「梅切らぬバカ」自分が居なくなったらと思う親の気持ちが痛いほど伝わってきます。良かったです。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「梅切らぬバカ」を観てきました。

 

ストーリーは、

山田珠子は古民家で占い業を営みながら、自閉症の息子・忠男と暮らしている。庭に生える梅の木は忠男にとって亡き父の象徴だが、その枝は私道にまで乗り出していた。隣家に越してきた里村茂は、通行の妨げになる梅の木と予測不能な行動をとる忠男を疎ましく思っていたが、里村の妻子は珠子と密かに交流を育んでいた。珠子は自分がいなくなった後のことを考え、知的障害者が共同生活を送るグループホームに息子を入れることに。しかし環境の変化に戸惑う忠男はホームを抜け出し、厄介な事件に巻き込まれてしまう。

というお話です。

 

 

年を取った山田珠子は、息子・忠男と二人暮らし。忠男は自閉症であり、珠子がずっと面倒を見てきたのだった。毎朝決まった時間に起床して、朝食をとり、決まった時間に家を出る。庭にある梅の木の枝は伸び放題で、隣の里村家からは苦情が届いていた。珠子は占いを営んでおり、次々とお客が並んでいるところをみると、人気の占い師のようだった。

 

里村家は最近、引っ越してきた夫婦と息子の3人家族。父親の茂は少し強引そうだが、妻の英子と息子の草太は優しくて、理解があるようだった。里村家が引っ越してきた時、草太のボールが山田家の中に転がって忘れられてしまい、それを忠男が届けたことで、草太は忠男を良い人だと認識したようだった。

 

 

お隣からの苦情もあり、梅の木を切ることにした珠子だったが、植木屋が梅を切ろうとすると、何故か、忠男が痛がるので、どうしても切ることが出来ず、植木屋は帰ってしまう。

 

ある日、グループホームの案内を受けた珠子は、悩んだ末に忠男の入居を決める。年を取った自分がいつまで面倒を見られるのか、不安に思ったからだった。しかし、初めて離れて暮らすことになった忠男は環境の変化に戸惑い、ホームを抜け出してしまい、ある事件に巻き込まれてしまう。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

 

題名についてですが、「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」とは、樹木の剪定には、それぞれの木の特性に従って対処する必要があるという戒め。転じて、人との関わりにおいても、相手の性格や特徴を理解しようと向き合うことが大事であることを指すそうです。

 

加賀さんと塚地さんが親子役で主演されているのですが、ほんわかしていて、雰囲気が良かったです。障がいを持った息子さんと母親という役なのですが、これは、良く調べられているというのか、とても現実的な気がしました。そして、この映画で起こることも、身につまされる思いでした。

 

 

私、建築設計の仕事をしておりまして、グループホームもいくつか受けたことがあります。お客様は、運営組織の方なのですが、そのホームに入居する方にも何度もお話を聞かなければならず、でも明確な答えは出せない方々なので、観察して、これはダメだなとか、これは大丈夫そうとか、そうやって設計をしていった覚えがあります。それぞれの個性があって、難しいんですよね。同じことを何度も言うし、計画通りに進まないと我慢が出来ない。

 

かと言って、こちらがいう事を聞いていないのかと思うと、しっかり聞いていたりするんです。だから、決していい加減な事は言えないし、誤魔化しもききません。そんな彼らなので、ご近所に障がい者のグループホームが建つことを不安がる人もいらっしゃいます。なので、この映画の中で起こる事は、とても良く理解が出来るんです。

 

 

でもね、理解しようとしないから、近づこうとしないから、恐いんです。どんな動物だって、最初は怖いでしょ。猫だって、恐る恐る近づいて、段々と慣れて行かなければ、仲良く暮らせないのと同じなんです。私だって、最初は挨拶をして、ゆっくりと話しをするところからでしたよ。だから、この映画の中の近所の人々の、何をされるか解らないという意見は最もだと思いました。だって、彼らには、ほとんど表情が無いんですもん。本当は、我慢して我慢して、爆発して怒るんだけど、我慢している姿が見えないのが困りますよね。でも、ちゃんと彼らだって、感情があって、我慢しているんです。

 

そういう理解を誰もがするべきなんだけど、そういう社会になる日はいつなんでしょうね。いつも弱者ばかりが追い詰められて行くんです。でも、そんな彼らにだって、理解してくれる人は出てきてくれるし、へこたれちゃいられません。珠子は将来の事を考え始めるし、忠男だって、きっとこのままでは終わりません。そんな未来を感じさせる映画でした。

 

 

加賀さん、綺麗だったなぁ。加賀さんのオーラのある美しさは、誰にも真似できません。彼女が出てくるだけで、画面が華やかになり、明るくなっていくんです。まるで、太陽のような人でした。そして、忠男の塚地さんは、本当の息子のようで、自閉症でありながら、優しい気持ちを持って生きている人なのだという事が解りました。観ているだけで、感動出来るような、お二人の姿でしたよ。

 

それにしても、町内にグループホームが建つのが嫌というけど、乗馬クラブがある方が怖いでしょ。馬が暴走したり、囲いを抜けたりしたら、死人が出ますよ。いくら調教されていても、動物ですからね。ちょっとそこら辺が、おかしいなぁと思いました。比較するモノが間違っているかなって思いました。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。やっぱり、一番は加賀さんと塚地さんの演技でしょうね。このお二人だけで、十二分に映画を回しているし、感情表現が素晴らしいんです。忠男は、顔の表情を変えずに怒っていたりするので難しいんです。でも、彼の気持ちがこちらに伝わってきたので、上手いのだと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「梅切らぬバカ」