「真夜中乙女戦争」私にはファウストに見えました。今回はネタバレしています。解って読んでください。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「真夜中乙女戦争」を観てきました。

 

ストーリーは、

上京して1人暮らしを始めた大学生の“私”は、友達も恋人もできず鬱屈とした日々を送っていた。そんな中、「かくれんぼ同好会」で出会った冷酷で聡明な“先輩”に惹かれていく。さらに、圧倒的カリスマ性で他人の心を一瞬で掌握してしまう謎の男“黒服”との出会いにより、退屈だった私の日常は一変。始めは他愛のないイタズラを繰り返す彼らだったが、ささやかだった反逆は次第に過激さを増し、「真夜中乙女戦争」という名の東京破壊計画へと発展していく。

というお話です。

 

 

4月。上京し東京で一人暮らしを始めた大学生の私。
友達はいない。恋人もいない。大学の講義は恐ろしく退屈で、やりたいこともなりたいものもなく鬱屈とした日々の中、深夜のバイトの帰り道にいつも東京タワーを眺めていた。


そんな無気力なある日、「かくれんぼ同好会」で出会った不思議な魅力を放つ凛々しく聡明な先輩と、学校内に突如として現れた謎の男”黒服”の存在によって、私の日常は一変する。

 

人の心を一瞬にして掌握し、カリスマ的魅力を持つ”黒服”に導かれ、彼と共にささやかな悪戯を仕掛ける私。黒服は若くして成功を収めてしまった天才実業家だった。名前を聞いたが、幾つもの名前を使い分けている彼を、私は黒服と呼ぶことにした。

 

 

先輩が気になり、彼女の持ち物にあった店の名前を探し行ってみると、静かなバーで彼女は歌っていた。何となく先輩とも距離が近づき、思いがけず静かに煌めきだす私の日常。

 

黒服は、自分の部屋にシアターを作り、”映画館はみんなで観るもんだよね。”と言い始める。シアターに、孤独な同士たちを集めて映画を観るようになると、人数は増えて行った。そして彼らの言動は激しさを増していき、私と先輩を巻き込んだ壮大な”東京破壊計画=真夜中乙女戦争”が秘密裏に始動する。


私と先輩、私と黒服、分かり合えたはずだった二人の道は、少しづつ乖離していき、3人の運命は思いもよらぬ方向へと走りだす。絶望は光になる。痛々しくも眩しい物語は予測不可能なラストへと加速していく。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、鬱屈した青年の願望が現実化していくというお話で、誰かがSNSに書いていたけど、本当に日本版「ファイトクラブ」なんです。あちらほど激しい感じではないんだけど、静かに始まって、じわじわと現実が歪んで行くという感じで、イメージ的には、悪魔と契約をしたファウストが、段々と追い詰められて行き、そんなつもりじゃなかったのにと言う感じかな。

 

キャストはピッタリでしたね。特に、黒服と先輩は最高です。”私”の永瀬さんもビジュアルはピッタリなんだけど、演技がちょっと・・・という感じでしたが、まぁ、このキャラクターは、棒読みでも、そういう雰囲気なんですと言ってしまえばそれまでなので、良いのかもしれません。私は、黒服の柄本さんが魅力的で、魅了されました。柄本さん、マジで素敵。

 

”私”は、何の目的も無く、やりたい事もなく、東京に出てくるんですよね。大学に入学するんだけど、母子家庭で学費は奨学金を貰わないと苦しいらしく、母親は何度も奨学金の試験を受けろと連絡してきます。”私”はうんざりして、奨学金の試験を受けません。それで深夜のバイトに行き始めるんだけど、バイト代は微々たるもの。そして黒服に逃げるんです。

 

 

これ、言っちゃいけないかもしれないけど、お金が無いなら、無理して大学に行く必要は無いんじゃないの?やりたい事無いんでしょ。確かに、高校生で未来決めるのは無理だから、とりあえず大学に行った方が良いとはアドバイスするけど、それは色々やってみようという意欲がある人間に言っているんです。意欲も何も無く、何となく行くだけなら、大学に行く意味が無いと思うのよ。直ぐに働いて、社会で金の稼ぎ方を覚えた方が良いよ。そして自分で起業するとか、ノウハウを手に入れて大手企業に就職も出来るかもしれない。大学を出ることが成功に繋がる訳ではないんです。

 

その典型的なのが黒服で、幼少期から天才的な頭脳を駆使して成功してしまった彼は、お金も地位も手に入れて、やる事が無くなっちゃった人。やる事が無くなるというのが、一番哀しくて孤独だと思います。人間って、何か前に進む指標が必要なんだけど、それが無い人間が一番辛いでしょ。生きている意味が無いんですもん。だから、”真夜中乙女戦争”に繋がったんだと思うんです。

 

 

この映画を観ていて、本当に”ファイトクラブ”に似ているなって思って、もしかしたら黒服は”私”の中のもう一人かと思ったんですけど、ちょっと違いましたね。彼は、ちゃんとそこに実在している人物で、”私”は、思っていたよりも普通の青年だったということです。ここまで行っちゃったのに、先輩と泣き言を言っているなんて。”真夜中乙女戦争”が美しいと正面から見れないなんて、なんて貧乏臭いのかしら。ここまで行ったのなら、美しい光景を楽しめば良いし、自分は全てを手に入れたと喜んで、悪魔に魂を明け渡せば良いんです。ファウストさながらにね。

 

そんな、最後まで勝者になれず、惨めに死んでいくというところが、日本っぽいかなと思いました。ここまでやったなら、狂ったまま神殺しを楽しんで、業火に焼かれるとなれば、ちょっと西洋っぽいでしょ。まともに戻ってしまったら、只のクズになっちゃいます。

 

 

この終末的な話、私は好きですよ。本当にこんな世界になってしまえって、何度も思った事がありますもん。どーせなら、隕石でも落ちてきて、世界滅亡しちゃえば良いのにって、何度思った事か。もちろん、でも、自分は死にたくないんだけどね。だって、私はやりたい事が沢山あるし、もっともっと知りたいことが沢山ある。

 

この年になって思うんだけど、年を取って、経験が増えると、どんどん貪欲になって行くんです。若い頃って経験が無いし、まだ基本的な学校の勉強をしている部分だから、疲れちゃって、もう何もしたくないって気持ちになったり、もうここら辺で全部辞めちゃってもイイかなって思ったり、映画の”私”のように、生きている意味が無いと思う事ってあると思うんだけど、そこを超えると、変わるんだよなぁ。いつ超えられるとは言えないけど、超えられたら、見える世界が変わります。そして見える世界を変えられた人は、幸せを手に入れられると思うけどね。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。この映画は、観る人によって変わると思います。絶望的な映画と思う人もいれば、世界を手に入れた勝者の映画とも観れるし、壊れることを良いと思う人と悪いと思う人、生まれ変わるには壊さなければと思う人、悪い奴は排除すべきと思う人、世界を壊さないようにどうすべきかを考える人、それぞれが別の事を考えそうな映画でした。私は、ファウストを思い出したので、最後に黒服=メフィストフェレスが”私”の魂を手に入れることに成功してハッピーエンドに見えました。とっても楽しめましたよ。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「真夜中乙女戦争」