フランス映画祭in横浜で「ウイストルアム -二つの世界の狭間で-」を観ました。
原題「QUISTREHAM」
ストーリーは、
著名な作家のマリアンヌは、次の本の題材となる雇用不安の取材のため、フランス北部でリサーチをすることに。低所得者の雇用の現状を知るために、マリアンヌは素性を隠し、掃除婦として働き始める。彼女は、人々の金銭的な不安や、見えていなかった社会問題を身をもって体験すると同時に、共に働く仲間たちの間の助け合いや、強い絆にも気づき、執筆は進むが…。
というお話です。
作家のマリアンヌは、次回作の題材を貧困問題と考え、低所得者の雇用の現状をリサーチする為に、フランスの北部に移動し、低所得者として嘘をつき、職業安定所に相談し、仕事を探し始めます。
長年連れ添った夫と離婚し、専業主婦だったが仕事をしなければならなくなったと言い仕事を探して貰いますが、何十年も仕事に就いたことが無いのでは簡単に雇ってくれるところは無く、掃除婦の仕事を探し始めます。何とか、大手の清掃会社に雇われ、ロッジのような場所の掃除の仕事をするのですが、客に文句を言われ、直ぐに解雇されてしまいます。
仲間の紹介により掃除婦の仕事を探し、フェリーの停泊中に客室の中を掃除するという、掃除婦が最後に行き着く最低の仕事場に辿り着きます。時間内に掃除をするという、過酷な労働ですが、そこを辞めたら次は無いので、皆、必死で働いています。
マリアンヌは、そこで知り合った仲間たちの境遇をリサーチしながら、仕事を続けて行きますが、段々と仲間との仲が深まっていき、自分だけ、実は貧困ではない安全な所にいながら、彼らを調査しているという事に罪悪感を抱き始めます。職安のスタッフには、マリアンヌが作家だという事がバレてしまい、本当に仕事が無くて困っている人の仕事を奪っているのだとも言われます。それでも、取材を続ける彼女が、最後に手にしたモノとは。後は、映画を観てくださいね。
この映画も面白かった。マリアンヌは、有名な作家なんです。普通なら、顔を覚えている人がいて、直ぐにでもバレてしまいそうな気がしますが、彼女の本は、社会問題などを追っているジャーナリズム的なものであり、あまり低所得者は読んでいないのかなと思いました。なので、職安のスタッフの一人だけ気が付き、それ以外の人たちは気が付かないんです。
この取材のやり方は、どう考えても、自分だけ安全な所にいて、周りの低所得者たちを見降ろしながら、一緒に仕事をしているように見えてしまい、これはやられた方は嫌だろうなぁと思いました。後から知ったら、自分たちを金持ちが観察していたと思う訳ですから、それは酷いですよ。それほど親しくならなければ、あの人、そういう人だったんだで済むけど、友達になっちゃったら、そりゃ、裏切りに思えるでしょう。
でも、この取材のやり方をしなければ、誰も本当の顔を見せてくれなかっただろうし、難しいですよね。人って、自分より裕福だったり、上にいる人には、決して、本当の顔を見せないでしょ。自分と同じだからこそ、自分の姿を晒しても、同じだから大丈夫と思うのですから。でも、昨日まで友達と思っていた人が、実は、自分たちを観察していたんだと思ったら、本当に嫌だろうなぁ。それを本にされちゃうんですから。もちろん、内容は、低所得者を助けるためのお話だろうけど、それでもプライドはズタズタよね。
この残酷な内容が、凄いなぁと思いました。とっても面白い内容だし、ジュリエット・ビノシュが映画化したいと思って、この監督に話しを持って行ったという事でしたが、確かに、映像になると、より真実味が増して、惹き付けられる内容になっていました。面白かったです。フランスは、本当に貧富の差が大きくなっていて、苦しんでいる人が多いのだなと思いました。
この映画、ビノシュ以外は、ほとんど、実際に働いている素人の方々だそうです。役者はいないようでした。監督は、撮影は大変だったけど、楽しかったと言っていました。
私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。この内容は、日本の人が観ても、色々と感じるところがあると思います。日本だって、コロナ禍で貧困層と呼ばれる人たちが増えたと言っているし、現状は解らないけど、18歳以下に10万円渡すという簡単な事では、全く解決はしないと思っているんです。もっと、本当に苦しむ人に、直接渡るようにならないのかしら。現金を渡すと、親の酒代とか遊興費に使われちゃうような気がするんですけどね。子供の為に、何か出来ないのかな?色々と、考えさせられる映画です。日本公開は決まっていないようですが、これ、早めに日本公開してくれないかしら。明日は我が身の日本の現状が、この映画に描かれていると思います。ぜひ、公開されたら、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「ウイストルアム -二つの世界の狭間で-」