるし、少しの振動で絵具が落ちるかもしれない。なので、こんな盗まれ方をしたら、美術館員は冷や汗ものですと仰っていて、面白かったです。それに、大きな紙袋を持って美術館に入って行っても誰も気が付かないという警察の検証を観て、恐いと思ったそうです。セキュリティーに気を付けなくちゃね。

 

 

私は、この映画、お薦めしたいと思います。超!を付けたいくらいだけど、私が凄く面白く思えたのは、映画の解説を川瀬さんがしてくださったことも影響しているので、ここでは付けるのを辞めておきます。でも、映画は面白いです。ちょっと盗む部分とかが曖昧で、あれ?と思ったけど、家族との絆や裁判でのやり取りが、とても楽しめました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「ゴヤの名画と優しい泥棒」