「天才ヴァイオリニストと消えた旋律」未来を見ていた旋律と過去の為の旋律は哀しさが違いました。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「天才ヴァイオリニストと消えた旋律」を観てきました。

 

ストーリーは、

1938年、ロンドンに住む9歳のマーティンの家に、類まれなバイオリンの才能を持つポーランド系ユダヤ人の少年ドヴィドルがやって来る。マーティンと兄弟のように育ったドヴィドルは、21歳でデビューコンサートの日を迎えるが、当日になってこつ然と姿を消してしまう。35年後、コンサートの審査員をしていたマーティンは、ある青年のバイオリンの音色を聴き、がく然とする。その演奏はドヴィドルにしか教えられないものだったのだ。マーティンは長い沈黙を破ってドヴィドルを捜す旅に出る。

というお話です。

 

 

第二次世界大戦が勃発したヨーロッパ。ロンドンに住む9歳のマーティンの家にポーランド系ユダヤ人で類まれなヴァイオリンの才能を持つ同い年のドヴィドルがやってきた。父親と一緒に訪れた彼は、ヴァイオリンの勉強の為に来たのだ。

マーティンの家で暮らすことになったドヴィドル。宗教の壁を乗り越え、ふたりは兄弟のように仲睦まじく育つ。

そしてドヴィドルは、21歳を迎えて開催された華々しいデビューコンサートの当日、突然に行方不明になった。忽然と消えてしまったのだ。マーティンの父は悲しみ、マーティンもいつまでも見つからない彼は死んだものと思っていた。



 

35年後、審査員として参加していた席で、ヴァイオリンを弾く青年の行動に驚く。ドヴィドルと同じ仕草をしてから弾き始めたのだ。まさかと思い青年に聞くと、ある人から教わったという。その人物に会うと、またある人に教わったという。

段々と明らかになるドヴィドルの足跡を追って、マーティンは旅を続けます。妻のヘレンは飽きれますが、真相を知りたいマーティンは諦めません。そして、とうとうドヴィドルを見つけたマーティンが知った真実とは・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

 

戦争の悲劇を描いた感動作なのですが、ドヴィドルの選択は、私は受け入れられないなと思いました。ユダヤ人のドヴィドルは、父親がその才能を見つけて、素晴らしいヴァイオリニストになって欲しいと思って、マーティンの家に預けたんです。ヴァイオリニストとして成功して欲しいというのが彼の父親の望みだったはずなのに、彼は、結局、父親の望みを反故にして、ユダヤ教に戻り、亡くなった家族を、ユダヤ人を弔いながら生きることを選んだという事だと思うんです。

 

彼にとっては、何よりもそれが大切だったのかもしれませんが、その周りにいた人間にとっては、酷い裏切り行為だと思いました。気持ちが解からないではありません。それでも人としてやって良い事と悪い事があるんです。この裏切りはマーティンの父親を破滅させ、マーティン自身も苦労をすることになったんです。

 

 

そりゃ、私でも、ドヴィドルの行方が判るなら、何処までも追いますよ。恨みだけじゃなくて、自分自身が納得する為だと思いました。だって、いきなり居なくなったんだから、マーティンは、もしかして居なくなった原因が自分にもあるのではないかと、ずーっと考えてしまっていたと思うんです。それは、どんなに時間が経っても、心に引っかかっていたと思います。

 

35年ぶりに会えたドヴィドルは、質素な宗教家のようになっていました。でも、ちゃんと家族もいたんですよ。質素だけど、ちゃんと幸せそうじゃんって思って、またも、ムカムカしました。何度も言いますが、家族も殺されて、ユダヤ人が苦しんだというのは解ります。でもね、だからって、他人を苦しませても良いという事にはなりません。勝手に全てを捨てて、許されようなんて、虫が良すぎます。それはダメでしょ。

 

 

と言いましたが、そんなに幸せではないのかな。弔いの旋律は、何とも形容しがたいような物悲しさを含んでいました。それくらい、第二次世界大戦では沢山のユダヤ人が亡くなり、歌で語り継ぐしか、彼らの行方を示すものが無かったというのが、本当に辛く苦しい事だと思います。誰が死んだかも解らないほど、無残に大量に殺されていったんです。それを思うと、ドヴィドルが全てに耐えられなくなったというのも、解らないではありません。

 

この映画、音楽がメインなので、音楽にはとても気を遣っていて、それこそ良いと素晴らしいの違いが判るように作られていました。この「良いと素晴らしいの違い」って、とても大切なんです。四角い物を四角くするのは当たり前で良いけど、その四角のバランスが一番美しいと感じる大きさ比率諸々、が素晴らしいなんです。そういう部分が伝わる人間と伝わらない人間がいるので、この世の中は面倒臭い。誰もが素晴らしいという言葉を理解してくれれば、こんなに楽な事は無いんですけどね。良いと素晴らしい、キレイと美しい、全然違うんです。

 

 

話しを戻して、実は、最後の最後で衝撃的な事が解ります。最後に、「はぁ?!」って言っちゃったもん。確かに、マーティンは”女でも抱いてこい”って言ったよ。でもね、それは違うでしょ。受け入れる方も受け入れる方だと思ったけど、これも、凄い裏切りでした。最後の最後で、こいつも裏切ってたかぁ~!って、マジで最後のすかしっ屁状態です。スカンクに屁こかれたってくらい、衝撃でした。はぁ~、マーティンが可哀想すぎて・・・。

 

この監督、私が大好きだった舞台「猟銃」の演出をされた方でした。中谷美紀さんが初めて一人芝居をした作品で、井上靖の小説が原作です。美しいし、それぞれの女の思いが交錯して、同じ女性としてどの思いも共感が出来る作品でした。なので、この映画も、それぞれの思いは、それぞれ理解は出来るんです。でも、中心に立った時に、やっぱり誰が一番被害を被っているのか、を考えると、やはりドヴィドルが悪いでしょ。マーティンは、きっと許したんだと思うけど、私は許せないと思います。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。良い映画でした。ちょっと過去と現在の行き来が目まぐるしくて、大変だけど、音楽は素晴らしいし、ティム・ロスとクライヴ・オーウェンなので、満足出来ると思います。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「天才ヴァイオリニストと消えた旋律」